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ハイレベル会合・議長要約(抜粋訳)

2010 年 9 月 24 日

(前略)
1.本日のハイレベル会合は、多国間軍縮全般ならびにジュネーブ軍縮会議(CD)の作業の促進、とりわけ CD の作業にハイレベルの政治的気運をもたらすことに焦点を当てたものであった。本会合の開催に向けた事務総長のイニシアティブが広く歓迎された。これに関連して、多くの加盟国からは、核軍縮及び不拡散の推進、とりわけ 5 項目提案の前進に向けた事務総長の積極的な関与に賞賛の声があがった。冒頭において事務総長は CD の作業を再活性化し、軍縮交渉のさらなる前進を図るための施策の特定に焦点を絞るよう加盟国に求めた。

2.参加者は、世界的な安全保障の強化ならびに国際的な安定の促進の文脈から、軍縮の重要性を強調した。討議全体を通じて、多くの加盟国が軍縮及び不拡散の分野における交渉の中心的原則としての多国間主義を再確認した。国連憲章に則り、多国間で合意された解決策が、軍縮及び国際安全保障問題に対処する唯一の持続的な方途をもたらすことが強調された。いくつかの加盟国は、軍縮の促進が、ミレニアム開発目標の達成など、国際社会が直面している他の死活的に重要な課題への対処にも寄与することに言及した。

3.参加者は、核兵器のない世界の達成に向けた新たな努力が生み出した気運を認識し、歓迎した。こうした観点から、核兵器の使用あるいは使用の威嚇を防止する唯一の保証はそれらの廃絶であることが繰り返し述べられた。

4.軍縮及び不拡散の推進に向けた政治的意思が近年強化されていることが認識された。多くの国において、世界的な指導者やハイレベルの元政治家による声明、さらには市民社会からの声がこの分野における断固とした行動の火急の必要性を強調してきた。2009 年 9 月の安全保障理事会サミット、2010 年 4 月のワシントンでの核保安サミット、2010 年 4 月の新 START 条約署名を含む多国間ならびに 2 国間レベルでのイニシアティブが、励みとなる前進として留意された。多くの加盟国は、2010 年核不拡散条約(NPT)再検討会議における合意達成を、国際的な不拡散レジームにおける信頼性回復に寄与するものとして賞賛した。

5.多くの CD 加盟国は、近年において肯定的な進展はあったものの、国際の平和と安全の推進に向けたさらなる努力、とりわけ多国間軍縮交渉を前進させる努力が必要であることを強調した。これに関連して、これらの国々は、多国間軍縮機構の現在の状況に懸念を表明した。

6.いくつかの CD 加盟国は、軍縮機構の設立が 1978 年にさかのぼることを指摘するとともに、多国間主義をより効果的に機能させるという見地に立った包括的な評価を行う必要性を支持した。これに関連して、いくつかの加盟国は、既存の多国間軍縮機構、とりわけCD と国連軍縮委員会について、手続や運用原則を含めた作業方法の再検討を求めた。他方、多くの加盟国は、国連軍縮機構の各構成要素の特質、役割、目的を維持することの重要性を強調した。

7.多くの加盟国は、CD の作業を再活性化させ、軍縮機構のより大きな構造を再検討するために第 4 回軍縮特別総会(SSOD-IV)を開催することに対する支持を表明した。他の国々は、この提案にコンセンサスが存在しないことに留意し、多国間軍縮外交における現在の行き詰まりは、軍縮機構のメカニズムよりむしろ、政治的意思の欠如ならびに優先課題に関する見解の相違に起因するものであると述べた。また、SSOD-IV に関する決定は総会の専決事項であることも留意された。

8.多くの加盟国は、軍縮と不拡散が相互に補強しあう関係にあり、よって両側面が同時並行的に扱われるべきであることを強調した。いくつかの国は核兵器及び他の大量破壊兵器に関連した問題が過度に強調されているとの懸念を表明した。これに関連して、国際社会は小火器を含む通常兵器への視点を失うべきでないことが強調された。いくつかの国は人間の安全保障ならびに軍縮における国際人道法の側面を促進することの重要性を強調した。

