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NPT/CONF.2010/50 (Vol. I)

2010年核不拡散条約再検討会議 最終文書
1巻第1
1995年再検討・延長会議において採択された諸決定及び決議ならびに
2000年再検討会議最終文書に照らした条約第8条第3項に基づく条約運用に関する評価*
*(原文注1)この評価は再検討会議で行われた議論を、議長の責任でできるだけ忠実にまとめたものである。

 

1995年再検討・延長会議において採択された諸決定及び決議ならびに2000年再検討会議最終文書に照らした条約第8条第3項に基づく条約運用に関する評価

条及び第条ならびに前文第1節、第3
1. 会議は、核不拡散条約(NPT)及びあらゆる側面における不拡散レジームの完全かつ効果的な履行が、国際の平和と安全を促進する上で極めて重要な役割を持つことを再確認する。会議は、加盟国による核エネルギーの平和利用を妨げることなく、あらゆる側面において条約を履行し、核兵器及びその他の核爆発装置の拡散防止に向けあらゆる努力を払うべきであることを再確認する。会議は、条約への普遍的支持ならびにすべての加盟国による条約の全条項の完全遵守が、核兵器及びその他の核爆発装置の拡散を防ぐ最善の手段であると引き続き確信する。

2. 会議は、圧倒的多数の加盟国が、とりわけ核兵器国が条約にしたがって核軍縮を行うという法的拘束力のある誓約を行ったことに応じる文脈において、核兵器あるいはその他の核爆発装置の受領、製造もしくは取得を行わないという法的拘束力のある誓約を行ったことを想起する。

3. 会議は、核兵器国が、核兵器あるいはその他の核爆発装置またはそれら兵器あるいは爆発装置の管理をいかなるものに対しても直接または間接に移譲せず、また、いかなる非核兵器国に対しても、核兵器あるいはその他の核爆発装置の製造または取得、もしくはそれら兵器あるいは爆発装置の管理の取得を援助、奨励、勧誘しないという誓約を再確認したことに留意する。

4. 会議は、非核兵器国が、核兵器あるいはその他の核爆発装置またはそれら兵器あるいは爆発装置の管理をいかなる者からも直接または間接に受領せず、核兵器またはその他の核爆発装置を製造もしくは取得せず、核兵器あるいはその他の核爆発装置の製造のためのいかなる支援をも求めず、また受領しないとの誓約を再確認したことに留意する。

5. 会議は、加盟国が、条約の目的及び条項、1995年再検討・延長会議において無投票で採択された決定及び決議2並びに2000年再検討会議において全会一致で採択された最終文書3の効果的な履行を誓約したことを再確認する。

6. 会議は、条約の全条項の厳格な遵守が、核兵器の完全廃棄という共通の目標を達成し、いかなる状況下においても核兵器のさらなる拡散をも防止し、平和と安全に対する条約の不可欠な貢献を維持する上での要であり続けていることを再確認する。

7. 会議は、いかなる条約上の義務の遵守に関するいかなる国に対する懸念についても、それらへの対処は、条約の諸条項ならびに国連憲章にしたがい、外交手段をもって追求されるべきであることを強調する。

8. 会議は、条約上の義務への違反は、核軍縮、核不拡散、核エネルギーの平和利用を損ねるものであると認識する。

条及び前文第45節、とりわけそれらと第条ならびに前文第67節との関係
9. 会議は、国際原子力機関(IAEA)が、IAEA規程ならびにIAEA保障措置制度にしたがい、核エネルギーが平和的利用から核兵器あるいは他の核爆発装置に転用されることを防ぐべく、条約第3条第1節に基づく義務の履行について、加盟国による保障措置協定の遵守を検証し確保する責任を有する権限ある機関であることを再確認する。会議は、このことに関してIAEAの権威を損なういかなる行為も行うべきではないことを確信する。加盟国による保障措置協定の不遵守について懸念を抱く加盟国は、IAEAが当該懸念を検討し、調査し、結論付け、その任務にしたがって必要な行動を決定ために、懸念を裏付ける証拠や情報を添えて、それら懸念を同機関に通告しなければならない。

10. 会議は、IAEA憲章第12条C及びIAEA文書INFCIRC/153(Corrected)の第19節にしたがって、事務局長をはじめとするIAEAが国連安保理及び総会を活用することの重要性を再確認する。また、国連安保理及び総会が、国連憲章に従い、IAEAによっていかなる違反が通告された場合にも適切な措置を講じることにより、IAEA保障措置協定の遵守を支援し、保障措置協定義務の遵守を保証する上で担う役割を再確認する。

11. 会議は、IAEA保障措置が核不拡散体制の基本的な構成要素であり、条約の履行において不可欠な役割を担い、核協力推進の環境を創出することを認識する。

12. 会議は、原料物質あるいは特殊核分裂性物質または機器、あるいは特殊核分裂性物質の保有、使用ないし生産のために特に設計され、調製された物質の移譲に関する供給取り決めにあたっては、IAEAの包括的保障措置の受諾と、核兵器あるいは他の核爆発装置を取得しないとの法的拘束力のある国際誓約とを前提条件として要求すべきであることを規定した、「核不拡散と軍縮のための原則と目標」と題された1995年再検討・延長会議の決定2第12節を想起する。

13. 会議は、条約第3条第1節に基づく包括的保障措置協定の履行は、加盟国の申告の正確さや完全性をIAEAが検証できるよう計画されるべきであり、これによって、申告済みの活動からの核物質の転用及び未申告の核物質ないし活動の不存在に関する信頼に足る保証が可能となることを再確認する。

14. 会議は、166か国が、条約第3条第4節に従い、IAEAとの間で包括的保障措置協定を発効させていることを歓迎する。

15. 会議は、1997年5月以降、IAEA理事会が133か国に包括的保障措置協定の追加議定書(INFCIRC/540(Corrected))を承認してきた事実を歓迎する。追加議定書は現在102か国により履行されている。

16. 会議は、すべての核兵器国が、各核兵器国が不拡散及び議定書の実効化の目標に寄与しうると現在見なしているモデル追加議定書中に規定された措置を取り入れた自発的申し出による保障措置協定に対する追加的議定書を発効させていることを歓迎する。

17. 会議は、IAEA文書INFCIRC/153(Corrected)に基づく包括的保障措置協定が申告済み核物質に関する保証の供与という主たる目的において成功し、かつ未申告の核物質及び活動の不存在に関する一定の保証を提供してきたことを認識する。会議は、モデル追加議定書が既定する措置の履行が、有効かつ効率的な態様によって、加盟国全体における未申告の核物質及び活動の不存在に関する信頼性を向上させてきたことに留意する。会議は、多くの加盟国が、これら措置がIAEA保障措置制度の不可欠の一部として導入されてきたとみなしていることに留意する。会議はまた、追加議定書の締結はいかなる加盟国にとっても主権上の専決事項であるが、いったん発効すれば、同議定書は法的義務となることに留意する。

18. 会議は、多くの加盟国が、包括的保障措置協定及び追加議定書をIAEA保障措置制度の不可欠の要素の一つであると認識していることに留意する。会議は、ある加盟国が条約第3条第1節にしたがって締結され、発効された追加議定書によって補完された包括的保障措置協定を持つ場合には、両文書に含まれる措置が当該加盟国の強化された検証基準に相当することに留意する。会議は、追加議定書が重要な信頼醸成措置の象徴であることに留意する。会議は、追加議定書を未だ締結、発効させていない加盟国が、同議定書を締結、発効させるよう奨励する。

19. 会議は、保障措置協定及びIAEA憲章にしたがい、保障措置の履行に関わるすべての情報に関する機密保持の原則を完全に堅持、遵守することの重要性を強調する。

20. 会議は、保障措置の履行及び評価に向けた国別アプローチの概念化と開発、及びより柔軟かつ効果的であると同時に、より包括的な情報先導型検証システムにつながる国別統合保障措置アプローチの履行に関してIAEAが行っている重要な作業を歓迎する。会議は、IAEAが、47の加盟国において統合保障措置を実施していることを歓迎する。

21. 会議は、二国間ならびに地域的な保障措置が、透明性及び加盟国間の相互信頼の促進において重要な役割を担いうること、並びにそれらが核不拡散に関する保証を提供しうることに留意する。

22. 会議は、多くの加盟国が、複数の加盟国の条約不遵守問題に関する懸念を表明するとともに、不遵守国家が義務の完全遵守に速やかに着手するよう要求したことに留意する。

23. 会議は、申告済みの核物質及び施設の使用ならびに未申告の核物質及び活動の不存在を検証するというIAEAの任務と権限が、包括的保障措置協定及び関連する追加議定書に合致した形で、完全に実行されることの重要性を強調する。

