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核不拡散・軍縮イニシアティブ(NPDI)外相会合
イスタンブール宣言

イスタンブール、2012年6月16日

 

1. 我々、オーストラリア、カナダ、チリ、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ポーランド、トルコ、アラブ首長国連邦の外務大臣は、共通の懸案である核軍縮・不拡散問題に取り組むとの誓約を再確認するとともに、核軍縮の実現に向けた不可欠な基盤であり、世界的な核不拡散体制の礎石であり、また、核エネルギー平和利用の発展の基礎であるところの核不拡散条約(NPT)への深い誓約を再確認した。

2. 我々は、その三本柱すべてにわたって、NPTの普遍化と効果的な履行を誓約し、また、2010年NPT再検討会議の最終文書に盛り込まれたフォローアップの行動のための結論と勧告の履行に向けて積極的に取り組むとの約束を再確認する。

3. 我々は、2012年4月30日から5月11日までウィーンで開催された2015年NPT再検討会議第1回準備委員会における議論ならびに成果を歓迎する。準備委員会議長による事実概要は、2010年の最終文書に盛り込まれた誓約の履行に一定の進展があったことを認めているが、同時に、残された課題についても明確に認識している。この点において、我々は、準備委員会に作業文書を提出するなど、NPDIがグループとして準備委員会において目に見える形で建設的な役割を果たしたことを強調する。

4. 我々は、2010年再検討会議以降に採られたかあるいは発表された核軍縮に向けた具体的措置に関して一部の核兵器国が準備委員会に提出した情報に留意する。我々は、非戦略核兵器を含め、あらゆる種類の核兵器を継続的かつ体系的に削減する必要性を強調する。我々は、すべての核兵器国に対し、透明で検証可能、かつ不可逆的な方法で、配備、非配備を問わず、あらゆる種類の核兵器を削減し究極的に廃棄するための努力を強化することを求める。

5. 我々はまた、2014年準備委員会に報告することを目指して、透明性、相互信頼、検証の問題に関して核兵器国が行っている継続的な討議に留意する。我々は、2012年6月27~29日にワシントンで開催される第3回P5会議での透明性問題に関する成果、とりわけ、2010年NPT再検討会議行動計画の行動5および21に記載された問題の履行に関する実質的な前進に向けた可能な措置について成果がもたらされることを期待する。

6. 我々は、信頼醸成に関する行動21の履行における進展を促すため、標準的な報告様式の案が2011年にNPDIによって策定されたことを想起する。我々は本日、核兵器国の政府における本様式へのさらなる反応を探るとともに、行動21の履行に関する議論に今後とも貢献していくことで合意した。

7. 核兵器国は核軍縮において特別の責任を有するが、報告様式案の策定は非核兵器国がなしうる貢献のひとつの例である。

8. 我々は、ジュネーブ軍縮会議(CD)が依然として停滞していることに深い懸念と失望を表明する。CDは、4つの主要課題に関する実質的な作業を開始する包括的な作業計画に合意し、それを履行すべきである。とりわけ、文書CD/1299とそこに盛り込まれた任務を基礎として、核兵器およびその他の核爆発装置に利用可能な核分裂性物質の生産を禁止する条約(FMCT)に関する交渉を即時開始すべきである。こうした条約は、依然として、核兵器のない世界に向けた不可欠の措置であり続けている。

9. 我々は、すべての核兵器国およびNPT未加盟の国家に対して、FMCTが交渉され発効するまでの間、核兵器およびその他の爆発装置に利用可能な核分裂性物質の生産に関する一方的モラトリアムを宣言し継続するよう求める。我々はまた、核分裂性物質を軍事計画から除外するために講じられた措置を歓迎し、全面的に支持する。しかし、一部の国家が」依然として兵器目的での核分裂性物質の生産を続けている現状にかんがみて、我々は同時に、こうした一方的措置は、包括的かつ差別的でなく、多国間で、法的拘束力があり、不可逆かつ効果的な検証を伴った誓約の代わりには成りえないということを強調する。我々は、FMCT交渉をさらなる遅滞なく開始する必要性を強調し、国連総会決議66/44を基礎として、CDが今会期末までに包括的な作業計画に合意し履行できない場合、いくつかの選択肢を検討する用意がある。我々は、次のNPDI閣僚会議において、この問題の詳細を詰める予定である。

