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「米朝首脳会談と共同声明」に関する見解

RECNA

2018年6月13日

 ドナルド・トランプ米国大統領とキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が6月12日、初の米朝首脳会談をシンガポールで開いた。北朝鮮の体制保証と、朝鮮半島の完全な非核化を同時に追求していくことを基本合意の形で盛り込んだ共同声明 を発表した。つい半年前まで核の威を借りていがみ合った両国が、歴史的な対話を果たし、外交による非核化に踏み出したことの意義は大きい。現段階ではまだ、完全な非核化までの道筋が明確になったわけではなく、未解決の課題も山積しているのが現実だが、千載一遇の好機を活かした今回の対話を北東アジアの非核化と平和に向けた不可逆的な転換点とすべきである。今後は以下の諸点が注目される。

(1)「非核の制度化」

北朝鮮問題の一丁目一番地は、核・ミサイル実験を繰り返してきた同国の完全な非核化である。核廃棄を確実なものにする「非核の制度化」にとって、CVID(完全、検証可能かつ不可逆的な非核化)は必須要件であるが、共同声明には盛り込まれなかった。今後の交渉での最優先課題と言っても過言ではなく、早期に合意に持ち込んでもらいたい。制度化の中で最も重要と思われる課題の一つが、信頼度の高い検証措置の策定と実行である。短期間での完全な非核化は政治的にも技術的にもハードルが高く、むしろ段階的であっても、非核化プロセスのそれぞれの段階が不可逆的に進み、完全な非核化へと計画に沿う形で進行していることを確実に検証する制度が求められる。核保有国並びに国際原子力機関(IAEA)による検証、さらには地域的な枠組みによる検証などを組み合わせながら、「非核の制度化」の信頼度を高めていく必要がある。そうした試みの先に、朝鮮半島の非核化、北東アジアの非核地帯化(南北+日本)といった新地平も見えてくるだろう。

(2)「平和の制度化」

非核化プロセスの究極的な目標は、核のみならず軍事対立の脅威を削減させ、北東アジアに包括的な平和を確立することである。そのためには、今回の首脳会談を契機にして、関係諸国が「平和の制度化」に向けた外交を加速すべきだろう。朝鮮戦争を終結させ、米朝、韓国、中国といった当事国を加えた平和条約締結をめざすとした板門店宣言の再確認を共同声明がうたったことは大きな前進だ。短期的には軍事対立を未然に防ぐ危機管理対策の制度化を図る。並行して、米朝、南北、日朝の二国間関係の正常化、さらには北東アジアの地域的安全保障の枠組みの構築へと進み、北東アジアでの冷戦構造が緩むことを望む。北朝鮮を国際社会に組み込み、国際規範を意識する国へと誘うには、経済支援、エネルギー協力などを通じて、少しでも開かれた国にしていく試みが重要であり、それが「平和の制度化」を裏打ちすると考えられる。拉致などの人道問題も、こうした方策による北朝鮮の変化の中で解決の糸口がつかめると期待したい。

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¹ 共同声明に含まれた4つの宣言内容は下記の通り。1)米国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国民の希望通りに、新たな米朝関係の構築に向けて取り組む。2)米国と北朝鮮は、朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向け、力を合わせる。3)北朝鮮は、2018年4月27日の「板門店(パンムンジョム)宣言」を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。4)米国と北朝鮮は、戦争捕虜、戦闘時行方不明兵の遺骨の回収、すでに身元が判明している分の即時引き渡しに取り組む。

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