24. 会議は、追加議定書の履行が、非核兵器国の未申告核物質及び活動の不存在に関する追加的情報を入手するための効率的かつ有効な手段をIAEAに与えていると考える。会議は、多くの国が、追加議定書もまた信頼性ある保証の基盤となるアクセス権をIAEAに与えているとの見解であったことに留意する。

25. 会議は、核物質の計量及び管理に向けた国内制度の確立と維持を含めた核物質の国内規制及び管理を強化するために加盟国を支援するIAEAの努力を歓迎する。

26. 会議は、すべての国家については条約第1、2、3条を考慮し、また、条約加盟国については第4条を完全に尊重しつつ、核及び核関連軍民両用品を移転することについて加盟国の誓約を実施するためには、加盟国の国家的規則が必要であると認識する。会議は、効果的で透明性のある輸出管理が、核エネルギーの平和利用に向けた機器、物質及び科学的・技術的情報の交換を可能な最大限に促進する上で重要であると多くの国家が強調していることに留意する。これら国家は、核エネルギーの平和利用は不拡散に関する信頼の土壌の存在に依存するとの見解を有している。

27. 会議は、すべての核物質の効果的な物理的防護が極めて重要であり、物理的防護に関する国際協力の強化が必要であることに留意する。会議は、2005年の「核物質防護条約」4の改正採択を歓迎する。

28. 会議は、包括的な一群の核保安指針を確立することを通して核保安における国際協力を促進し、要請に応じて核保安強化に向けた加盟国の努力を支援しているIAEAの重要な役割を強調する。

29. 会議は、加盟国の国内法にしたがい、核及び他の放射性物質をめぐる不法取引の防止、検知、対応措置における国際協力及び加盟国間の調整を強化する必要性を認識する。これに関連して、会議は、情報交換の強化及び不法取引データベースの維持・継続のための活動を含めた、かかる不法取引に立ち向かう加盟国の努力を支援するIAEAの活動に留意する。

30. 会議は、2007年の「核テロリズム防止条約」5の発効に留意する。

条及び前文第67
31. 会議は、条約のいかなる部分も、差別なく、条約第1、2、3、4条にしたがって、平和目的の核エネルギーの研究、生産、使用を進めるという、すべての条約加盟国の奪い得ない権利に影響を与えるものと解されてはならないことを再確認する。会議は、かかる権利は、条約の基本目標の一つであることを認識する。これに関連して、会議は、核エネルギーの平和利用分野における各加盟国の選択及び決定が、核エネルギーの平和利用に関する自国の政策や国際協力の諸取決め並びに燃料サイクル政策を損なうことなく、尊重されるべきであることを強調する。

32. 会議は、すべての加盟国が、条約の全条項にしたがって、機器、物質、科学的・技術的情報の可能な最大限の交換を促進する義務を負い、また、当該交換に参加する権利を有することを再確認する。それを行うべき立場にある加盟国は、世界の発展途上地域の需要に妥当な考慮を払いつつ、とりわけ条約加盟の非核兵器国の領域内において、単独あるいは他の加盟国ないし国際機関とともに、平和目的の核エネルギー利用のさらなる発展に貢献するため、協力すべきである。

33. 会議は、核エネルギーの平和利用の促進をめざしたあらゆる活動においては、とりわけ発展途上国の需要が考慮され、条約加盟の非核兵器国が優遇されるよう要請する。

34. 会議は、すべての加盟国が、条約の目標にしたがって活動するにあたっては、平和目的の核物質、機器、科学的・技術的情報への完全なアクセスという、すべての加盟国、とりわけ発展途上国の正統な権利を遵奉するよう求める。条約第1、2、3条にしたがった加盟国間での核技術移転及び国際協力が奨励されるべきでる。これらは、当該協力を妨げかねない不適切な制限を排除することによって促進されるであろう。

35. 会議は、科学、技術、規制能力の強化を目指した効果的かつ効率的な計画を通じて、発展途上国における核エネルギーの平和利用を支援するIAEAの役割を強調する。

核エネルギーの平和利用:核エネルギー及び技術協力
36. 会議は、平和、健康、繁栄に対する原子力エネルギーの貢献を世界中で加速、拡大すべく、核エネルギーの平和利用において協力することが、IAEA憲章に明記された中心的目標の一つであることを強調する。

37. 会議は、国際技術協力を通じたものを含め、核エネルギーの平和利用及び適用における加盟国間での、またはIAEAを通じての加盟国の積極的な協力に肯定的に留意し、さらに奨励する。

38. 会議は、技術協力、原子力発電、電力以外の利用の分野におけるIAEAの活動が、エネルギー需要を満たし、健康を改善し、貧困を撲滅し、環境を保護し、農業を発展させ、水資源の利用を管理し、産業プロセスを最大限に効率化し、よってミレニアム開発目標の達成への貢献となる重要な手段のひとつであることを強調する。また、これらの活動が、二国間及び他の多国間協力と同様に、条約第4条に明記された目標の達成に寄与するものであることを強調する。

39. 会議は、核エネルギーの平和利用に対する支持を強化するためには、加盟国における平和目的の核活動に関する公衆への情報提供が重要であることを強調する。

40. 会議は、IAEAの技術協力活動の重要性を強調し、また、科学的・技術的能力の維持及びさらなる強化に向けて、発展途上国と核に関する知識を共有し、核技術を移転することによって、電力生産、核技術の癌治療への応用といった人間の健康、さらには環境保護、水資源管理、産業、食糧、栄養、農業への核技術利用などの諸分野において、発展途上国の社会経済発展にも貢献することの重要性を強調する。

41. 会議は、IAEAの技術協力プログラムが、平和目的の核技術移転における主要手段の一つとして、IAEA憲章及びINFCIRC/267に含まれる指針及び原則並びに総会及び理事会の関連指令に基づいて定式化されていることを強調する。

42. 会議は、IAEAの技術協力プログラムの有効性及び効率性の向上をめざした、IAEAならびにIAEA加盟国による継続的な協同の努力に留意する。

43. 会議は、核エネルギーの平和利用の促進に向けた地域的協力取決めが、個別国家におけるIAEAの技術協力活動を補完しつつ、支援を提供し、技術移転を強化する有効な手段となりうると認識する。会議は、「核科学・技術に関する研究、開発、訓練のためのアフリカ地域協力協定」、「ラテン・アメリカ及びカリブ地域における核科学及び技術の推進のための地域核協力協定」、「アジア太平洋地域における核科学及び技術に関する研究、開発、訓練のための地域協力協定」、「核科学及び技術に関する研究、開発、訓練のためのアジアのアラブ諸国における協力協定」、さらには欧州地域におけるIAEA技術協力プログラムに向けた戦略の貢献に留意する。

44. 会議は、加盟国に対して、技術協力活動のためのIAEAの諸資源が、IAEA憲章第2条の定める目的を充足するために充分で、保証され、安定したものとなるようあらゆる努力を払い、実際的措置を講じるよう求める。会議は、2009年末の達成レベルが94パーセントであることを賞賛とともに留意し、さらに、100パーセントの達成を期待する。これは、IAEA技術協力プログラムに対するIAEA加盟国の誓約を再確認する上で極めて重要である。よって会議は、核協力に対する財政措置が、責任分有の理念に沿うべきであり、すべての加盟国がIAEAの技術協力活動への拠出及び強化に向けた共通の責任を分有していることを想起する。

45. 会議は、癌治療、水資源、産業、食糧、栄養、農業における核技術の利用を含む、とりわけ健康の分野における人間の基本的需要を満たすことをめざしたIAEAの継続的努力に対するIAEA事務局長の誓約を歓迎する。とりわけIAEAの2010年の優先課題として、癌対策に焦点を当てたIAEA事務局長のイニシャティブを歓迎する。

46. 会議は、IAEAの活動への支援として国家あるいは国家グループが既に誓約した資金拠出を歓迎する。こうした追加的財源は、ミレニアム開発目標の達成に寄与するものである。

47. 会議は、核エネルギーの平和利用の前進に不可欠な特殊技能を有する労働力を訓練するための国内的、二国間及び国際的努力を支持する。

原子力発電
48. 会議は、各加盟国は自国のエネルギー政策を決定する権利を有することを認識する。

49. 会議は、世界のあらゆる地域における持続的なエネルギー及び電力へのアクセスを可能とするためには、エネルギー源に関する多様な選択肢が必要であり、また、加盟国は自国のエネルギー安全保障及び気候保護の目的を達成すべく様々な方策を追求しうることを認識する。

