RECNAニューズレター Vol.13 No.1 (2024年9月30日発行)
着任のご挨拶 - 樋川 和子 RECNA ポリシーペーパー20 を刊行 グローバルリスク研究センターの設置 ナガサキ・ユース代表団ジュネーブ活動報告 核弾頭データポスターのリニューアルについて 第3回「核なき未来」オピニオン賞 新しい客員教授 二人が着任 [全文閲覧]※引用元URI: http://hdl.handle.net/10069/0002001655 |
第3回「核なき未来」オピニオン賞 受賞式 を開催 [ENG]
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、募集した 第3回「核なき未来」に関するオピニオン のU-20の部 (16歳以上20歳未満)とU-30の部 (20歳以上30歳未満) それぞれで、最優秀賞、優秀賞各1名を発表し、授賞式を行いました。
青来有一審査委員長は、全体講評のなかで、「それぞれの視点で核兵器廃絶への思いが書かれていた。核兵器とは何かを問い直す機会になれば」と述べました。
なお、受賞作のうち最優秀作の2編は、2024年9月22日付長崎新聞の本紙に全文が掲載されました。( こちら は同紙電子版の記事)
【 第3回「核なき未来」オピニオン賞 授賞式 】
授賞式出席者の集合写真 | 取材に応じる受賞者 |
日 時: |
2024年9月21日(土)13:00~14:00 (取材対応 14:00~14:30) |
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場 所: | 長崎大学 核兵器廃絶研究センター1階 会議室 |
次 第: |
(司会:中村 桂子 RECNA准教授) 1.開会挨拶: 吉田 文彦 RECNAセンター長・教授 2.受賞者発表・授与式・受賞者スピーチ ・U-20の部 優秀賞者発表・賞状、盾授与: 青来 有一 審査委員長 優秀賞者スピーチ 小川 朋子さん (オンライン) 最優秀賞者発表・賞状、盾授与: 青来 審査委員長 最優秀賞者スピーチ 石山 力輝さん(オンライン) ・U-30の部 優秀賞者発表・賞状、盾授与: 青来 審査委員長 優秀賞者スピーチ 岡本 沙紀さん(オンライン) 最優秀賞者発表・賞状、盾授与: 青来 審査委員長 最優秀賞者スピーチ 西山 厚人さん 3.全体講評: 青来 有一 審査委員長 4.審査委員コメント: 山田 貴己 客員教授、村上 文音さん、 畠山 澄子さん(オンライン)、中村 涼香さん(オンライン) 5.写真撮影 |
取材対応: |
青来 有一 審査委員長、受賞者 鈴木 達治郎 RECNA教授(司会) |
第3回「核なき未来」オピニオン賞 受賞者を発表 [ENG]
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、昨年に引き続き、若い世代に広く核兵器問題の重要性を訴えるとともに、平和な国際社会の実現に貢献できる人材の育成を図ることを目的として、第3回「核なき未来」に関するオピニオン を募集しました。
このたび、U-20の部 (16歳以上20歳未満)、U-30の部 (20歳以上30歳未満) それぞれで、最優秀賞、優秀賞各1名を決定しましたので、 お知らせいたします。
【 受賞者: 最優秀賞 2名、優秀賞 2名 】
※ 年齢は応募時のもの。
U-20の部 最 優 秀 賞 |
石山 力輝(いしやま りき)17歳
アメリカ合衆国マサチューセッツ州 Berkshire school |
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U-30の部 最 優 秀 賞 |
西山 厚人(にしやま あつひと)27歳
京都市在住 会社員 |
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U-20の部 優 秀 賞 |
小川 朋子(おがわ ともこ)18歳
⽴命館アジア太平洋⼤学在学 ⼤分県別府市在住 |
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U-30の部 優 秀 賞 | 岡本 沙紀(おかもと さき)24歳
東京⼤学⼯学部在学 |
【 U-20の部 受賞者 以外の 最終選考対象者 6名 / 応募者総数 12名 】
【 U-30の部 受賞者 以外の 最終選考対象者 14名 / 応募者総数 39名 】
自民党総裁選 核政策を巡る議論を危惧する
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2024年9月20日
自民党総裁選の複数の候補者から、日本の非核政策の見直しを求めるかのような発言が相次いでいる。説明不十分なまま言葉が飛び交う現状を強く危惧する。
高市早苗候補は、自著で、米国の拡大抑止を期待するならば、非核三原則のうち「持ち込ませず」は「現実的ではありません」と述べ1、さらに米国の「核の傘」(拡大核抑止)を含む拡大抑止に非核三原則が「矛盾する」と述べたと伝えられている2。石破茂候補は、使わないための兵器という核兵器のパラドックスに言及しつつも、「いつどういう時に核を使う」かに関する「意思決定の過程を共有」する「核共有」は基本的に「非核三原則に触れるものでな」く、議論が必要だと述べた3。河野太郎候補は、米国の「核の傘の有効性」を担保するために「核の運用」について「実体的な議論」をする日米協議が必要だと述べた4。
上記発言について、以下の事実関係と論点を確認したい。
