核兵器禁止条約案採択にあたって
RECNA見解
2017年7月8日
2017年7月7日は、核兵器廃絶を願うすべての人たちにとって、歓迎すべき歴史的な日となった。国連において、核兵器禁止条約文案が採択され、9月の国連総会で正式に成立する見通しとなったのである。RECNAは条約成立の意義と今後の課題について、改めてRECNA Policy Paperを発刊する予定だが、条約文採択にあたっての見解を以下に示す。
1. 歴史的転換点:被爆者・被爆地、市民社会と非核保有国の連携
これまでの核軍縮・不拡散体制は、主に核大国が中心となって構築してきた。核兵器禁止条約は、長年の被爆者・被爆地からの核兵器廃絶への思いと、それを受けた市民社会、非核保有国の努力が結実したものである。被爆者・被爆地の努力なしには条約はありえなかった。そういった意味でも歴史的に重要な意味を持つ。
2. 核兵器に「悪の烙印(stigmatization)」: 核抑止が国際法違反に
条約の最大の意義は核兵器に対して「悪の烙印を押す(stigmatize)」ことである。核保有国や核の傘国がこの条約に背を向けている現状では、すぐに核兵器を廃絶することはできないだろう。それでも、核兵器を国際法に違反すると位置付けた条約が制定されることの意義は大きい。特に核の威嚇までも条文に含まれたことで、核抑止が国際法違反との主張が大いに正当性を高めることになった。その結果、核抑止に依存する安全保障論が国際社会で批判の対象となるだろう。
3. 核兵器国・核の傘国への大きな圧力:条約に参加しないでも行動が注目される
その批判は、そのまま核兵器国ならびに核の傘に依存する国にとっての大きな圧力となる。現状では核兵器国や核の傘国が条約に参加することは難しいと主張するが、オブザーバー参加は可能だ。条約以外でも、核不拡散条約(NPT)などの場で、これまで以上に核軍縮への取り組みを進めることが求められるだろう。核兵器国・核の傘国がどのような動きを見せるかに注目が集まる。
4. 被爆国日本に重い責任:核抑止依存から脱却できるか
この条約は、被爆国日本にとって特に重い責任を負わせることになる。核兵器廃絶に向けてのリーダーシップをとると明言した日本政府としては、これまで以上に核抑止依存の安全保障政策からの脱却が求められる。北東アジア非核兵器地帯のような構想を今こそ検討すべき時期に来ている。
5. 核廃絶への大きな前進だが、終着点(ゴール)への道筋はこれから
核兵器廃絶に向けて大きく前進したことは間違いない。ただ、この条約がめざす廃絶を現実のものにするには、廃絶への道筋を描き、具体策を実行していく必要がある。非核国が脱核抑止を国際規範として定着させる努力を重ね、核兵器国と核の傘国が実質的な核軍縮の道筋を立てていくことにより、核兵器廃絶の終着点(ゴール)が明確になっていくだろう。これからが本当に重要なのである。