50. 会議は、核エネルギーに関する安全及び保安問題とともに、持続可能な手段による使用済み燃料及び放射性廃棄物の管理という重要課題を認識し、また、同課題に対処するために継続的な国際的努力が行われていることを認識する。核燃料供給国は、要請に応じて、使用済み燃料の安全かつ確実な管理に関して受領国に協力、支援することが奨励される。

51. 会議は、関連するIAEAの基準及び指針に沿った、安全、安心かつ効率的な原子力発電の利用を支援する適切なインフラの開発が、とりわけ原子力の導入を計画している国々にとって中心的な重要課題であることを認識する。

52. 会議は、原子力発電を含めた核エネルギーの開発は、保障措置に対する誓約及び継続的な履行とともに、IAEAの基準及び加盟国の国内法及び国際義務に合致した適切かつ効果的な水準の安全・保安措置を伴うべきであることを強調する。

53. 会議は、当該分野における能力を開発中の国々が、国内において、さらには「革新的原子炉・核燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO)」、「国際熱核融合実験炉(ITER)」、「第4世代国際フォーラム」等すべての関連する国際的計画における協力を通じて、先端核技術のさらなる開発及び促進のために努力することの重要性に留意する。

54. 会議は、2007年1月にアルジェで開催された「平和と持続可能な開発に向けた核エネルギーの貢献に関するアフリカ地域ハイレベル会議」、IAEAの主催で2009年4月に北京で開催された「21世紀における核エネルギーに関する国際閣僚会議」、2010年3月にパリで開催された「民生用核エネルギーへのアクセスに関する国際会議」に留意する。

55. 会議は、関係する加盟国が、拡散抵抗性を有する次世代原子炉のさらなる開発を行うことを奨励する。

核燃料サイクルへの多国間アプローチ
56. 会議は、IAEA加盟国による使用を目的とする低濃縮ウラン備蓄のロシア連邦内における創設に関する、2009年11月のIAEA理事会決議及び2010年3月の同連邦とIAEAの関連協定締結に留意する。

57. 会議は、IAEAまたは地域的協議体の後援の下、差別的でなく透明な方法で、本条約の下での権利及び諸国の燃料サイクル政策に影響を与え、損ねることなく、また関連するIAEA包括的保障措置の要件を含めた本事案を巡る技術的、法的、経済的複雑さに対処しつつ、燃料サイクルのバックエンドへの取り組みのための可能な枠組み及び核燃料供給保証メカニズム創設の可能性を含む、核燃料サイクルへの多国間アプローチの開発に関する検討を継続することの重要性を強調する。

58. 会議は、核エネルギーの平和利用のための核安全及び核保安の重要性を強調する。核安全及び核保安は国家の責任であるが、IAEAは、最良慣行(ベスト・プラクティス)を基礎とした安全基準、核保安指針及び関連条約の開発において重要な役割を担うべきである。

59. 会議は、世界的な安全記録の立証が核エネルギー平和利用のための重要要素であり、安全に関する技術的・人的要件を最適水準に維持するために継続的な努力が必要であることに留意する。安全は国家の責任であるが、安全に関するすべての問題においては国際協力が重要である。会議は、あらゆる側面での安全の向上に向けたIAEAならびに他の関連国際機関の努力を奨励するとともに、すべての加盟国が安全文化を強化、促進すべく、適切な国内的、地域的、国際的措置を講じることを奨励する。会議は、当該分野におけるIAEAの活動を含め、核安全、放射線防護、放射性物質の安全輸送、放射性廃棄物の管理の強化に向けた国内措置及び国際協力の拡大を歓迎し、強調する。これに関連して、会議は、差別的でない方法で、訓練、ワークショップ、セミナー、能力開発に加盟国、とりわけ発展途上国が参加することを通じて、これらの分野に対する意識を高めるべく、特別の努力が払われ、継続されるべきであることを想起する。

60. 会議は、自国の核施設の安全維持に関する一義的責任は個々の加盟国にあると認識し、核安全、放射性防護、使用済み燃料及び放射性廃棄物の管理に関する独立かつ効果的な規制主体に加え、国内における適切な技術的、人的及び規制のためのインフラの整備がきわめて重要であると認識する。

61. 会議は、「原子力安全条約」6、「原子力事故の早期通報に関する条約」、「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」7、「使用済燃料管理および放射性廃棄物管理の安全に関する条約」8に未だ加盟していない加盟国が、これらの条約に加盟するよう奨励する。

62. 会議は、法的拘束力を持たない「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」及び「研究炉の安全に関する行動規範」の原則と目標を支持し、これらを補完する「放射線源の輸出入指針」の重要な役割を強調する。

63. 会議は、「核物質防護条約」に未だ加盟していないすべての加盟国が、可能な限り早期に同条約に加盟することを奨励する。

64. 会議は、「核によるテロリズム行為等の防止に関する国際条約」に未だ加盟していないすべての加盟国が、同条約に加盟することを奨励する。

65. 会議は、2010年4月にワシントンDCで開催された核保安サミットに留意する。

66. 会議は、民生部門における高濃縮ウラン利用の最小化に向けた加盟国の自発的努力を歓迎する。

67. 会議は、ウラン採鉱における環境管理を含め、ウラン採鉱及び加工に対して、IAEAによって開発された最良慣行及び基本原則を適用することの重要性を認識する。

68. 会議は、各加盟国が組織的能力及び技術管理能力の開発に注力する一方、IAEAをはじめとする国際努力もしくは地域的、国内的努力を通じて、核、放射能、輸送及び廃棄における安全、核保安に関する教育や訓練のための持続可能なプログラムを実行することの本質的重要性を強調する。

69. 会議は、原子力産業や民間部門との対話を通じて行うものを含め、加盟国が核安全及び核保安の分野における最良慣行の適宜共有を促進することを奨励する。

70. 会議は、かつて核兵器計画と関連のあった核活動の中止に関連して、適切な場合には移住させられた人々の安全な再定住や汚染地域での経済的生産力の回復を含めた安全及び汚染の問題が注目されていることを歓迎する。

71. 会議は、放射性汚染物質の除去・処理の分野における専門的知見を有するすべての政府ならびに国際機関が、汚染地域の救済を目的に要請を受けた場合には、適切な支援の提供を検討することを奨励する。また、会議は、このことに関連して今日までに行われてきた諸努力に留意する。

放射性物質の安全運搬
72. 会議は、これまでの歴史において、海上輸送を含む放射性物質の民間輸送が優秀な安全記録を残していることを認識し、国際輸送の安全維持及び強化に向けた国際協力の重要性を強調する。

73. 会議は、国際法で規定され、関連する国際文書に反映された、航行及び飛行の権利ならびに自由を再確認する。

74. 会議は、放射性物質の安全輸送に関するIAEAの基準を支持し、放射性物質の輸送が国際の安全、保安、環境保護に関する国際基準及び指針にしたがって引き続き実施されることが、すべての加盟国の利益に適うものであることを強調する。会議は、放射性物質の海上輸送をめぐる発展途上の島嶼国ならびに他の沿岸国の懸念に留意し、これに関連して、輸送上の安全、保安、緊急時対応に関する懸念への対処を目的とした、輸送国と沿岸国間の意思疎通の強化に向けた努力を歓迎する。

平和目的に限定された核施設に対する軍事攻撃
75. 会議は、平和目的に限定された核施設に対する攻撃あるいは威嚇が、核の安全を脅かし、危険な政治的、経済的、環境的結果をもたらし、国連憲章の諸条項に基づき適切な行動をとることが認められた事態における武力行使に関する、国際法の適用についての、深刻な懸念を招くものであると考える。会議は、大多数の加盟国が、このことに関する法的拘束力のある文書の検討を提案したことに留意する。

核損害責任
76. 会議は、「核エネルギー分野での第三者責任に関するパリ条約」9、「原子力損害の民事責任に関するウィーン条約」10、「ブリュッセル補足条約」、「ウィーン条約とパリ条約の適用に関する共同議定書」11及びこれら条約を修正する議定書ならびにそこに含まれる目標を想起する。また、会議は、他の損害責任レジームを阻害することなく、核損害責任法の原則に基づく世界的な核損害責任レジームを確立するという「原子力損害の補完的補償に関する条約」12の主旨に留意する。

77. 会議は、法的、技術的検討を十分考慮するとともに、放射性物質の輸送中を含む核事故あるいは事件の際に厳しい責任が課されるべきとの原則に立って、必要に応じ、核事故あるいは事件を原因とする、とりわけ人的、物的、環境的損害に対する補償を提供するための、効果的で首尾一貫した核損害責任メカニズムを国内及び世界レベルで確立することの重要性を認識する。