【非核三原則の見直しについて】
非核三原則については、国家安全保障戦略で、「非核三原則を堅持する」との平和国家としての基本方針は今後も変わらないことを確認している5。これに対し、非核三原則を見直すべきとする主張は、
(1) 国家安全保障戦略からの転換を求めることを意味するか。
(2) 「持ち込ませず」は「現実的ではない」とは具体的に何を意味し、非核三原則が「核の傘」を含む拡大抑止にどう「矛盾する」か。
(3) 上記の主張は、「非核二原則」にすることを意味するか。その場合、沖縄を含む在日米軍基地への配備を想定しているか。
(4) 非核三原則の見直しに周辺国が反応し、さらなる軍拡による負のスパイラルで「安全保障のジレンマ」に陥りかねないリスクを考慮しているか。
【核共有について】
「核共有」については、安倍元首相が日本も「核共有」を議論すべきだと発言したが6、岸田首相は、「非核三原則を堅持している立場」と「原子力基本法をはじめとするこの法体系」から、「核共有」を政府として「認めることは難しい」と否定した7。これに対し、「核共有」の議論を求める主張は、
(1) 政府方針の転換を求めることを意味するか。
(2) 「核共有」は、日本の自衛隊基地か自衛隊艦船への配備を想定しているか。想定している場合、それはどこか。
(3) 核不拡散条約(NPT)は、日本を含む非核兵器国への核兵器の管理の移譲を禁止しており(第2条)、「核共有」は、NPTに反するという議論を承知しているか8。その主張に対する考慮をしているか。そもそも「核共有」とNPTとの整合性をどのように考えているか。
(4) 国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石9として日本政府が重視するNPTの弱体化が懸念される中で、日本が「核共有」に進むことはNPTをさらに弱体化させることにならないか。それは日本の安全保障に資するか。
【核兵器の使用について】
「核共有」について発言者は、「いつどういう時に核を使う」かに関する「意思決定の過程を共有」することと説明した。他の発言者が用いた「核の運用」という言葉は、米国の政策文書から分かるように、それは核兵器の使用を含む概念である10。この現実を前提に、「核の運用」に関する「実体的な議論」を求めるならば、そこには「核兵器の使用」に関する議論も含まれることになる。以上の場合、以下の問いが生まれてくる。
(1) 米国が日本に提供する拡大核抑止とは、具体的にどのようなものか。
(2) 日本は、国際人道法であるジュネーヴ諸条約第1追加議定書の締約国である。その日本と同議定書の非締約国である米国との間で、核兵器の使用をめぐり生じうる国際法上の問題は生じないと考えているか。
(3) そもそも、拡大核抑止で米国が日本の防衛のために核兵器を使用する場合、国際法上の根拠は何であると考えているか。
自民党総裁選の候補者が日本の非核政策の見直しを求めるのであれば、以上のような論点について説明責任がある。核政策について日本は、非核三原則以外にも国際法上負っている義務もある。核兵器に関する日本の従来の政策の変更について議論するのであれば、変更に対する賛否の立場にかかわらず、少なくとも指摘したような論点を踏まえた緻密な議論が必要である。
自民党総裁選は事実上、日本の首相を選ぶ選挙と考えられている。首相は8月6日と8月9日に広島と長崎を訪れる立場であり、来年は被爆から80年にあたる。
1 高市早苗『国力研究 日本列島を強く豊かに。』(産経新聞出版、2024年)18頁。
2 毎日新聞(2024年9月9日)。https://mainichi.jp/articles/20240909/k00/00m/010/290000c.
3 【自民党総裁選2024】候補者ネット討論会(2024年9月16日)。https://www.youtube.com/watch?v=a4ztrR4X4x4.
4 同上。
5 「国家安全保障戦略について」(令和4(2022)年12月16日、国家安全保障会議および閣議決定)。
6 NHK「安倍元首相 “同盟国で「核共有」 タブー視せず議論を” 」(2022年2月27日)。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220227/k10013504311000.html.
7『第208回国参議院予算委員会会議録』第6号(令和4(2022)年3月2日)9頁(岸田文雄)。
8Mohamed I. Shaker, The Nuclear Non-Proliferation Treaty: Origin and Implementation 1959-1979, Vol. I (Oceana Publications, 1980), pp. 129-269. 同書でエジプトのモハメド・シェーカー大使が克明に記しているように、NATOの核共有はNPT交渉中の主要な論点の一つであった。
9 2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会高村外務大臣政務官ステートメント(2024年7月22日。https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100703304.pdf.)
10 例えば、以下を参照。National Security Directive Number 13 (NSDD-13), “Nuclear Weapons Employment Policy,” 13 October 1981.