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【特別論文No.20】「包括的安全保障へのロードマップ再訪:朝鮮半島における戦争リスクを削減するために」(「北東アジアにおける核使用リスクの削減(NU-NEA)」プロジェクト)
2024年4月19日

この特別論文は、RECNA、ノーチラス研究所アジア太平洋核不拡散・軍縮ネットワーク(APLN)のウエブサイトに同時に公開されます。国際著作権許可4.0 に基づいて公開されます。

 

包括的安全保障へのロードマップ再訪:
朝鮮半島における戦争リスクを削減するために

 
Leon Sigal, Morton Halperin, Peter Hayes,
Chung-in Moon, John Delury, Tom Pickering


「北東アジアにおける核使用リスクの削減にむけて」(NU-NEA)プロジェクト
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)
アジア太平洋核不拡散・軍縮リーダーシップネットワーク(APLN)
ノーチラス研究所
 
2024年4月19日

 

NU-NEAプロジェクトでは、地域における核使用リスク削減にむけて政策提言をまとめたが、その一環として、重要課題について米ノーチラス研究所が発表した論文を、同研究所の好意により、本プロジェクトの成果として、ここに掲載する。

 

要  旨

本論文は、北東アジア地域の緊張を緩和させ、戦争を防止し、核戦争の脅威を根絶させることを含め、平和構築のための協力的安全保障の道にふたたび関係諸国を巻き込むために、北東アジアにおける「包括的安全保障」の概念を改めて検証するものである。第1節では、過去5年間で地域の安全保障環境が悪化している状況を解説する。第2節では、北朝鮮の核開発が地域にとって最大の脅威となっていることを説明し、著者たちが「包括的安全保障」を提唱した2018年当時と比べ、より間接的なアプローチを必要としていることを示す。第3節では、いかに南北朝鮮関係が敵意に満ちた関係に陥ってしまったか、そしてそれが急速に深刻な紛争に拡大していく可能性や、両国が外的な安全保障の変化と国内状況に応じたために、両国間の協力、情報共有などのチャネルがほとんど崩壊してしまっていることを分析する。第4節では、地域の緊張緩和につなげる4段階の行動、とくに朝鮮半島における行動、を提案する。具体的には:
1) 米中は下記の行動を暗黙の了解のもとで実施する。米国は韓国に対し、北朝鮮への敵対的行為や威嚇を抑制するよう要請し、中国は北朝鮮に対し、威嚇行動、特に核使用の威嚇を抑制するよう要請する。
2) 米国は北朝鮮に対し、一方的に安全の保障を明示し、中国は韓国に同様の意思表示を行う。
3) 米国は、中国に対し、「核兵器の使用は許されないものである」こと、そして地域の核保有国に対し、核態勢の見直しを含めた非核兵器地帯設立に向けた対話を始めることについて共同声明を出すことを提唱する。
4) 米国と韓国は、北朝鮮に対し、核開発を抑制することの利益を明確に示す。北朝鮮にとってのメリットとしては、安全保障の向上、先進情報技術や宇宙サービスへのアクセス、地域やグローバルな体制への組み込みとそれによる国際的地位の向上などがあげられる。
 第5節では、結論として、「抑止の強化」は悪循環を呼び、その結果戦争の抑止どころか戦争の可能性を高めてしまうことを示す。朝鮮半島における緊張緩和の向上は、北東アジアの他の地域における協力的安全保障を促進し、朝鮮半島の非核化と包括的な安全保障の実現に必要な状況を再び作り出すことにつながるだろう。

キーワード: 包括的安全保障、協力的安全保障、緊張緩和、非核兵器地帯

著者紹介
レオン・シガール氏(Leon Sigal)は、北東アジア協力的安全保障プロジェクトのリーダー。モートン・ハルペリン氏(Morton Halperin)は、外交及び市民権・自由の米国の専門家。ピーター・ヘイズ氏(Peter Hayes)はノーチラス研究所所長で、シドニー大学国際安全保障研究センターの名誉教授。文正仁氏(Moon Chung-in)は、韓国延世大学政治学名誉教授、ジョン・デルーリ氏(John Delury)は、韓国延世大学中国研究准教授、トーマス・ピカリング氏(Thomas Pickering)は、元米国大使。

この論文は本人の分析であり、所属機関の研究とは無関係である。

英語版のみとなりますが、全文(PDF)こちら からご覧いただけます。

◆本プロジェクトの概要は こちら
◆本プロジェクトの特別論文の一覧は こちら

NU-NEAプロジェクト

 


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