第Ⅴ条
78. 会議は、あらゆる核爆発の平和的応用に関する条約第5条の条項は、包括的核実験禁止条約(CTBT)13に照らして解釈されるべきであることを強調する。

条及び前文第812
79. 会議は、すべての加盟国が第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、不可逆性の原則に従い、保有核兵器の完全廃棄を達成するという核兵器国による明確な約束が再確認されたことに留意する。

80. 会議は、いくつかの核兵器国による2国間もしくは一方的な核兵器削減の達成を歓迎しつつ、配備され、備蓄されている核兵器の総数が依然として推定数千発に上るという事実に懸念をもって留意する。会議は、これら兵器が使用される可能性と、使用がもたらすであろう壊滅的な人道的結果に対して深刻な懸念を表明する。

81. 会議は、核兵器のない世界の達成に関連して諸政府及び市民社会からなされている新しい提案及びイニシャティブに留意する。とりわけ、確固たる検証システムによって裏打ちされた、核兵器禁止条約もしくは相互に補強しあう別々の文書という枠組の合意を検討すべきであるとする国連事務総長の軍縮提案に留意する。

82. 会議は、核軍縮プロセスの最終段階及びその他の関連措置は、時間枠を伴うべきものであると大多数の加盟国が考える法的枠組みの中において追求されるべきであることを強調する。

83. 会議は、核軍縮及び不拡散レジームにおける包括的核実験禁止条約(CTBT)の不可欠な役割、すなわち、同条約が、あらゆる核兵器の爆発実験及び他のあらゆる核爆発の中止を達成し、核兵器の開発及び質的改良を抑制し、そして高性能新型核兵器の開発を終結させることによって、垂直的・水平的拡散の双方を阻止するものであることを再確認する。会議は、全加盟国に対し、CTBTの発効までの間、とりわけ新型核兵器の開発に関して、同条約の目標及び目的を阻害するいかなる行動をも慎むよう求める。

84. 会議は、CTBTに181か国が署名し、批准が発効の要件とされている35か国を含めた151か国が批准書を寄託していることを歓迎する。このことに関連し、会議は会議期間中になされた中央アフリカ共和国及びトリニダード・トバゴ共和国による批准を歓迎し、インドネシア及びアメリカ合衆国を含む残された発効の要件とされている諸国が、最近、批准プロセスの完了を追求すると表明していることを歓迎する。

85. 会議は、CTBT第14条にもとづいて2009年9月にニューヨークで開催され、同条約発効を促進するための明確かつ実際的な措置を採択した同条約発効促進会議において同条約に対して示されたハイレベルの政治的支持を歓迎する。会議は、国際監視システムの重要性を強調するとともに、CTBT機関準備委員会によってなされた同システム完成に向けた進捗を賞賛する。

86. 会議は、安全保障政策における核兵器の役割をさらに低減させる必要性を強調する。

87. 会議は、2009年5月のジュネーブ軍縮会議における作業計画に関する全会一致の決定を歓迎しつつ、軍縮会議が10年以上にわたり合意された作業計画の遂行のための交渉と実質的検討を開始することができないでいることを深く懸念するとともに、遅滞なく同作業が開始されるよう求める。

88. 会議は、1996年7月8日にハーグにおいて示された核兵器による威嚇または使用に関する国際司法裁判所の勧告的意見に留意する。

89. 会議は、他の核兵器国によって宣言、履行された、核兵器関連施設の閉鎖及び解体を含む一方的削減措置に加え、「戦略攻撃兵器のさらなる削減及び制限のための措置に関するアメリカ合衆国とロシア連邦との間の条約」が署名されたことを歓迎する。会議はまた、いくつかの核兵器国によってなされた消極的安全保証の強化に関する声明とともに、安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割を低減するとのいくつかの核兵器国による声明を歓迎し、中国が核兵器先行不使用に基づく宣言的政策を維持していていることに留意する。

90. 会議は、核兵器の作戦態勢の緩和と照準解除に関連する措置の声明が、信頼醸成措置と安全保障政策における核兵器の役割の低減を通した核軍縮に貢献することを認識する。

91. 会議は、いくつかの核兵器国による兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム宣言を歓迎する。

92. 会議は、核不拡散条約第6条及び1995年の「核不拡散及び核軍縮の原則と目標」と題された決定第4(c)項の履行に関する強化された再検討プロセスの範囲内において、また1996年7月8日の国際司法裁判所の勧告的意見を想起しつつ、核兵器国によって提出された定期報告に留意する。

93. 会議は、2009年9月に、核軍縮及び不拡散の文脈において信頼醸成措置に関して開催された核兵器国による第1回会合に留意する。

94. 会議は、いくつかの核兵器国による保有核兵器に関する透明性の向上に留意し、すべての核兵器国が、保有核兵器に関する透明性をさらに向上させることを奨励する。

95. 会議は、核兵器のない世界の実現に向けた核軍縮諸条約の遵守を保証するために必要とされる核軍縮検証能力の開発の努力を歓迎する。会議は、核弾頭解体の検証システム確立を目指すノルウェーと英国による協力に留意する。

96. 会議は、核兵器のない世界の実現における本条約の諸目標を前進させるための有益かつ有効な方策としての核軍縮・不拡散教育の重要性を強調する。

条及び非核兵器国の安全
97. 会議は、加盟国は国連憲章にしたがい、国際関係において、国家の領土保全及び政治的独立に対するいかなる武力の行使も威嚇も慎まなければならないことを再確認する。

98. 会議は、地域の関係諸国の自由意志を基礎とし、国際的に認知された非核兵器地帯の設立が、世界及び地域の平和と安定を促進し、核不拡散体制を強化し、核軍縮という目的の実現に貢献することを確信する。

99. 会議は、2005年以来取り組まれてきた非核兵器地帯条約締結のための措置、並びに南極条約、トラテロルコ、ラロトンガ、バンコク、ペリンダバ及び中央アジア非核兵器地帯諸条約が核軍縮及び核不拡散という目標を実現するためになしてきた継続的貢献を歓迎する。

100. 会議は、モンゴルによる非核兵器地位の宣言を歓迎するとともに、その地位の強化のための同国による措置を支持する。

101. 会議は、2009年7月15日のペリンダバ条約発効を歓迎する。会議はまた、各非核兵器地帯による目的達成のための行動を歓迎する。とりわけ、東南アジア非核兵器地帯委員会が、2007年~2012年と期間を定めてバンコク条約の履行強化のための行動計画を促進していること、また東南アジア諸国連合及び核兵器国との間で進行中の東南アジア非核兵器地帯条約の議定書に関する協議を歓迎する。

102. 会議は、2009年3月21日の中央アジア非核兵器地帯条約発効を歓迎する。会議は、同非核兵器地帯の設立は、核不拡散体制の強化、核エネルギーの平和利用並びに放射能汚染による影響を受けた地域の環境回復における協力の促進のための重要な歩みであると認識する。会議は、関係諸国が1999年の国連軍縮委員会の指針に従い、中央アジア非核兵器地帯を機能させることに関連する重要課題を解決するよう求める。

103. 会議は、いくつかの核兵器国による非核兵器地帯条約議定書の批准、アメリカ合衆国による、アフリカ及び南太平洋非核兵器地帯条約議定書批准を目指すプロセスを開始するとの意思表明、そして中央アジア及び東南アジア非核兵器地帯の加盟国との批准書の署名に関する協議実施の意思表示を、それぞれの批准書への署名と発効のための努力として歓迎する。会議は、本条約第7条が想定する、地域における核兵器の不存在を確保する、非核兵器地帯諸条約の議定書に未だ署名、批准していない核兵器国が批准、署名することの重要性を強調する。

104. 会議は、非核兵器地帯が存在しない地域、とりわけ中東における非核兵器地帯の設立の重要性を強調する。

105. 会議は、非核兵器地帯諸条約及び批准書によって供与される安全保証を実行に移すよう要請する。

106. 会議は、2005年4月28日にメキシコ・シティで開かれた第1回非核兵器地帯条約加盟国会議と、2010年4月30日にニューヨークで開かれたモンゴルを加えた第2回非核兵器地帯条約加盟国会議を、核兵器のない世界の実現に重要な貢献をなすものとして歓迎する。会議はまた、加盟国及び非核兵器地帯条約署名国による、共通の目標実現のための精力的努力を歓迎する。会議は、各非核兵器地帯条約の原則及び目標の全面履行と条約レジームの実質化のための具体的措置を確立することを通した、現存する非核兵器地帯間の協力促進と協議メカニズム強化を奨励する。会議は、次回の本条約再検討会議の枠組みの中において、非核兵器地帯加盟国及び非核兵器地位宣言国による会合を開催するというイニシャティブを承認する。

