Q1. 「核物質」ってなに?水爆と原爆はどう違うの?
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核兵器や原子力発電所の核燃料などの原料となるウランやプルトニウムのことを核分裂性物質と呼びます。セシウムやストロンチウムなど、他にも放射性物質はありますが、核分裂は起こしません。原子爆弾(原爆)は長崎や広島に落とされた核兵器で、核分裂反応を用います。水素爆弾(水爆)は起爆剤に原爆を用いた爆弾で、核融合反応を用います。水爆は原爆の数千倍の威力を持つことも可能です。原爆・水爆とも核物質は不可欠です。
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Q2. 高濃縮と低濃縮ウラン、プルトニウムはどう違うの?
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天然のウランには核分裂に使いにくいウラン238が99.3%と、使いやすいウラン235 が0.7%含まれています。ウラン235が20%以下のものを低濃縮ウラン、それ以上のものを高濃縮ウランと呼んでいます。プルトニウムは天然にはほとんど存在しない物質で、原子炉の中で人工的に作られています。原発で多く使われているのは低濃縮ウランで、20%以上になると、核兵器に転用可能となります。またプルトニウムは、直接核兵器に使うことができますので、厳しい管理が必要です。
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Q3. ウランとプルトニウムは危険なの?
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ともに放射性物質ですが、アルファ線といって比較的弱い放射線(紙でも防げる)なので、福島原発事故で環境に放出されたセシウムやストロンチウム(強いガンマ線を出す)に比べれば、近づいても危険性はそれほど高くありません。一方、体内に取り込むと、少ない量でも肺がん等になる可能性が高い、とても危険な物質です。
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Q4. 高濃縮ウラン、プルトニウムはどうやって作るの?
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ウラン濃縮はウラン238がウラン235にくらべてわずかに重いことを利用して行います。ガス拡散法や遠心分離法が用いられていますが、どちらも大変な手間がかかります。一方、原子炉に核燃料を入れると核分裂によって発生する中性子を核燃料に含まれるウラン238が吸収してプルトニウムになります。この核燃料を化学的に処理(再処理)するとプルトニウムを取り出すことができます。
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Q5. 核燃料サイクルってなに?高速増殖炉とは何ですか?
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核燃料サイクルとはウランを鉱山から取り出して廃棄物として処分するまでの一連の流れのことです。使用済み核燃料をごみとして直接処分するワンススルー方式と、使用済みの核燃料に含まれるプルトニウムなどを再利用する再処理方式に分かれます。再処理方式のかなめは運転中に燃料であるプルトニウムを増やすことができる高速増殖炉と、使用済み燃料を化学的に処理する再処理工場です。
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Q6. 高濃縮ウランでつくる原爆とプルトニウムでつくる原爆はどうちがうの?
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一定量(臨界量)以上の核物質に中性子がぶつかると核分裂の連鎖反応が始まります。広島型原爆では、高濃縮ウランを2つの塊に分け、爆薬の力で一瞬で臨界量以上にしました。一方、長崎型原爆は中心に臨界量未満のプルトニウムの塊を置き、周りを爆薬で覆い、一気に爆発させること(「爆縮」と呼びます)でプルトニウムの密度を高めて核分裂連鎖反応を引き起こしました。
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Q7. 核物質が兵器に使われたり、盗難されないためにどういう仕組みがあるの?
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国際原子力機関(IAEA)が核物質を扱う国と協定を結び、軍事転用がされていないかを現地で査察などをして毎年確認する制度(「保障措置」)があります。また、核物質の盗難や核施設へのテロ活動を防ぐ仕組み(「核セキュリティ」)もあります。いずれも国際条約で加盟国は守る義務があります。
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Q8. 「余剰」核物質とはなに?余剰核物質を平和利用に転換できないの?
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核兵器をもつ米国やロシアが、核兵器にはもう使わないと宣言した核物質を「余剰」核物質といいます。高濃縮ウランは薄めて低濃縮ウランにして原発の燃料として平和利用されています。プルトニウムも原発の燃料に利用可能ですが、コストが高くて利用があまり進んでいません。利用されないプルトニウムは廃棄物として処分される予定です。
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Q9. なぜ日本は大量のプルトニウムをもっているの?
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日本では、プルトニウムを燃料として再利用する「核燃料サイクル」を実現しようとしています。過去に回収したものの、利用するはずの計画が遅れてしまい、大量のプルトニウムを抱えることになったのです。日本は核不拡散条約(NPT)の加盟国で、すべて保障措置を受けていますが、今後はこれ以上在庫量を増やさないとしています。
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Q10. イランは核兵器を持っていますか?
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イランはNPTの加盟国であり、核兵器はもっていません。しかし、以前から秘密の核兵器計画があるのではないか、と疑われていました。2015年に米国や欧州と核兵器を作らないように合意したのですが、米国がその合意から脱退したため、イランは核兵器を作れるだけの高濃縮ウランを所有していますので、国際社会は懸念しています。
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