9.多くの CD 加盟国は、10 年以上にわたって機能停止を続けていることによって、安全保障上の差し迫った課題に対処する上での実効性を損ないつつある CD の作業に関する自国の見解を表明した。この文脈において、全会一致により手続事項を処理する必要性に疑義が示された。いくつかの CD 加盟国は CD の作業方法の再検討を提案した。

10.多くの CD 加盟国は、CD に対する自国の継続的な支持や、唯一の多国間軍縮交渉機構である CD の死活的重要な役割に対する期待を表明した。一方においてそれら国々は、CDが 2009 年作業計画の合意を履行できずにいることに遺憾の意を示した。多くの加盟国は、CD における行き詰まりの継続が、その信頼性をさらに傷つけうるとの懸念を述べた。多くの国は、1978 年開催の第 1 回軍縮特別総会(SSOD-I)で規定されたように、CD がその任務を果たすことの緊急の必要性を強調した。多くの CD 加盟国は、CD がすべての国家ならびに関係者の参加に門戸を開くべきであるとの見解を表明した。これに関連して、CD 加盟国の拡大に関する特別コーディネーターの任命を求める声があげられた。

11.いくつかの CD 加盟国は、もし現在の行き詰まりが継続すれば、CD の適合力が疑問視され、加盟国は代替的な多国間プロセスを求めるだろうとの懸念を表明した。対人地雷禁止条約やクラスター弾禁止条約のような重要な諸条約が CD の枠外で交渉されたことも指摘された。他の加盟国は、CD を損ないかねないそうした並行的プロセスを避けることの必要性を強調した。

12.多くの CD 加盟国は、2009 年作業計画及び 2010 年会期中に提案された後続提案に基づき、2011 年会期の早い段階で作業計画が採択されることを強く要求した。多くの国は、CD/1864 に含まれる 2009 年作業計画が前進に向けた最善策であると指摘した。その中には、核兵器あるいは他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する条約の交渉開始、核軍縮に関する実質作業の開始、消極的安全保証ならびに宇宙における軍備競争の禁止が含まれる。しかし、いくつかの CD 加盟国は、CD がその議題の中で、あらゆる問題を平等かつバランスのとれた方法で扱うべきであると主張した。いくつかの加盟国は CD が実質作業を開始する期限を設けることを求めた。そのような期限を CD の作業計画あるいは総会決議に盛り込むことが提案された。

13.発言者の大多数は、核兵器あるいは他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する、差別的でなく、多国間の、国際的で効果的に検証可能な条約を交渉し、締結することの火急の必要性を強調した。そのような条約の締結までの間は、核兵器あるいは他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産モラトリアムを宣言し、堅持するよう求める声があがった。すべての核兵器国はそのような条約の交渉開始に支持を表明した。多くの国は、そのような交渉が CD で行われることに期待を表明した。しかしそのような展望がなければ、代替策が検討されるべきであると多くの国が提案した。いくつかの国は、そのような別のメカニズムを追求することは CD の弱体化につながるとの懸念に言及した。

14.多くの CD 加盟国はまた、他の重要な議題項目に対する支持を表明した。それらの国々は、CD に核軍縮に関する特別委員会を設置し、核兵器禁止条約を含む、特定の時間枠を伴った核兵器の完全廃棄に向けた段階的計画に関する交渉を開始するよう要求した。一方、核兵器国は、2010 年 NPT 再検討会議のフォローアップ行動の履行に向けた決意など、核軍縮への誓約を再確認した。この目的に沿って、核兵器国は 2011 年にパリにおいて会合を開催する意向を表明した。

15.いくつかの CD 加盟国は、核兵器の完全廃棄が達成されるまでの間、非核兵器国が核兵器の使用あるいは使用の威嚇を受けないことを保証する条約の交渉を求めた。多くの加盟国は、宇宙利用を律する法的枠組みを宇宙における軍備競争の防止するために強化しなければならないとの懸念を表明した。多くの CD 加盟国は、CD に対し、これらの問題に関する実質作業の開始を求めた。

