「北東アジアにおける核使用リスクの削減(NU-NEA)」プロジェクト
- 二度と核兵器が使われないために -
長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)
北東アジアにおける平和と安全保障に関するパネル(PSNA)
ノーチラス研究所
アジア太平洋核不拡散・軍縮リーダーシップネットワーク(APLN)
2021年9月
目 的
現在、核戦争(核爆発を攻撃目的で使用した戦争、以下「核使用」)のリスクは、冷戦終了以降最も高くなっていると言われている。特に、北東アジアには核戦争の引き金となるような対立が存在しており、懸念は高まっている。韓国と日本はともに米国による「拡大核抑止」に大きく依存している。しかし、そのような「核抑止」が失敗に終わるリスクについても十分に検討しておく必要がある。そこで、私たちは核兵器が使用されるリスクを十分に理解し、そのリスクを削減する政策を提言するため、「北東アジアにおける核使用リスクの削減」プロジェクトを立ち上げることにした。
その目的は、核兵器使用のリスクをより深く理解することにより、この地域において二度と核兵器が使われないようにすることにある。
そのためには以下のような質問に答えることが必要である。
1)どのような条件下で核兵器は使われるのか(意図的、偶発的にかかわらず)? そのような核兵器使用がより大規模な核戦争に拡大していく過程はどのようなものか?
2)核兵器が使用されたらどのような影響(死傷者、インフラの破壊、環境汚染、気候変動など)がでるか?
3)地域におけるそのような核兵器使用のリスクを最小化するための施策はどのようなものがあるか?
これらの研究成果に基づき、最終的には地域での核使用リスク削減のための政策提言を行う。このプロジェクトは、長崎大学「プラネタリー・ヘルス」プログラムの一環として実施される。
研究内容
本プロジェクトは、上記目的を達成すべく、3年間で次の3つのタスクを実施する。
1)核抑止失敗事例の作成(タスク1): 1年目のタスクは、核抑止が機能せず、地域において核兵器が使用されてしまう事例を作成することである。おもに朝鮮半島の危機に焦点を当て、地域や世界の地政学、安全保障環境を考慮に入れて作成する。
2)核兵器使用の影響評価(シミュレーション・モデルの作成)(タスク2): 2年目は、1年目で作成された核兵器使用事例に基づき、その影響評価をシミュレーション・モデルによって定量的評価を行う。タスク2は、死傷者の数、インフラの破壊・損害、環境汚染、気候変動といった多様な影響を評価する。影響評価の一部(例えば気候変動)は3年目にまたがる可能性もある。
3)核使用リスク低減にむけての政策提言(タスク3): 3年目は、1年目と2年目の成果を踏まえ、地域における核政策を再評価し、核戦争のリスクを最小化するような政策を提言する。
研究体制
RECNAとPSNAが主体となり、ノーチラス研究所、APLNの協力のもと、このプロジェクトを主催する。RECNA/ノーチラス研究所/APLNが「運営委員会」を立ち上げて、プロジェクト全体の運営を担当する。
日 程
このプロジェクトは2021年5月から2024年3月までの3年間を予定しており、大まかな日程は下記のとおり。
1年目: 2021年5月~2022年3月
(2021年)
・5月 プロジェクトチーム発足
・6~8月 タスク1 事例の作成、タスク2 事例のレビュー
・[7月20日(火) ワーキングペーパー著者及び専門家による諮問ワークショップ(非公開)開催]
・9月 タスク1の報告書案(1次)作成、タスク2、3のレビュー
・[10月8日(金)、9日(土)及び12日(月) PSNAオンラインワークショップ開催予定]
タスク1の成果報告と核兵器使用可能性についての意見交換
北東アジア非核化にむけての主要課題と2年目以降の研究計画の意見交換
(2022年)
・2月 タスク1最終報告書
・3月 Journal for Peace and Nuclear Disarmament (J-PAND) に掲載
2年目: タスク2 最終報告
3年目: タスク3 最終報告
成 果
プロジェクトの成果として、毎年度の終わりに各タスクの報告書や中間報告を発表する。さらに、プロジェクトの課題に応じて、毎年度専門家によるワーキングペーパーを発表する。ワーキングペーパー並びにプロジェクト報告書はJ-PANDに掲載の予定である。