オバマ米大統領広島訪問の意義と期待
RECNA
2016年5月13日
2016年5月27日、米国の現職大統領が初めて被爆地広島を訪れる。被爆者はもちろん、核兵器のない世界を望む、世界中の専門機関や市民団体等が待ち焦がれていた米大統領の被爆地訪問である。核兵器廃絶研究センター(RECNA)も、この米大統領の勇気ある決断を大きな敬意をもって歓迎する。
現職米大統領の被爆地訪問がもたらす意義は、2009年のプラハ演説と並ぶだけの歴史的なものとなる可能性がある。第一に、世界で唯一核兵器を使用し、今でも世界最大の核保有国である米国のリーダーが、被爆の実相に直接触れ、きのこ雲の下で何が起きたのかを実感することは、本人にとってもおそらく衝撃的な体験となるだけでなく、核兵器のもたらす悲惨な結末を世界に発信する重要な機会となる。第二に、米大統領が被爆地を訪れることにより、他の核保有国のリーダーにとって、被爆地訪問への壁が低くなることが期待される。第三に、その発信する内容によっては、今回の訪問が過去の出来事の清算のためではなく、核兵器のない世界へ向けての未来志向の行動の一歩であることがより明確になる。その結果、膠着している核軍縮や核兵器のない世界に向けての現状を打破する「大きな転換点」(パラダイムシフトを起こす)となりうる。
しかし、米国は一方で、いまだに核兵器禁止に向けての法的措置については消極的であり、現在ジュネーブで行われている国連作業部会にも出席していない。さらに、核軍縮に逆行するような「核兵器近代化計画」を膨大な予算を使って継続中であり、たんに被爆地訪問だけに終わっては、核のない世界を実現する動きを根本的に変えうる力とはなりえない。
また、今回は広島訪問だけに終わり、長崎には訪問されない模様であり、やや残念ではある。長崎を訪問することがなくとも、その意義がいささかも減るものではないが、「長崎を最後の被爆地に」というメッセージもぜひ発信していただきたい。
最後に、5月27日の訪問は、核兵器廃絶に向けて、世界的に重要な意義をもたらすものであり、一部で述べられているような「日米同盟の強化」といったような視点での評価は誤解を招くだけでなく、その意義までをも変えてしまいかねない。RECNAとしては、核兵器のない世界を目指すという視点から、訪問そのもののもたらす意義を高く評価するとともに、当日の声明やその後の米国の核政策の転換に注目することとしたい。