「南北朝鮮首脳会談合意」に関する見解
RECNA
2018年3月9日
3月6日、韓国政府は、4月末にムン・ジェイン(文在寅)大統領とキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が、軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)にて首脳会談を開くことで合意したと発表した*。
これらの合意を、RECNAとしては朝鮮半島の緊張緩和につながる重要な一歩として歓迎する。南北首脳会談の行方は予断を許さないが、北朝鮮の非核化に向けた突破口となることを期待する。一方で、今後の北朝鮮や米国の対応を慎重に分析し、冷静に政策判断していくことが必要だと考える。重要な視点は以下の3点である。
1.緊張緩和につながる重要な合意
南北首脳会談が実現すれば、2000年6月、2007年10月に続いて3回目であるが、これまではともに平壌での開催であり、板門店の韓国側を北朝鮮の首脳が訪問するのは初めてとなる。また、条件付きながら非核化への意思表示など、米国が対話の条件として求めていた内容に一歩近づく合意である。さらにホットラインの設置等も含んでおり、この合意は朝鮮半島の緊張緩和に大きく貢献するとともに、米国と北朝鮮の対話への可能性を開くものとして高く評価できる。
2.非核化への「本気度」は評価が困難
北朝鮮の過去の行動を考えると、今回の表明の「本気度」については、現状では評価が難しい。「非核化」への意思表示だけでは、おそらく米国は納得できないだろう。「本気度」を判断するには、たとえば、核開発プログラムの「凍結」(関連施設の運転凍結等)とそれを「検証」すること(国際原子力機関(IAEA)の査察等)を北朝鮮が受け入れるかどうかに注目すべきだ。
3.米国と日本の動向
これまで米国は「不可逆的で検証可能な非核化」を対話の条件としてきた。しかし、米国側が全く動かないと緊張関係が再燃する恐れがある。この機会をとらえて、どのようにして「圧力」一辺倒ではなく、「対話」の道筋をひらいていくか。これは日本にとっても大きな課題である。当面の対応と同時に、北東アジアの平和と安全保障の将来構想も描きながら、建設的な一手一手を打っていくことを期待したい。
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*同時に以下の5点について合意したことを発表した。①緊張緩和のため、南北首脳間のホットラインを設置、②北朝鮮への軍事的緊張が解消され、体制が保証されれば核を保有する理由はない、③北朝鮮は非核化問題協議と関係正常化のため、米国と対話する用意がある④対話が続く間、北朝鮮は追加の核実験や弾道ミサイル試射を行わない、⑤ピョンチョン(平昌)オリンピックでの南北和解の雰囲気を継続するため韓国のテコンドー師範団と芸術団をピョンヤン(平壌)に招待する。