核不拡散条約」NPTは、正式名称を「核兵器の不拡散に関する条約」(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)と言い、核兵器保有国の増加を防ぐこと(核兵器の拡散を防ぐこと)を主な目的とした条約です。1968年に署名が始まり、1970年に条約として正式に発効し、1995年にその効力を無期限に延長することが決定されました。現在条約に参加している国は190カ国(2012年4月1日現在)で、これは現在の国連加盟国数の193カ国に比べればわかるように、世界で最も多くの国が参加している条約の一つです。ちなみに参加していない国はインド、パキスタン、イスラエルで、また北朝鮮は自国がすでに脱退したと主張しています。
条約の内容としては、核兵器の不拡散、核軍縮の促進および原子力の平和利用の推進が三本柱とされています。しかし、不拡散が条約上の義務とされているのに対し、核軍縮と原子力の平和利用の促進は、事実上努力目標となっており、現実には条約の名前通り、核兵器の不拡散を目的とする条約としての役割を主に果たしています。
条約の中では、条約草案がほぼ固まった1967年の時点ですでに核兵器を保有していたアメリカ、ソ連(現在のロシア)、イギリス、フランス、中国の5カ国を核兵器国、その他の国を非核兵器国と定義して、核兵器国に対しては、核兵器国を含め、核兵器国、非核兵器国を問わずに他の国に核兵器を譲り渡したり、非核兵器国が核爆発を起こす装置を作ることを援助したり、そそのかしたりしてはいけないという義務を課しました。また、非核兵器国に対しては、いかなる目的でも核爆発を起こす装置を開発、製造、入手することを禁止しました。これらの義務を定めることで、5カ国以外に新しく核兵器を保有する国が増えることを防ごうとしたのです。
それ以外に、条約に参加する国は、特に開発途上国を念頭に、原子力の平和利用を促進するために国際的に協力すること、および核兵器の軍縮を含め、軍縮を促進するために誠実に交渉することも条約には定められています。
そして、これらの条約で定められた義務の中で、非核兵器国が「原子力は平和利用に限定し、核爆発を起こす装置を作らない」という、核兵器の不拡散の義務をきちんと守っているかどうかをチェックするために、原子力発電所のように、核燃料を使用する施設を国際的に監視する制度を設けました。これが「保障措置」と呼ばれるものです。NPT自体には、独自の組織がありませんので、この保障措置は、「国際原子力機関」(IAEA)が担当することが決められています。そのために、NPTに参加している非核兵器国で、国内に核燃料を使用する施設を持っている国は、同時にIAEAとの間に「保障措置協定」と呼ばれる、具体的な保障措置の実施に関する別の国際的な協定を結ぶことになっています。
軍縮と原子力の平和利用の促進については、不拡散の義務のように、厳格な規定や具体的な方法などは決められていません。
このような現状に対し、現時点では、NPTは5核兵器国のすべてが核軍縮促進の義務を受諾した唯一の条約であることや、原子力の平和利用に関する国際協力の基礎となる条約であることを軽視するべきではなく、それらの分野においても具体的な目標や枠組みを設定すべきであるとの提案も、条約の再検討会議などの機会にしばしばなされています。