REC-PP-18
核兵器問題の主な論点整理:国際人道法編(2023年5月)
河合 公明, 真山 全
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法の存在価値を語る時、欠かせないキーワードが「法の支配」と言えるだろう。もともとは、国内の「公正で公平な社会」にとって「不可欠な基礎」として発展してきたもので、「全ての権力に対する法の優越を認める」という考え方である。この国内的価値が、パワーポリティクスが跋扈する国際社会にも次第に適用されるようになり、多くの課題を抱えながらも、「友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤」となってきたと、2022年版『外交青書』は記した。
だが、ロシアによるウクライナ侵略が始まるなど、国際社会における「法の支配」をないがしろにする動きが相次ぎ、2023年版『外交青書』では強い懸念が示されている。たとえば、「国際社会においては、法の支配の下、力による支配を許さず、全ての国が国際法を誠実に遵守しなければならず、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは決して認められてはならない」と強調している。
核軍縮・不拡散の分野でも「法の支配」よりも「力による支配」が広まる危険な風潮がある。今後、どのようにして「法の支配」を再構築・普遍化していくのか。この問いへの解を求める知的挑戦は、「核のない世界」を目指していくうえで、避けて通れないものである。ここで記す核兵器問題に関する国際人道法の主な論点が、核兵器問題の今後に関心を持つ大学生、大学院生、市民の皆さんの学びの一助になればと願っている。
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G7広島サミットの「責任」とは何なのか
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2023年5月25日
G7サミットが広島で開かれ、核保有国の米英仏、「核の傘」国の日独伊加の7カ国のリーダーが集った。グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国のリーダー、ウクライナの大統領も招かれ、短時間ながらも「被爆の実相」に触れた。
被爆地でのこの大規模な首脳会合の前と後では何かが変わるのではないか、変えられるのではないか。いや、変えていく転機にしていかなければならない。ウクライナ侵略開始後のロシアが理不尽な核の恫喝を繰り返すなか、核使用のないままに戦争を終わらせ、核軍縮を再構築していくことの必要性、その切迫性を強く実感させるサミットとなった。
何が大切なのか。G7サミットで合意された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」の中で6回も使われている「責任ある」(responsible)という文言に着目したい。ビジョンでは最初に、「ロシアの無責任な核のレトリック」としてロシア批判の文脈で使われ、次に、「核兵器のない世界」をめざすG7は、この「究極的な目標」が「責任あるアプローチを通じて達成される」と考えている旨が記された。さらには、中国を意識してのことか、「効果的かつ責任ある透明性」(核戦力のデータ公開など)が大事との立場も表明した。このほか、核不拡散等に関連して3か所で「責任」が用いられている。
首脳たちの責任の強調には期待を寄せたい。ただ、言いっぱなしの責任は、そのまま無責任に姿を変えることを忘れないでほしい。首脳たちは、原爆資料館を訪れるとともに原爆慰霊碑に献花を行い、被爆者と面会した。核兵器の非人道性と核軍縮の重要性を国際社会に示した点で大きな意義がある。首脳たちは人間として実感したことを持ち帰り、今後の核軍縮・不拡散政策の具体的成果に結びつけてこそ、責任を果たしたことになる。
「無責任な核のレトリック」とのロシア批判には、同感である。だが、言外に、「自分たちは責任ある核のレトリック」との含意を感じさせる。核抑止とは、核兵器の使用を示唆する脅しで自らが望まない行動を相手にさせないことであり、抑止が破綻した場合には核兵器を使用することが前提とされる概念である。もちろん、ロシアの危険なレトリックは言語道断だが、だからといってG7諸国の核抑止依存が安心で安全と胸を張れるわけではない。そもそも、どの国が使おうと責任ある核使用や、誰かが責任を負いきれる核使用があるとは思えない。
ビジョンでは、「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明(2022年1月)」を想起して、「核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないこと」が確認された。重要な基本原則ではあるが、さらに踏み出して、ロシアが核を使うことなく、米英仏も核による威嚇やその使用にいたることなく、ウクライナでの戦争を終結させる強い決意をもっと示してほしかった。そんな決意の言葉があれば、「長崎を最後の被爆地に」とのメッセージが広島G7サミットでも響いたと、この地からもっと共感を得たことだろう。岸田文雄首相にはそこまでの議長力を、責任を持って発揮してもらいたかった。
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)教員の公募について
長崎大学の方針に基づき、「男女雇用機会均等法」第8条(女性労働者に係る措置に関する特例)の規定により、女性教員の割合が相当程度少ない現状を積極的に改善するための措置として女性に限定した公募を実施するものです。
詳しくは 公募要領 をご覧ください。