南アジア及び他の地域的課題
107. 会議は、インド及びパキスタンに対して、無条件かつ速やかに、非核兵器国として核不拡散条約に加盟し、すべての核施設をIAEAの包括的保障措置の下に置くよう求める。会議はさらに、両国が、核兵器及びそれらの運搬手段に利用可能な技術、物質、機器の不拡散のための輸出管理措置を強化するよう求める。

108. 会議は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)による核爆発実験実施声明を強く非難し、DPRKは、如何なることがあろうとも条約に定められた核兵器国の地位を得ることはできないことを宣言する。会議は、平和的手段による朝鮮半島の検証可能な非核化のための有効なメカニズムである6か国協議に対する強固な支持を再確認する。会議は将来、適切な時期に協議が再開されるよう求める。会議は、国連安保理の関連決議の履行の重要性を想起し、DPRKに対し、2005年9月の共同声明に従い、6か国協議における諸誓約を履行するよう強く求める。


NPT
再検討プロセスの更なる強化
109. 会議は、2000年再検討会議及び1995年再検討・延長会議における関連する決定で明記された再検討プロセスの目的を再確認する。1995年会議の文脈において、「再検討会議は、条約の履行の強化ならびに条約の普遍性を達成すべく、何をなすべきかを明確に検討しなければならない」とした決定1に盛り込まれた誓約を想起し、再検討会議は以下の通り決定し、勧告する。

110. 会議は、再検討サイクル全体を通じて、最善の調整及び継続性を確保することの重要性を認識する。この文脈において、会議は、過去ならびに現在の議長及び委員会議長が、議長責任に関する実務的案件について、必要時に次期議長及び委員会議長と協議を行うことを可能とすることを奨励する。これらの会議への参加は、自由意志に基づくものであり、加盟国に課される費用分担に影響しない。

111. 会議は、国連軍縮局に本条約の再検討サイクルを支援する専任担当官を追加配置するよう勧告する。当該担当官は自立的に機能し、条約加盟国による諸会議に責任を持つ。加盟国によるさらなる決定までの間、当該担当官に関連する経費は、意思を有する加盟国による自発的な出資による。このような自発的支出は無条件になされる。当該担当官の任務及び役割については、次期再検討サイクルにおいて見直されるであろう。

112. 会議は、再検討プロセスの強化による実効性の向上が、加盟国の継続的責任であり、したがってこの点に関しては次の再検討サイクルにおいてさらなる検討が行われるべきであることを強調する。


113. 会議は、2002年のキューバ、2003年の東チモールによる条約加盟、2001年8月29日の承継声明に基づくセルビアによる条約遵守の継続、並びに2006年のモンテネグロによる承継を歓迎する。これらの結果、加盟国総数は190となった。また、会議は、条約の普遍性を達成することの緊急性及び重要性を再確認する。

114. 会議は、本条約が、核軍縮の促進、核兵器拡散の防止、核エネルギーの平和利用の促進、そして重要な安全保障上の利益の提供のために不可欠であることを再確認する。会議は、本条約の普遍的遵守がこの目的達成を可能とすることを引き続き確信し、本条約に未だ加盟していないインド、イスラエル及びパキスタンの全てが、これ以上遅滞することなく、無条件に本条約に加盟し、必要とされる包括的保障措置協定のモデル追加議定書に従った追加議定書を発効させることを求める。会議はまた、保障措置が施されていない核施設を運用しているこれら三か国が、核兵器の開発と配備を追求する政策を明確かつ早急に停止するとともに、地域及び国際の平和と安全及び核軍縮と核兵器拡散の防止のための国際的努力を損なうようないかなる行動をも慎むよう求める。

115. 会議は、条約の一体性の維持、普遍性の達成及びその厳格な履行が、地域及び国際の平和と安全に不可欠であることを再確認する。

116. 会議は、条約の普遍性を達成するという加盟国の誓約を再確認する。加盟国は、大多数の加盟国が条約を著しく損ね、地域及び国際の平和と安定に対する脅威であるとみなしている、1995年再検討・延長会議で採択された中東決議の履行における進展の欠如に関する懸念を表明する。

117. 会議は、原料物質、特殊核分裂性物質、または特殊核分裂性物質の加工、使用もしくは生産のために特別に設計もしくは調整された装置また物質の移転のための供給取決めを行うためには、IAEAの包括的保障措置と核兵器もしくは他の核爆発装置を入手しないとの法的拘束力のある国際公約の受諾が必要条件として求められることを再確認する。


118. 会議は、各加盟国が、この条約が対象とする事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは、その主権の行使として、この条約から脱退する権利を有することを再確認する。会議はまた、第10条にしたがって、そうした脱退が他のすべての条約加盟国及び国連安全保障理事会に対し3か月前に通告されること、また、同通告には、自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についての説明が含まれなければならないことを再確認する。

119. 会議は、多数の加盟国が、脱退の権利はNPTの諸条項によって確立されたものであると確認したことに留意する。他の関連する国際法との関係において、その解釈には異なる見解が存在した。会議は、脱退国が、国際法の下、脱退前に犯したNPTへの違反に対し引き続き責任を有することを多数の国が強調したことに留意する。会議はまた、このような脱退は、IAEA保障措置と関連するものを含め、脱退前の条約の履行を通じて生じた脱退国と他の加盟国との間におけるいかなる権利、義務、あるいは法的状況にも影響を及ぼさないことに留意する。

120. 会議は、脱退の法的因果関係ならびに脱退国の遵守状況がいかなるものであれ、加盟国は速やかに協議を行うべきとの、また、地域的な外交イニシャティブに着手すべきであるとの見解がきわめて多くの加盟国から示されたことに留意する。会議は、脱退権の行使に関して第10条で想定された特定の状況を考慮したとき、きわめて多くの加盟国が国連憲章の下で安保理に委ねられた責任を再確認したことに留意する。

121. 会議は、核供給国は、他の加盟国との間で締結する取決めまたは契約に、国際法及び国内法に従い、脱退時の廃棄及びまたは返却に関する条項の導入を検討することが可能であると、多くの加盟国が認識していることに留意する。


2 1995年核不拡散条約再検討・延長会議最終文書・第一部(NPT/CONF.1995/32(Part I)、付属文書。
3 2000年核不拡散条約再検討会議最終文書・第1巻(NPT/CONF.2000/28(Parts I-IV)。
4 「国連条約シリーズ」vol. 1456, No. 24631.
5 国連総会決議59/290付属文書
6 IAEA文書INFCIRC/449に再掲。
7 IAEA文書INFCIRC/335に再掲。
8 「国連条約シリーズ」vol. 2153, No. 37605.
9 「国連条約シリーズ」vol. 956, No. 13706
10 「国連条約シリーズ」vol. 1063, No. 16197.
11 「国連条約シリーズ」vol. 1672, No. 28907
12 IAEA文書INFCIRC/567に再掲。
13 国連総会決議50/45参照。

結論ならびに今後の行動に向けた勧告

Ⅰ. 核軍縮

会議は、本条約第6条ならびに1995年の「核不拡散と核軍縮に向けた原則と目標」決定第3及び4(c)項の完全で、効果的、かつ速やかな履行を目指し、2000年再検討会議の最終文書で合意された実際的措置を基礎として、核兵器の完全廃棄への具体的措置を含む核軍縮に関する以下の行動計画に合意する。

A. 原則と目的
i. 会議は、条約の目的にしたがい、すべてにとって安全な世界を追求し、核兵器のない世界の平和と安全を達成することを決意する。

ii. 会議は、すべての加盟国が第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、保有核兵器の完全廃棄を達成するという核兵器国の明確な約束を再確認する。

iii. 会議は、2000年NPT再検討会議の最終文書で合意された実際的措置が引き続き有効であることを再確認する。

iv. 会議は、核兵器国による核軍縮につながる重要措置が、国際の安定、平和、安全を促進し、また、すべてにとって強化され、減じない安全という原則に基づくべきであることを再確認する。

v. 会議は、核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する。

vi. 会議は、NPTの普遍性の死活的重要性を確認するとともに、条約の非加盟国に対し、即時かつ無条件に非核兵器国として条約に加盟し、すべての核兵器の完全廃棄を達成することを誓約するよう求める。また、加盟国に対し条約の普遍的加盟を促進し、条約の普遍化の見通しに否定的影響を与えうるいかなる行動もとらないよう求める。

会議は以下を決定する。
*行動1:すべての加盟国は、NPT及び核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求することを誓約する。