10. 国連総会決議66/44に照らし、また、FMCTの技術的側面を検討するNPDI参加国によるこれまでの取り組みを基礎として、交渉の開始を支持してドイツとオランダが今年ジュネーブで開始した専門家レベル会合を我々は支持する。我々は、こうした会合にすべての国家が積極的に参加し貢献することを奨励する。

11. 核兵器実験爆発実験および他のあらゆる核爆発の停止は、国際的な不拡散・軍縮体制の中心的要素を成すものである。我々は、すべての核兵器の削減と究極的廃棄に向けたより広範な作業の不可欠の要素として、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効とその普遍化に向け断固とした努力を続けていく。我々は、CTBTの未加盟国、とりわけその批准が同条約発効の要件とされている、残る付属書II国家に対して、無条件かつ遅滞なくCTBTに署名し批准することを訴える。この点において、インドネシアがCTBTを2012年2月6日に批准したことを我々は歓迎する。また、ガーナ、ギニア、トリニダードトバゴ、中央アフリカ共和国、グアテマラが最近条約を批准し、ニウエが条約に署名したことを歓迎する。我々は、批准手続きを進めている他の国家が、国内手続きを早期に完了し後に続くことへの期待を表明する。

12. CTBTが発効するまでの間、2010年のNPT行動計画に盛り込まれたすべてのCTBT関連の約束が適切に果たされるべきである。我々は、すべての国家に対して、核実験爆発実験および他のあらゆる核爆発のモラトリアムを堅持し継続するよう求める。しかしながら、我々は、モラトリアムは重要な信頼醸成措置として機能するものの、この体制の効果および検証可能性にとって不可欠である法的拘束力のある誓約の代替にはなりえないことを強調する。我々は、条約の検証体制のすべての要素、とりわけ国際監視体制(IMS)と現地査察を構築すべくCTBT機関準備委員会が行っている実質的作業への継続的支持を表明する。

13. 我々は、主たる軍縮・不拡散条約に対する最大限の加盟を長らく支持し、こうした条約にまだ加盟していない国家に対して個別に加盟を奨励してきた。この作業を基礎として、今後は集団的・体系的に活動し、2015年のNPT再検討会議までの間に、これら条約への最大限の加盟を奨励する作業計画を策定することを決定した。

14. 我々は、世界的な核不拡散体制の主要要素を構成するIAEA保障措置システムの効果および効率性を強化するためにNPDIが講じることのできる実際的な措置への努力を継続する。我々は効果的な信頼醸成措置、および早期警戒メカニズムとしての追加議定書の特別の役割を認識し、追加議定書を未だ締結していない国に対して、遅滞なく加盟することを求める。我々は、議定書発効までの間、議定書の条項の自発的な履行を開始するよう奨励する。我々は、IAEAとの協力の下、関心ある国家に対して、我々の経験および最良慣行(ベスト・プラクティス)を共有し、さらには、追加議定書の締結・履行における法的・実際的な支援の提供を今後も行っていく。我々は、国際的な検証の基準として、追加議定書と並んで、IAEA包括的保障措置協定を積極的に推進し続ける。

15. 輸出管理の役割は、NPT第3条第2項の下における核不拡散の義務を達成するために肝要である。我々は、すべての国家に対して、たとえば国連安保理決議1540に書かれているように、核および核関連の汎用品及び技術に対する適切かつ効果的な国内輸出管理を確立し、発展、再検討、維持することを要求する。我々は、輸出管理分野における経験および情報を共有してゆく。

16. 我々は、核兵器のない世界という目標への誓約を継続する。我々は、国際的な核不拡散体制への遵守を確保し、よって核拡散リスクを低減しようとの努力を支えてゆく決意である。我々は、特定の、長期にわたる不遵守の問題を深く懸念し、IAEA憲章および各国ごとの法的義務と完全に合致する形で、保障措置上の義務への不遵守のすべての事案が即時に解決されることを強く求める。我々は、NPT体制に対する特定の懸念について討議した。

17. 協力と効果的な信頼醸成措置の重要なモデルとして、我々は、関心ある地域の国家間での自由意思による取り決めに基づき、国連軍縮委員会による1999年のガイドラインに合致した、国際的に承認され、効果的に検証可能な非核兵器地帯の創設を奨励し、支持する。

