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「核のない世界」に向けた岸田-バイデン外交について

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2022年1月26日

 大統領候補時の一昨年の8月6日に、「広島・長崎の恐怖が繰り返されないよう、核のない世界に近づく努力をする」との声明を発したジョセフ・バイデン米国大統領。広島出身で、核廃絶をライフワークと強調してきた岸田文雄首相。核軍縮に強い関心を抱く二人の組み合わせは、停滞してきた核廃絶への歩みに変化をもたらす好機である。北東アジアだけでなく、ウクライナ問題で欧州の安全保障環境の悪化が懸念される中、日米首脳がどのような外交を展開するのかを、RECNAは注視してきた。

 日米首脳テレビ会談を目前に控えた今年1月19日。岸田首相は衆議院本会議で、「核兵器のない世界の実現に向けて唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係構築に向けて努めていきたい」「きたる会談でも、核兵器のない世界に向けて、ともに取り組んでいくことを確認したい」と述べた。そして21日に開催された会談。外務省発表の会談概要によると、岸田首相が現実主義に基づく核軍縮の考えを説明し、バイデン大統領から支持が表明された。両首脳は、「核兵器のない世界」に向けて共に取り組んでいくことを確認した。

 会談の具体的な内容は示されていない。岸田首相は国会や記者会見などの場で、首相本人の考え方、バイデン大統領との信頼関係構築の進展などを、しっかりと国民に説明する責任がある。例えば、バイデン大統領が重視する「核兵器の役割低減」は、今回の首脳会談の機会をとらえて議論されたのか。バイデン大統領は「核兵器の役割低減」への方策の一つとして、核兵器の役割を相手の核使用の抑止に限定する「唯一の目的」へのシフトを提唱しているが、この点は議論がなされたのか。米国の同盟国の中でもドイツ、ノルウェーが核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を表明したが、日本の考えも議論にのぼったのか。首相自身はこうした点をどう考え、政策展開しようとするつもりなのか。岸田首相には説明責任を果たしてもらいたい。国民の関心が高いこれらの問題についての、与党間、与野党間、市民社会での賛否両論を含めた幅広い議論は、そこが基盤となる。

 同会談に先立って日米両政府は、核不拡散条約(NPT)に関する共同声明を出した。この声明で、様々な具体的な核軍縮・不拡散措置の重要性を確認したことは、地道だが堅実な一歩である。さらに、①広島・長崎への原爆投下が76年間に及ぶ核兵器の不使用の記録が維持されなければならないことを明確に思い起こさせるとしたこと、②核戦争に勝者はなく、決して戦われてはならないとの5核兵器国全ての首脳による初めての宣言を歓迎したこと、③核兵器使用は「壊滅的で非人道的な結末」をもたらすものとの認識を共有したこと、④各国の政治指導者及び若者に対して広島・長崎を訪問するよう求めたことは、評価できる。安全保障環境が悪化する中、核使用のリスクを低めていくにはこうした認識の徹底、政策への実装が不可欠である。

 ただ、核リスク低減や、核の役割低下で止まってしまってはいけない。それらを核廃絶につなげていく政策構想が欠かせない。岸田首相は「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を創設し、年内に初会合を広島で開催する方針を示している。その目的について、核保有国・非保有国の政治リーダーたちに自由闊達に議論してもらい、「核のない世界に向けた道筋を話し合いたい」と国会答弁した。メンバーの候補にはオバマ元米国大統領の名前があがっていると伝えられている。この賢人会議も活用しながら、日米でどのように「道筋」を検討していくのか、日本の基本方針はどう定めていくのか。岸田首相には、多様な意見に「聞く力」を注ぐとともに、ここでも国会などで適宜、的確に説明責任を果たしてもらいたい。

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