*行動2:すべての加盟国は、条約義務の履行に関して、不可逆性、検証可能性、透明性の原則を適用することを誓約する。

B. 核兵器の軍縮
i. 会議は、国際の安定、平和、安全を促進する形で、また、すべてにとって安全が減じず、強化されるという原則に基づき、核兵器国が2000年NPT再検討会議の最終文書で合意された核軍縮につながる措置を履行することが早急に必要であることを再確認する。

ii. 会議は、核兵器国があらゆる種類の核兵器を削減、廃棄する必要性を強調するとともに、とりわけ最大の核保有国に対し、これに関する努力を率先して行うよう奨励する。

iii. 会議は、具体的な軍縮努力の実行をすべての核兵器国に求める。また会議は、核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、すべての加盟国が特別な努力を払うことの必要性を強調する。会議は、国連事務総長による核軍縮のための5項目提案、とりわけ同提案が強固な検証システムに裏打ちされた、核兵器禁止条約についての交渉、あるいは相互に補強しあう別々の条約の枠組みに関する合意、の検討を提案したことに留意する。

iv. 会議は、核兵器国が核兵器の開発及び質的改良を抑制すること及び、高性能新型核兵器の開発を終了させることに対し、非核兵器国が抱く正統な関心を認識する。

会議は以下を決定する。

*行動3:保有核兵器の完全廃棄を達成するとの核兵器国による明確な約束の履行において、核兵器国は、一方的、二国間、地域的、また多国間の措置を通じ、配備・非配備を含むあらゆる種類の核兵器を削減し、究極的に廃棄するため、いっそうの努力を行うことを誓約する。

*行動4:ロシア連邦及びアメリカ合衆国は、戦略兵器削減条約の早期発効ならびに完全履行を追求することを誓約する。両国は、保有核兵器のいっそうの削減を達成するための爾後の措置について議論を継続するよう奨励される。

*行動5:核兵器国は、国際の安定と平和や、減じられることなく強化された安全を促進する形で、2000年NPT再検討会議の最終文書に盛り込まれた核軍縮につながる措置について、確固たる前進を加速させることを誓約する。この実現に向け、核兵器国はとりわけ以下をめざし速やかに取り組むことが求められる。

A. 行動3で確認されたように、あらゆる種類の核兵器の世界的備蓄の総体的削減に速やかに向かう。

B. 全面的な核軍縮プロセスの不可欠な一部として、種類や場所を問わずあらゆる核兵器の問題に対処する。

C. あらゆる軍事及び安全保障上の概念、ドクトリン、政策における核兵器の役割と重要性をいっそう低減させる。

D. 核兵器の使用を防止し、究極的にその廃棄につながり、核戦争の危険を低下させ、核兵器の不拡散と軍縮に貢献しうる政策を検討する。

E. 国際の安定と安全を促進するような形で、核兵器システムの作戦態勢をいっそう緩和することに対する非核兵器国の正統な関心を考慮する。

F. 核兵器の偶発的使用の危険性を低下させる。

G. 透明性をいっそう高め、相互の信頼を向上させる。

核兵器国は、上記の履行状況について、2014年の準備委員会に報告するよう求められる。2015年の再検討会議は、第6条の完全履行に向けた次なる措置を検討する。

*行動6:すべての加盟国は、ジュネーブ軍縮会議が、合意された包括的かつバランスのとれた作業計画の文脈において核軍縮を扱う下部機関を、即時に設置すべきであることに合意する。

C. 安全の保証
i. 会議は、核兵器の完全廃棄が核兵器の使用あるいは使用の威嚇を防止する唯一の保証であることを再確認し認識するとともに、核不拡散体制を強化しうる、明確かつ法的拘束力のある安全の保証を核兵器国から供与されることに対する非核兵器国の正統な関心を再確認し認識する。

ii. 会議は、NPT加盟国である非核兵器国に対し、核兵器の使用や使用の威嚇を行わないという条件付あるいは無条件の安全の保証を供与するという、核兵器国による一方的宣言に留意するとした国連安保理決議984(1995)を想起する。また、非核兵器地帯においては安全の保証が条約に基づいて供与されることを認識し、各非核兵器地帯のために設定された関連議定書を想起する。

NPTの枠内における諸努力を毀損することなく、会議は以下を決定する。
*行動7:すべての加盟国は、合意された包括的かつバランスのとれた作業計画の文脈において、ジュネーブ軍縮会議(CD)が核兵器の使用あるいは使用の威嚇から非核兵器国の安全を保証するための効果的な国際取り決めに関する協議を即時開始すべきであることに合意する。また、制限を排し、法的拘束力のある国際条約を除外することなく、この問題のあらゆる側面を扱う勧告をより良いものにすることをめざした実質的な議論を行うことに合意する。再検討会議は、国連事務総長に対しCDの作業を支援するためのハイレベル会議を2010年9月に開催するよう求める。

*行動8:すべての核兵器国は、安全の保証に関する既存の誓約を完全に尊重することを誓約する。条約加盟国である非核兵器国に安全の保証を供与していない核兵器国は、そうした行動をとるよう奨励される。

*行動9:地域の関係諸国間の自由意志で合意された取り決めに基づき、また、国連軍縮委員会の1999年指針にしたがい、適切な地域に非核兵器地帯を追加して設立することが奨励

される。すべての関連国は、非核兵器地帯条約ならびに関連議定書を批准するよう、また消極的安全保証を含む、すべての非核兵器地帯条約における法的拘束力のある関連議定書の発効に向けて系統的に協議し、協力するよう奨励される。関係国は、関連するいかなる留保をも見直すことが奨励される。

D. 核実験
i. 会議は、すべての核爆発実験ならびに他の核爆発の中止が、核兵器の開発と質的改良を抑制し、高性能新型核兵器の開発を終了させることにより、あらゆる側面において核軍縮と不拡散の有効な措置となることを認識する。

ii. 会議は、国際的な核軍縮・不拡散体制の中心要素である包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の死活的重要性を再確認するとともに、CTBTの発効までの間、それぞれの核爆発実験モラトリアムを堅持するという核兵器国の決定を再確認する。

会議は以下を決定する。

*行動10:すべての核兵器国は、核兵器国による肯定的な決定がCTBTの批准に向けた有益な効果を生むであろうこと、また、核兵器国が付属文書2の国家、とりわけNPTに参加しておらず、保障措置下にない核施設の運用を継続している国家の署名と批准を奨励するという特別の責任を有することに留意しつつ、CTBTを批准することを約束する。

*行動11:CTBTの発効までの間、すべての加盟国は、核爆発実験あるいは他の核爆発、核兵器に関する新技術の利用及びCTBTの目標と目的を損ういかなる行動をも慎むことを誓約する。また、核兵器爆発実験に関するすべての既存のモラトリアムは継続されるべきである。

*行動12:すべてのCTBT批准国は、CTBT発効促進会議ならびに2009年9月の同会議で全会一致で採択された措置の貢献を認識するとともに、CTBT早期発効への進展を2011年の会議において報告することを誓約する。

*行動13:すべてのCTBT批准国は、国家、地域、世界レベルでCTBTの発効ならびに履行を促進することを約束する。

*行動14:包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会は、同委員会の任務にしたがい、国際監視システム(IMS)の早期完成及び暫定運用を含め、CTBT検証体制を完全に確立することが奨励される。CTBTO準備委員会は、条約発効の暁には、効果的で信頼性が

あり、直接参加的で、差別的でない、世界を網羅した検証組織として機能し、CTBT遵守の確保主体となるべきである。

E. 核分裂性物質

i. 会議は、核兵器あるいは他の核爆発装置のための核分裂性物質の生産を禁止する、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な条約を交渉し、妥結することが早急に必要であることを再確認する。

会議は以下を決定する。

*行動15:すべての加盟国は、合意された、包括的かつバランスのとれた作業計画の文脈において、1995年の専門コーディネーターの声明とそこに含まれる任務にしたがい、核兵器用及びその他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する条約の交渉をCDが即時に開始すべきであることに合意する。また、これに関して、再検討会議は、CDの作業を支援するためのハイレベル会議を2010年9月に開催するよう国連事務総長に求める。

*行動16:核兵器国は、軍事的にもはや不要と各国が判断したすべての核分裂性物質について、国際原子力機関(IAEA)に適宜申告することを誓約するよう奨励される。また、これら物質が恒久的に軍事計画の外に置かれることを確保すべく、可能な限り早期に、当該物質をIAEAあるいは他の関連する国際検証及び平和目的への転換取り決めの下に置くことが奨励される。