18. 我々は、2012年に中東のすべての国家の参加を得て開かれる会議の招集など、中東における核兵器およびその他すべての大量破壊兵器を禁止する地帯の創設に関する1995年NPT再検討委員会での決議の履行に関して、2010年の再検討会議で承認された実際的な措置への支持を確認する。我々は、フィンランド外務省のヤッコ・ラーヤバ次官が同会議のファシリテーターとして指名され、フィンランドが会議のホスト国として選定されたことを歓迎する。我々は、ラーヤバ大使によって提出された報告、および、それに続く2012年準備委員会での討論に留意する。我々は、NPDIイスタンブール会議においてフィンランド代表とさらなる意見交換を行い、会議の成功に向けた共通の土台を準備するためにファシリテーターが行っている努力と広範な協議への全面的な支持を表明し、すべての利害関係者に対して、包括的かつ透明性を保った形でこのプロセスに関与するよう呼びかける。我々は、会議の成功の重要性にかんがみて、まずなによりも、国際社会に加え、中東地域すべての国家の真摯かつ建設的な関与を求める。

19. 我々は、NPT上の義務に完全に従った形で、不当な制約を課されることなく、平和目的での核エネルギーの開発および利用への奪い得ない権利をNPT加盟国が有していることを想起する。我々は、人類すべての利益となるように、核エネルギー、核科学、核技術の平和的な応用を一層広げる努力を支持する。我々は、核エネルギー平和利用の分野におけるIAEAの中心的な役割を強調し、技術協力を促進し、世界的な原子力安全および核保安を強化する国際的な努力を調整してゆくうえで、IAEAがその規程上の機能を果たすために必要な専門的知見や権限、リソースを今後も持つことができるようにしてゆく決意である。

20. 我々は、核保安を強化し、核物質の違法取引を防止し、核テロの脅威を低減するために、2012年3月26~27日にソウルで開催された第2回核保安サミットが成功裏に行われたことを歓迎する。我々は、核保安サミットの目標を全面的に支持し、2014年にオランダが同サミットを主催することを歓迎する。我々はまた、IAEA原子力安全行動計画の履行を通じたものを含め、IAEAが国際的な原子力安全の枠組みを強化するために行っている努力を支持する。我々には、原子力安全を世界的にいっそう強化するために2012年12月に開催される「原子力安全に関する福島閣僚会議」の成功に向けて、他の国々と協力する用意がある。

21. 我々は、大量破壊兵器とその関連物質、および関連知識の拡散による脅威に対処するための具体的なプロジェクトを履行する上で、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ」の取り組みを歓迎する。我々はまた、核テロ、および、核その他の放射性物質の違法取引による脅威に対抗する上で、「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」の貢献を認識する。

22. いかなる核兵器の使用も破滅的な人道的結果を与えることへの懸念を表明し、核使用が与える、長期、広範にわたり、回復不可能な影響を十分に認識し、核不拡散、軍備管理、核軍縮を支持する我々の政策への認識をいっそう高めるため、また、これらの原則が国家、地域、世界のレベルで広範な支持を集めるべく、我々は、平和文化が我々の社会で促進され維持されることの重要性を強調する。さらに我々は、世界的な軍縮・不拡散という目標の実現のために、我々の社会の成員が、国民として、そして世界市民として、自らの貢献を成すために必要な認識、知識、技術を身につけることができるように努力していく決意である。我々は、したがって、我々の共同の作業の不可欠の一部として、軍縮・不拡散教育の重要性を認識する。我々は、8月に長崎で開催される予定の「軍縮・不拡散教育に関するグローバル・フォーラム」を歓迎し期待する。

23. 市民社会は、核軍縮・核不拡散分野において重要な役割を担っている。我々は、2012年準備委員会における市民社会の積極的な参加を歓迎し、NPT再検討プロセスへの実質的で恒久的な貢献を認識する。我々は、NPDIの目標を促進し、我々の取り組みに貢献しうるパートナーとの政治的対話と実際的協力を発展させるためのアウトリーチ活動を強化してゆく。

24. 我々は、進捗状況を点検し、その後の見通しを得るため、ニューヨークでの国連総会にあわせて、9月に再度会議を持つことに合意した。2013年と2014年の閣僚会合は、オランダと日本がそれぞれ開催国となる。

 

(翻訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

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