2022年6月24日

核兵器禁止条約第1回締約国会議を終えて

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2022年6月24日

2022年6月21~23日の3日間にわたって開催された核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会議は、「核兵器のない世界へのコミットメントに関する宣言」(以下「ウィーン宣言」)と「ウィーン行動計画」を発表して無事終了した。その前日に開催された「核兵器の非人道性に関する国際会議」には日本政府も参加した。締約国会議には「核の傘」のもとにある国の中にもオブザーバーで参加した国がいくつかあったが、日本政府は参加しなかった。会議には被爆者や多くの市民団体も参加し、参加者は国連の予想を超える千名近くになったと報道されている。RECNAでは、「ウィーン宣言」「ウィーン行動計画」に注目して、その意義と課題について見解をまとめた。

1. 「ウィーン宣言」:現実の「核の脅威」とTPNWの意義

「ウィーン宣言」では国名こそ明らかにしなかったが、現実に起きている「核の威嚇」と「核兵器使用の脅威」について強い懸念を表明した(第4項)。それに基づき、核兵器の使用や威嚇は国際の平和と安全保障にとってリスクを高めるだけであり、核抑止の欠陥を示すものと明確に指摘している。また近代化や核兵器開発を継続する核保有国のみならず、核抑止に依存する「核の傘」国に対しても、厳しい批判を打ち出していることが注目される。

このような危機的状況下にある今こそ、核兵器を「非正当化」し、「悪の烙印」を押すTPNWの意義はますます高まったとの宣言文は、ウクライナ危機により核抑止力や軍事力の強化に流れがちな安全保障政策への警鐘としてとらえることができる。果たしてこれが、現実の安全保障政策にどのように影響を与えることができるのかはわからないが、前日に開かれた「核兵器の非人道性に関する国際会議」での新たな知見やグローバル・ヒバクシャの証言などにより、核兵器のリスクが改めて確認されたことの意義は大きい。

2. 「ウィーン行動計画」:TPNWを動かす第一歩

合意文書として、「ウィーン行動計画」が採択されたが、TPNWを実質的に「動かす」意味で重要な合意文書となった。特に重要な項目として、(1)普遍化(第12条):締約国数と規範の拡大、(2)核兵器廃棄プロセス(第4条)、(3)被害者援助と環境修復(第6条、7条)、(4)科学的助言の制度化、(5)TPNWと他の軍縮・不拡散体制との関係、がまとめられた。とくに(2)では核保有国がTPNWに加入してから廃棄までの期限を10年と決定したこと、被害者援助と環境修復ではすぐにでもワーキンググループを立ち上げること、科学的助言グループの設置が正式に決まったこと、はTPNWを前進させる意味で重要な意義を持つ。

3. 「核保有国」「核の傘」国の責任と行動

最後に、会議に参加しなかった「核保有国」「核の傘」国に対しては、会議場で何度も厳しい批判が繰り返された。一方で、「核の傘」にありながら参加した国の存在は、TPNWの今後を占う上で一つの指標になりうる可能性を示した。発言内容には特に新しいものはなかったものの、TPNWが現実の条約として存在し、動き始めたことを認めざるを得ない以上、オブザーバー参加という手段をとった政策的判断はそれなりの評価を得ることができたといえる。日本がその場にいなかったことは残念ではあるが、8月に開催される核不拡散条約(NPT)再検討会議で、日本がどのように存在感を示すのかに期待したい。

 

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2022年6月3日

『世界の核弾頭データ』2022年版   全リスト

2022年版の『世界の核弾頭データ』ポスターを公開しました。サムネイル画像をクリックしてご覧ください。[PDF: A3サイズ印刷可]

日本語版 英 語 版 韓国語版
       
2022年6月 NuclearWH_2022_JPN NuclearWH_2022_ENG NuclearWH_2022_KOR

◆ ポスターの『解説しおり』も公開しました。こちら からご覧いただけます。

◆ ポスターの元となったデータは「世界の核弾頭一覧」からご覧いただけます。

◆ 記者会見時(2022年6月3日)の配付資料は次からご覧いただけます。
 ・資料1 核弾頭数の推移:世界・米国・ロシア(2013年~22年)
 ・資料2 2022年版 核弾頭データポスター解説
 ・資料3 米国・ロシアの核兵器近代化計画について
 ・資料4 2022年版 核弾頭データ追跡チーム

◆ 過去の『世界の核弾頭データ』は[全リスト]からご覧いただけます。

◆ 『世界の核物質データ』2022年版も公開しました。こちら からご覧いただけます。

 

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『世界の核物質データ』2022年版   全リスト

核物質保有マップ(2020年末)

 

核物質保有総量(2020年末)

 

2022年版の『世界の核物質データ』マップを公開しました。上の2つの図は、それぞれクリック(拡大)して、ご覧いただけます。また、次からPDF版を閲覧及びダウンロードいただけます。
 ・分離プルトニウム・高濃縮ウラン:保有総量(PDF版)
 ・分離プルトニウム・高濃縮ウラン:保有マップ(PDF版)

今年の特徴は、データを公表し始めて、初めて総量が減少した点にあります。特に高濃縮ウラン(HEU)の減少が大きかったからですが、プルトニウムは依然増加傾向にあります。HEUは米国の軍事用と非核保有国の保有量が減少したことで大きな減少(76トン、約1,220発分)となりました。プルトニウムは全体的に増加傾向が続き、軍事用はあまり増加していませんが、非軍事用のなかで民生用のプルトニウム(主にフランスと日本)が増加したため、微増(6トン、約950発分)となりました。(詳細は下記「資料1」参照)

◆ マップの元となったデータは次からご覧いただけます。
 ・分離プルトニウム保有量一覧
 ・高濃縮ウラン保有量一覧

◆ 記者会見時(2022年6月3日)の配付資料は次からご覧いただけます。
 ・資料1 2022年版『世界の核物質データ』マップ解説
 ・資料2 2022年版 核物質データ追跡チーム

◆ 過去の『世界の核物質データ』は[全リスト]からご覧いただけます。

◆ 『世界の核弾頭データ』2022年版も公開しました。こちら からご覧いただけます。

 

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