*行動17:行動16の文脈の中で、すべての加盟国は、それぞれの核兵器国で軍事的にもはや不要と判断された核分裂性物質の不可逆的廃棄を確保するべく、IAEAの文脈において、適切かつ法的拘束力のある検証取り決めの開発を援助するよう奨励される。

*行動18:核兵器あるいは他の核爆発装置に使用される核分裂性物質の生産施設の解体あるいは平和利用への転換に向けたプロセスを開始していないすべての国家は、そのような行動を取るよう奨励される。

F. 核軍縮を支える他の措置

i. 会議は、核軍縮ならびに核兵器のない世界の平和と安全の達成には、公開と協調が不可欠であることを認識し、透明性向上と効果的な検証を通じた信頼を強化することの重要性を強調する。

会議は以下を決定する。

*行動19:すべての加盟国は、信頼の増進、透明性の向上、核軍縮に関する効果的な検証能力の開発をめざした各国政府、国連、他の国際及び地域機構、そして市民社会による協力関係を支援してゆくことの重要性について合意する。

*行動20:加盟国は、強化された条約再検討プロセスの枠組みにおいて、本行動計画ならびに第6条、1995年の決定「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の4(c)項及び2000年再検討会議の最終文書で合意された実際的措置の履行について、1996年7月8日の国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を想起しつつ、定期報告を提出しなければならない。

*行動21:すべての核兵器国は、信頼醸成措置として、報告の標準様式について可能な限り早期に合意するとともに、国家安全保障を損なわずに、標準化された情報を自発的に提供するという目的において、適切な報告提出の間隔を決定することが奨励される。国連事務総長は、核兵器国から提供される情報を含め、公衆からアクセス可能な情報集積サイトを確保するよう求められる。

*行動22:すべての加盟国は、核兵器のない世界の実現を支持し、条約の目標を前進させるために、軍縮・不拡散教育に関する国連の研究に関する国連事務総長報告(A/57/124)に盛り込まれた勧告を履行することが奨励される。

 

II. 核不拡散

会議は、「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」と題された1995年の再検討・延長会議の決定を想起し、再確認する。会議は、同原則の第1節ならびに条約第3条に関連する要素、とりわけ9-13節及び17-19節、そして第7条に関連した部分、とりわけ5-7節に留意する。会議は、1995年会議で採択された中東に関する決議を想起し、再確認する。会議は、2000年NPT再検討会議の成果についても想起し、再確認する。

*行動23:会議は、条約の普遍的支持の促進に向けたあらゆる努力を払い、条約の普遍化の見通しに否定的影響を与えうるいかなる行動も慎むよう、すべての加盟国に求める。

*行動24:会議は、第3条の規定にしたがい、加盟国のすべての平和的核活動におけるあらゆる原料物質または特殊核分裂性物質にIAEA包括的保障措置を適用するよう求めた過

去の再検討会議の決定を支持する。

*行動25:会議は、18の条約加盟国が包括的保障措置協定を未だ発効させていないことに留意し、可能な限り早期に、さらなる遅滞なく、そうした行動を取るよう当該諸国に強く求める。

*行動26:会議は、条約の一体性や保障措置システムの権威を堅持するべく、あらゆる遵守問題に対応し、不拡散義務を遵守することの重要性を強調する。

*行動27:会議は、IAEA憲章や各加盟国の法的義務に完全に合致した形で、保障措置義務に関するすべての不遵守問題を解決することの重要性を強調する。これに関して、会議は、IAEAとの協力を拡大するよう加盟国に求める。

*行動28:会議は、追加議定書を未だ締結、発効させていないすべての国家に対し、可能な限り早期にそうした行動を取るよう、また、発効までの間、追加議定書を暫定的に履行するよう奨励する。

*行動29:会議は、IAEAに対し、包括的保障措置協定及び追加議定書の締結と発効を促進し、加盟国を支援することを奨励する。会議は、加盟国に対し、包括的保障措置協定の普遍性を促進しうる具体的措置についての検討を求める。

*行動30:会議は、IAEAの諸資源確保の可能性を考慮しつつ、自発的申し出に基づく関連保障措置協定の下、可能な限りもっとも経済的かつ実際的な方法で、核兵器国の平和的核施設への保障措置の適用拡大を求める。また、核兵器の完全廃棄が達成された際には、包括的保障措置及び追加議定書が普遍的に適用されるべきことを強調する。

*行動31:会議は、少量議定書を修正あるいは破棄していないすべての加盟国に対し、適宜、可能な限り早期に、そのような行動を取るよう奨励する。

*行動32:会議は、IAEA保障措置は定期的に検討、評価されるべきであると勧告する。IAEA保障措置のさらなる有効性強化と能力向上を目的としてIAEAの政策機関が採択した決定は支持され、履行されるべきである。

*行動33:会議は、すべての加盟国に対し、IAEAが条約第3条の求める保障措置適用の責務を効果的に果たせるよう、同機関に対するあらゆる政治的、技術的、財政的支援を確実に継続することを求める。

*行動34:会議は、IAEA憲章の枠組みの中で、加盟国間やIAEAとの協力を通じ、高度な保障措置に向けた、強力で、柔軟性と適応性があり、対費用効果の高い国際技術基盤の開発をいっそう進めるよう、すべての加盟国に奨励する。

*行動35:会議は、すべての加盟国に対し、自国の核関連輸出を、直接的にも間接的にも核兵器あるいは他の核爆発装置の開発を支援しておらず、また、当該輸出が条約第1、2、3条及び1995年再検討・延長会議で採択された「核不拡散と軍縮に関する原則と目標」決定に特に明記された条約の目標と目的に完全に合致したものとするよう強く求める。

*行動36:会議は、加盟国に対し、自国の国家的輸出管理を確立させる上で、多国間で交渉され、合意された指針や了解事項を活用することを奨励する。

*行動37:会議は、加盟国に対し、核輸出に関する決定を行う際には、受領国がIAEAの保障措置義務を履行しているか否かを考慮するよう奨励する。

*行動38:会議は、すべての加盟国に対し、条約の目的を履行すべく行動するなかで、平和目的の核物質、装置、技術情報に対する完全なアクセスという、すべての国家、とりわけ発展途上国の正統な権利を守るよう求める。

*行動39:加盟国は、条約第1条、2条、3条、4条にしたがい、核技術及び物質の移転ならびに加盟国間の国際協力を促進するよう奨励される。また、これに関して、条約と相反するいかなる不当な制限をも排除することが奨励される。

*行動40:会議は、すべての加盟国に対し、核物質や施設の保安や物理的防護について、可能な限り最も高い水準を維持することを奨励する。

*行動41:会議は、すべての加盟国に対し、核物質及び核施設の物理的防護に関するIAEA勧告(INFCIR/225/Rev.4(Corrected))ならびに他の関連国際条約を、可能な限り早期に適用するよう奨励する。

*行動42:会議は、核物質防護条約の全加盟国に対し、同条約の改正を可能な限り早期に批准するよう要請するとともに、発効までの間、改正の目標と目的に合致した行動をとるよう奨励する。

*行動43:会議は、すべての加盟国に対し、2004年のIAEA理事会で採択された改正「放射線源の安全とセキュリティに関するIAEA行動規範」ならびに「放射線源の輸出入ガイ

ダンス」の原則を履行するよう強く求める。

*行動44:会議は、すべての加盟国に対し、関連する国際法上の義務に合致した形で、自国領土全域における核物質の違法取引を探知し、抑止し、阻止するための能力を育成することを求める。また、このことにおける国際的な連携や能力育成の強化に取り組むべき立場にある国々が、それらに取り組むことを求める。会議はまた、加盟国に対し、関連国際法の義務に合致した形で、核兵器の拡散防止に向けた効果的な国内管理を確立するよう求める。

*行動45:会議は、「核によるテロリズム行為等の防止に関する国際条約」に未だ加盟していないすべての加盟国が、可能な限り早期に同条約に加盟するよう奨励する。

*行動46:会議は、IAEAに対し、核物質の計量及び管理にかかる国内システム、または地域レベルのシステムについて、それらの確立や維持を含めた核物質の国内法制による管理強化の面で加盟国に継続的な支援を行うよう奨励する。

III. 原子力の平和利用

会議は、NPTが、核エネルギーの平和利用を可能にする信頼と協力の枠組みをもたらすことによって、平和利用の発展を促進していることを再確認する。会議は、すべての加盟国に対し、条約の全条項に合致する形で行動し、以下を行うよう求める。

*行動47:核エネルギーの平和利用や燃料サイクル政策に関する各国の政策や国際協力合意及び取り決めを侵害することなく、核エネルギーの平和利用の分野における各国の選択や決定を尊重する。