16.既存の多国間軍縮機構について斬新な運用検討を行う必要性に関する討議においては、CD の作業の方法論の妥当性をめぐって様々な見解が示された。いくつかの加盟国は、CDの手続規則が現在の機能停止の一因となっているとの見解を示した。全会一致ルールは冷戦時代には妥当であったかもしれないが、今日の多極的な世界にはもはやそぐわないことが指摘された。他の加盟国は、手続規則は CD にとって有益であると主張し、現在の全会一致ルールを引き続き堅持するよう提唱した。また、いくつかの加盟国は、現在の行き詰まりを打開する上で、政治的意思が重要な役割を果たすことを強調した。

17.国際原子力機関(IAEA)、化学兵器禁止条約機関(OPCW)及び包括的核実験禁止条約機関といった 3 つの国連関係機関の参加が多とされた。多くの加盟国が、CTBT 支援に関する 5 回目の隔年開催の外相会議で発せられた外相共同声明に言及した。さらなる遅滞なく、包括的核実験禁止条約の発効を求める声があげられた。加盟国は、中東非核兵器地帯設立の目標を強調した。これに関連して、いくつかの加盟国は、2010 年 NPT 再検討会議で合意されたフォローオン行動を歓迎し、また、IAEA 及び OPCW を含む関連する国際機関による支援を強調した。

18.本日の会合の結果として、また、それに勇気づけられて、多くの加盟国は、本日の会合が上述の通り過去 1 年にわたる一連の成功裏に終わった会合の延長上にあるとともに、多国間軍縮機構、とりわけ CD の作業の再活性化に向けた最初の一歩であることを確実にするための実質的なフォローアップ行動の必要性を示唆した。これに関連して、いくつかの加盟国は、いかなるフォローアップも、加盟国主導による開かれたプロセスであるべきこと、また、CD の役割及び作業ならびに核軍縮の達成に向けた努力が強化されるべきことを強調した。

19.これに関連し、事務総長は、本日の討議を基礎にして以下の行動を提案した。CD がさらなる遅滞なく実質作業を開始するよう、いっそうの柔軟性を求める圧倒的多数の声を考慮し、また、2009 年に全会一致で採択された作業計画を最大公約数として留意しつつ、CDが 2011 年の第 1 会期において、2009 年作業計画あるいは 2010 年会期中に提出された他の同様の後続提案を採択することが強く勧告された。
第 65 回国連総会が、「2010 年 9 月 24 日に開催されたハイレベル会合『CD の作業の再活性化と多国間軍縮交渉の前進』のフォローアップ」を本会議及び第 1 委員会の直接の議題として取り上げ、討議することが提案された。
事務総長は、本日の会議で提起された諸問題について、とりわけ CD の機能に特段の焦点を当てたハイレベル有識者パネルの設置の可能性を含め、徹底的な運用検討を行うよう軍縮諮問委員会に求める。同委員会の勧告に基づいて、事務総長はこの問題に関する今後の行動を検討するものとする。
2010 年NPT再検討会議において事務総長によるハイレベル会合の開催が勧告されたことを受け、事務総長は、本会合ならびにそのフォローアップについての報告を 2012 年に開催予定の 2015 年 NPT 再検討会議に向けた第 1 回準備委員会に提出する。この報告は、必要に応じて事務総長の提案を添えて、CD におけるあらゆる進展をも考慮に入れた会合の成果及び事務総長の見解を要約したものとなる。

20.ジョセフ・デイス総会議長、現在の CD 議長を務めるアンリ・エイべ・エイシ・カメルーン外相、ジュネーブ国連事務総長の出席が感謝とともに多とされた。総会議長には、本日の会合の成果に関するフォローアップの実施を含め、この死活的に重要な問題に尽力するよう要請された。

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)

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