このワーキングペーパーは、「被爆75年記念事業 ナガサキ・核とパンデミック・シナリオプロセス」のために執筆されたもので、RECNA、ノーチラス研究所、アジア太平洋核不拡散・軍縮ネットワーク(APLN)のウエブサイトに同時に公開されます。国際著作権許可4.0 に基づいて公開されます。
パンデミック時代における生物兵器と核抑止:アジア太平洋からの視点
Richard Pilch, Miles Pomper
(要旨)
本論文は、パンデミック時代における生物兵器と核抑止に関して、アジア太平洋の視点を提供するものである。生物兵器はすべてのカテゴリーで国際条約上禁止されている。しかし、生物兵器は核兵器に比べ、技術的にも経済的にも容易に開発・製造することができる。一方で、コストや技術的障害があるにもかかわらず、アジア太平洋地域には、複数の国が公然と核兵器を保有している。この二つの大量破壊兵器(生物兵器と核兵器)は、まったく無関係に存在しているわけではない。その脅威や管理対策がもたらす影響は、複雑な地政学上、相互に関係する形で表れている。これらの動きに影響を与える第三の要素として、自然現象による感染症拡大とパンデミックがあげられる。本論文は、パンデミックを背景要因としたうえで、生物兵器と核兵器の潜在的な相互作用について探求する。第一に、生物兵器の歴史、脅威評価手法、そしてアジア太平洋地域における特有の脅威について分析する。次に、生物兵器の規制・管理について複数の選択肢を評価する。最後に、自然現象及び意図的な感染症拡大下における核抑止について検討する。結論として、地域安全保障と安定化に向けた重要課題と提言を行う。
キーワード: 生物兵器、核抑止、パンデミック時代、アジア太平洋
著者紹介:
リチャード・ピルチ博士はミドルベリー国際研究所ジェームズ・マーティン不拡散センター(CNS)の化学・生物兵器不拡散プログラム(CBWNP)のディレクター。専門は医学だが、2001年9.11同時多発テロとそれに続く炭疽菌テロ以来、安全保障問題に焦点を当ててきた。2002年、CNSにおいて化学・生物兵器不拡散プルグラムにおいて、ポスト博士課程研究フェローシップを修了。その前には、旧ソ連の攻撃用生物兵器プログラムがもたらした脅威を含め、生物兵器戦争、バイオテロリズム、さらには国際的な関心事となる公衆衛生に関する危機管理などの研究に従事してきた。博士は、米政府を代表して、ロシアで公表されているすべての民生用生物兵器関連施設の現地査察を行い、数々の脅威削減プログラム作成に貢献した。また、30以上の政府の技術専門家会議、諮問会議のメンバーとして活躍し、60以上の専門論文や白書に寄稿してきた。2005年には、彼の師匠でもあるレイ・ジリンスカス博士(CBWNP前ディレクター)とともに、この分野では決定版といわれる、ワイリー社発行の「バイオテロリズム防衛百科事典」の共同編集者を務めた。マイアミ・ミラー医学大学卒業、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学医学博士取得。
マイルズ・ポンパー氏は、CNSワシントン事務所のシニア・フェロー。氏は、原子力、核不拡散、核セキュリティ、核軍備管理に関して多数の著書がある。CNS参加前にはArms Control Today誌編集長も務めていた。それ以前には、米議会や米情報局の外務局において、議会報告書やLegi-Stateニュースサービスに、安全保障に関する広汎な課題分析を行ってきた。コロンビア大学で国際関係論修士、ノースウエスタン大学でジャーナリズム修士取得。
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