*行動48:核エネルギーの平和利用に向けた機器、物質、科学的・技術的情報の最大限の交換を促進し、それに参加する加盟国の権利を再確認することを約束する。

*行動49:世界の発展途上地域の需要を考慮し、平和目的の核エネルギーのさらなる開発に向けて他の加盟国や国際機関と協力する。

*行動50:発展途上国の需要を特に考慮しつつ、条約加盟国である非核兵器国を優先的に扱う。

*行動51:条約第1条、2条、3条、4条に従い、核技術の移転や加盟国間での国際協力を

促進するとともに、これに関して条約に相反するいかなる制約も排除する。

*行動52:IAEA内部における、同機関の技術協力計画の有用性や効率を向上させるための努力を継続する。

*行動53:核エネルギーの平和利用に関して発展途上の加盟国を支援するというIAEAの技術協力計画を強化する。

*行動54:技術協力活動へのIAEAの諸資源を十分に確保し、不確定要因の除去を確実にするためのあらゆる努力を払い、具体的な措置をとる。

*行動55:IAEAの活動の支援として各国あるいは国家グループが既に誓約した拠出を歓迎しつつ、それをなすべき立場にあるすべての加盟国に対し、今後5年間にIAEA活動への予算外拠出として1億ドルを調達するイニシャティブに対する追加拠出を奨励する。

*行動56:核エネルギー平和利用の発展に不可欠な特殊技能を有する労働力を訓練するための国内、二国間、国際努力を奨励する。

*行動57:原子力発電を含む核エネルギーの開発にあたっては、核エネルギーの使用は、国内法及び各国の国際的義務にしたがい、保障措置ならびに適切かつ有効な水準の安全と保安に対する誓約と、それらの履行の継続が伴うものでなければならないことを確認する。

*行動58:IAEAまたは地域機構の支援の下、差別的でなく透明性のある方法で、核燃料供給の保証のためのメカニズムを構築する可能性や、条約上の権利に影響を与えず、国家の燃料サイクル政策を阻害しない核燃料サイクルのバックエンド計画を含む、核燃料サイクルの多国間アプローチに関するさらなる議論を継続する。その一方で、IAEAの包括的保障措置の要求を含む、これらの問題をめぐる技術的、法的、財政的諸課題に取り組む。

*行動59:「原子力安全条約」、「原子力事故の早期通報に関する条約」、「原子力事故または放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」、「使用済燃料管理および放射性廃棄物管理の安全に関する条約」、「核によるテロリズム行為等の防止に関する国際条約」、「核物質防護条約(CPPNM)」の未加盟国は加盟を検討する。また、早期の発効を可能とするべく、CPPNMの改正を批准する。

*行動60:原子力産業や民間部門との対話を通じたものを含め、核安全と保安の分野における最良慣行の適宜共有を促進する。

*行動61:関係国に対し、技術的及び経済的に可能な限り、自由意志を原則として、民生用備蓄及び使用における高濃縮ウランを最小化するためのさらなる努力を奨励する。

*行動62:安全、保安、環境保護に関する国際基準にしたがって放射性物質を輸送する。また、信頼を醸成するとともに、輸送上の安全、保安、緊急時対応に関する懸念に対処すべく、輸送国と沿岸国間の意思疎通を継続する。

*行動63:関連する主要な国際諸条約で確立された原則に基づき、関連する国際条約の加盟国となり、もしくは適切な国内法を採択することによって民生用核に関する責任体制を実効化する。

*行動64:会議は、すべての加盟国に対し、2009年9月18日のIAEA総会で全会一致採択された「運転中あるいは建設中の核施設に対する軍事攻撃あるいは攻撃の威嚇の禁止」に関する決定に従うことを求める。

 

Ⅳ. 中東、とりわけ1995年中東決議の履行

1. 会議は、1995年再検討・延長会議における中東に関する決議の重要性を再確認し、その目的と目標が2000年NPT再検討会議で再確認されたことを想起する。会議は、これら目的と目標が達成されるまで決議が有効であり続けることを強調する。NPTの寄託国(ロシア連邦、英国、アメリカ合衆国)により共同提案された同決議は、1995年会議の成果の重要な要素であり、1995年の条約の無投票の無期限延長の基礎の重要な要素でもある。加盟国は、個別あるいは協働して、その速やかな履行に向けたあらゆる必要な措置に着手するとの決意を新たにする。

2. 会議は、中東和平プロセスの目的と目標への支持を再確認し、この努力が、関連する他の努力とともに、とりわけ中東非核・非大量破壊兵器地帯に貢献することを認識する。

3. 会議は、2010再検討会議において、1995年の中東決議の完全な履行に向けた5つの核兵器国の誓約が再確認されたことに留意する。

4. 会議は、1995年の中東決議の履行に向けた進展がほとんど達成されていないことに遺憾の意を表明する。

5. 会議は、イスラエルによる条約加盟ならびに同国のすべての核施設をIAEAの包括的保障措置の下に置くことの重要性が2000年再検討会議で再確認されたことを想起する。会議は、条約の普遍性を達成することの緊急性と重要性を再確認する。会議は、条約の普遍性を早期に達成すべく、中東における条約未加盟国に対し、非核兵器国として条約に加盟するよう求める。

6. 会議は、条約に基づく自国の義務と誓約がすべての加盟国によって厳格に遵守されることの必要性を強調する。会議は、地域のすべての加盟国に対し、1995年決議の目標の実現に貢献する関連措置ならびに信頼醸成措置を講じるよう強く求める。また、この目的の達成を阻むいかなる措置もとらないよう、すべての加盟国に求める。

7. 会議は、1995年決議の完全履行につながるプロセスの重要性を強調する。会議はこの目的に向けた以下の実際的措置を支持する。

(A)国連事務総長ならびに1995年中東決議の共同提案国は、地域国家との協議に基づき、中東の全国家の参加の下、中東非核・非大量破壊兵器地帯の設立に関する会議を2012年に開催する。これは、地域国家の自由意思による取り決めに基づくものであり、また、核兵器国の全面的支援及び関与を得るものである。2012年会議は、1995年中東決議を委任された議題とする。

(B)地域国家との協議に基づき、国連事務総長並びに1995年中東決議の共同提案国はファシリテーター(調停人)を任命する。ファシリテーターは、地域国家との協議を行い、2012年会議の開催準備を通じて1995年決議の履行を支援するという任務を持つ。ファシリテーターはまた、2012年会議に参加した地域国家で合意された後継措置の履行も支援する。ファシリテーターは2015年再検討会議ならびにその準備委員会において報告を行う。

(C)国連事務総長ならびに1995年中東決議の共同提案国は、地域国家との協議に基づき、2012年会議の主催国を指名する。

(D)過去の実績やそこで得られた経験を踏まえ、非核・非大量破壊兵器及び運搬手段地帯のあり方に関して、IAEA、化学兵器禁止機関(OPCW)、及びその他の関連する国際組織に2012年会議に向けた背景文書の準備を要請することなど、決議の履行を支援することを目的とした追加的措置を講じる。

(E)欧州連合による2008年6月のフォローアップセミナーの主催の申し出を含め、決議の履行を支援することを目的としたあらゆる提案を検討する。

8. 会議は、核、化学、生物という、地域におけるすべての大量破壊兵器の全面的かつ完全な廃棄の達成につながる過程においては、内容的にも時期的にも並行した進展を維持することが求められることを強調する。

9. 会議は、条約のすべての加盟国、とりわけ核兵器国と地域国家が、決議の履行に向けて行った措置について、国連事務局を通じ、2015年再検討会議の議長ならびに再検討会議に先立って行われる準備委員会の議長に継続して報告すべきであることを再確認する。

10. 会議は、決議の履行に対する貢献として、市民社会が果たす役割の重要性をいっそう認識し、この点におけるあらゆる努力を奨励する。

 

他の地域的問題

1. 会議は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)に対し、2005年9月の共同声明にしたがい、あらゆる核兵器ならびに現存する核計画の完全かつ検証可能な廃棄を含む、6か国協議に基づく誓約を履行するよう強く求める。また、DPRKに対し、NPTとIAEA保障措置協定の遵守に早期に復帰するよう強く求める。会議はまた、DPRK及びすべての加盟国に対し、関連するすべての核不拡散・核軍縮義務を完全に履行するよう求める。会議は、6か国協議への強固な支持を再確認するとともに、外交的手段を通じてこの事案が包含する諸問題に対する十分かつ包括的な解決を達成することを引き続き誓う。

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)

※訳者注
最終文書の構成は次の通り。
第1巻
 第1部
 第2部「会議の組織と作業」
第2巻
 第3部「会議で出された文書」
第3巻
 第4部「概略の記録と参加者名簿」

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