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「南北朝鮮首脳会談と板門店宣言」に関する見解

RECNA

2018年5月1日

 4月27日、ムン・ジェイン(文在寅)韓国大統領とキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が、軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)にて首脳会談を開き、その成果として「板門店宣言」を発表した¹。この歴史的宣言を、RECNAとしては、北東アジアの平和と非核化につながる第一歩として高く評価する。一方で、この宣言に含まれていない点については、今後の米朝会談、南北対話の推移を見守る必要があり、なお慎重で冷静な分析が必要である。そのうえで重要な視点は以下の3点である。

1.朝鮮戦争の終結と「非核化」の具体的道筋が大きな焦点

 まず、今回の板門店宣言で、年内という具体的期限を設けて、「朝鮮戦争の終結」を明記した点は高く評価できる。また、北朝鮮のみならず「朝鮮半島の非核化」を明記した点も注目される。しかし、これらの実現には米国の関与が不可欠であり、米朝対談の大きなテーマとして注目される。朝鮮戦争の終結と米朝平和協定の締結は北朝鮮が「非核化」にコミットする条件として不可欠であるが、一方で、「非核化」の具体的道筋(段階的廃棄プロセス、検証の仕組み等)も米朝対談等で明らかにされる必要がある。

2.多国間対話枠組みの早期確立と日朝国交正常化を

 次に、今回の宣言で、「南北米」または「南北米中」の対話枠組みの提言がなされている点も注目である。イラン核合意の教訓を踏まえると、北東アジア全体の安全保障を議論するうえでも、合意内容の実施プロセスの検証や、合意違反を抑止する面からも、多国間対話枠組みは有用である。六か国協議の経験も踏まえた枠組みの早期確立が望まれる。この南北対話の機会をとらえて、日朝国交正常化をはかり、平和条約の締結に向けた二国間交渉を始めるべきだ。

3.米朝でも危機管理システムの構築・維持を

 最後に、今回南北で危機管理システム構築で合意されたことは、不意の軍事対立を防止する意味でも重要だ。米朝においても同様の危機管理システムの構築・維持が求められる。

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¹ 板門店宣言は以下の13項目よりなる。①朝鮮半島の完全な非核化 ②朝鮮戦争の終戦を2018年内に目指して停戦協定を平和協定に転換、南・北・米3者、南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進 ③過去の南北宣言とあらゆる合意の徹底的な履行 ④高位級会談、赤十字会談など当局間協議の再開 ⑤南北共同連絡事務所を北朝鮮の開城に設置 ⑥南北交流、往来の活性化 ⑦鉄道、道路の南北連結事業の推進 ⑧相手方に対する一切の敵対行為を全面的に中止し、まずは5月1日から軍事境界線一帯で実施する黄海の北方限界線一帯を平和水域にする ⑨接触が活性化することにより起こる軍事的問題を協議解決するため、軍事当局者会談を頻繁に開催。⑩不可侵合意の再確認および遵守 ⑪軍事的緊張を解消し、軍事的信頼を構築し段階的軍縮を行う ⑫首脳会談、ホットラインを定例化 ⑬2018年秋に文在寅大統領が平壌を訪問。

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