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「被爆75年記念事業 ナガサキ・核とパンデミック・シナリオプロセス」のワーキングペーパー「COVIDワクチンへの公平なアクセス:研究と生産能力における協力が不可欠」を発表
2020年10月30日

このワーキングペーパーは、「被爆75年記念事業 ナガサキ・核とパンデミック・シナリオプロセス」のために執筆されたもので、RECNA、ノーチラス研究所、アジア太平洋核不拡散・軍縮ネットワーク(APLN)のウエブサイトに同時に公開されます。国際著作権許可4.0 に基づいて公開されます。


COVIDワクチンへの公平なアクセス:研究と生産能力における協力が不可欠
 
David G Legge and Sun Kim

(要旨)

COVID-19パンデミックは、家族やコミュニティを破壊し、社会・経済活動を混乱させた。世界全体で100万人以上の方が亡くなり、多くの人が苦しんでいる。SARS-2コロナウィルスに対して効力があり安価なワクチンが入手できれば、パンデミックがもたらした混乱から早期に脱することができる。

パンデミック初期から、世界保健機関(WHO)事務局長は、地球規模で対応するには「連帯」が不可欠だと強調していた。当初は、ウィルスのゲノム配列情報の公表や、核酸試験の手順などで「連帯」が示されていた。しかし、ワクチン開発や製造を加速させるために技術を共有しようという提案は、薬品業界や政府には受け入れられなかった。WHOが提案した「連帯したワクチン治験」は、ワクチンの効力、安全性、価格に有効な比較情報をもたらすはずだったが、薬品業界によりボイコットされた。

3月末になると、COVID対応の地球規模協力にむけての交渉は、WHOからG20諸国がスポンサーとなった「COVIDツールアクセラレーターへのアクセス(ACT-A)」に移った。これは、診断・治療法・ワクチン開発・生産及び平等なアクセスを促進する地球規模の政府と民間の協力イニシャティブである。ACT-Aの「ワクチン部門」では、複数の選ばれたワクチン候補について、前もって参加国が共同購入契約を行う「コーバックス(Covax)・ファシリティー」が形成された。「Covax」はさらに、低所得諸国への供給を促進する募金活動も行うよう企画されていた。また、参加国において、優先順位の高い人たち(最大20%)にワクチンが配布されることも計画され、その後に、オープンな市場において、二国間取引を行うことになっていた。

しかし、7月になると、特に米国・英国・EUによる「二国間購入契約」が大量に進み、初期の有効なワクチンがそれらの国の在庫に回ることが明らかになった。これは、Covaxの募金活動を無駄にする動きであった。

この「ワクチン・ナショナリズム」は、技術の共有化を拒否し、Covaxの資金不足・供給不足をもたらし、ワクチンへのアクセスを不公平なものへと変えてしまった。特に1年目への影響が大きかった。

医療への公正なアクセスについては、過去20年間真剣に検討がなされてきた。さらに、多国籍薬品企業のビジネスモデルの分析や、普遍的な医療保険制度UHCへの需要が高まっていることなどから、私たちは「COVID-19におけるより公平なワクチン配布のための政策プラットフォーム」を提案した。その重要な要素は以下のようなものである。
・Covaxにおける譲歩的部分への全面的資金供与
・低・中所得諸国(L&MICs)においては、地元での生産を急速に拡大する
・知的所有権や技術ノウハウの共有化を義務付けるTRIPS合意(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)における「放棄条項」を即座に適用することで、ワクチン開発と製造に必要な知的所有権やノウハウへのアクセスを確保する
・ワクチン開発と生産における重要な部分の完全な透明性を確保する
・深刻な負債を抱えている低・中所得諸国の返済を一時停止する

今後のパンデミックに対応するためにも、より公平で有効な対応策を実施する政策イニシャティブが今こそ必要である。その重要な項目とは:
・低・中所得諸国における公的部門の革新と生産能力の拡大
・バイオ医薬品技術移転と国の能力育成に関する地域・多国間の合意
・将来のパンデミック危機への対応できるような技術共有に関するTRIPS合意の改革
・パンデミック危機に際して、WHOに技術共有化や治験効果の比較(「連帯した治験」)を義務付ける権限の供与とそれを可能にする国際規制IHRの改革
・薬品の研究開発活動と薬品研究開発に関する国際条約交渉の分離を促進

このプラットフォームの実行と進展のために重要な事項は:
・TRIPS合意の柔軟性を最大限活用できるよう、また研究開発のための公的資金(許認可の公開)や民間薬品企業の研究開発資金の透明性を確保するために、各国での法制度等の改革
・低・中所得諸国の意見を反映できるよう、国連やWHOといった国際機関における議論の場を確保すること、その結果制度改革へのリーダーシップが示されること。
・普遍的な(単一支払者)健康保険(UHC)へのコミュニティ運動を進め、安価で効果のある治療薬とワクチンへの平等なアクセスを保証すること
 

キーワード: COVID-19、COVIDツールアクセラレーターへのアクセス(ACT-A)、コーバックス(Covax)、ワクチン、ワクチン開発、ワクチン生産、公平性、アクセス、TRIPS合意、許認可の義務付け、連帯治験、普遍的な保険制度(UHC)、製薬業界、Covid テクノロジーアクセスプール(C-TAP)
 

著者紹介

デビッド・レゲー博士(医学)は、豪州ラ・トローブ大学名誉研究員で、公衆衛生、保健政策、グローバルヘルスの分野で研究・教育に長年従事してきた。国際市民団体「ピープルズ・ヘルス・(People’s Health Movement : PHM)」(www.phmovement.org)にて、2000年の設立以来、積極的に活動に参加してきた。その中には、世界保健機関(WHO)ウオッチプロジェクトも含まれる。

スン・キム博士は、韓国の市民保健研究所(People’s Health Institute)保健政策研究センターのセンター長。健康管理や健康面での脆弱性、薬品製造、薬品へのアクセス等について、政治経済的な視点からの研究に長年従事してきた。PHMの東南アジア・太平洋地域コーディネーターを2019年から務める。
 

英語版のみとなりますが、全文(PDF)こちら からご覧いただけます。

 


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