弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範(ハーグ国際行動規範)(抜粋訳)
前文(省略)
1.この弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範(以下「国際行動規範」)を採択し、
2.以下の原則を尊重することを決意し、
a)大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイル・システムの拡散を包括的に防止及び抑制し、「国際行動規範」を含む適切な国際努力を追求し続ける必要の認識
b)多国間の軍縮及び不拡散に関する諸々の仕組みを強化し、それらに対する支持を拡大することの重要性の認識
c)国際的な軍備管理、軍縮及び不拡散に関する規範を支持し、完全に遵守することが、諸国家の平和的な心積もりに関する信頼の醸成に役立つという認識
d)この「国際行動規範」への参加は自発的ですべての国に開かれているという認識
e)国連総会で採択された「発展途上国の必要を格別に考慮した、全ての国の利益と関心ための宇宙空間の探査及び利用における国際協力に関する国連宣言」(決議51/122、1996年12月13日)に対する諸国の確約の確認
f)諸国は平和目的のために宇宙から得られる利益を利用することから排除されるべきではないが、そのような利益を獲得し、関連した協力を行う際、大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイルの拡散に寄与してはならないという認識
g)宇宙打ち上げ機(SLV)計画は弾道ミサイル計画を隠蔽するために利用されるべきではないという認識
h)信頼を高め、弾道ミサイル及び弾道ミサイル技術の不拡散を促すための、弾道ミサイル計画及び宇宙打ち上げ機計画に関する適切な透明性措置の必要の認識
3.以下の一般的措置を実施することを決意し、
a) 「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」(1967年)、「宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約」(1972年)、及び「宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約」を、批准、加入、またはその他の方法によって遵守すること。
b)多国間、2国間、各国の努力を通じて、全世界的及び地域レベルで、大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイルの拡散を抑制及び防止すること。
c)大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイルの開発、実験、配備につき、最大限可能な限り自制すること。それには、可能な場合には、全世界及び地域の平和と安全のために、国が保有する弾道ミサイルを削減することを含む。
d)SLV計画が弾道ミサイル計画を隠蔽するために利用されるかもしれないことを鑑み、他国のSLV計画に対する支援を考える際には、大量破壊兵器の運搬システムに寄与することを防ぐため、必要な警戒を払うこと。
e)国際的な軍縮及び不拡散に関する諸条約によって確立された規範や、これらの条約の下で負っている義務に反して、大量破壊兵器を開発または取得しつつあるかもしれない諸国の弾道ミサイル計画に貢献、支持、支援しないこと。
4.下記のものを実施することを決意し、
a)信頼を高め、大量破壊兵器を運搬可能な弾道ミサイルの不拡散を促す上で適切かつ十分に細部にわたった、以下のような諸々の透明性処置
① 弾道ミサイル計画に関して、
・弾道ミサイル政策の概要に関する発表を毎年行うこと。そのような発表で明らかにされるものとしては、例えば弾道ミサイル・システムに関する関連情報及び地上(実 験) 発射場がある。
・以下の③で言及される事前通報の仕組みに従って宣言されたように、前年に発射された弾道ミサイルの数及び一般な種類の名称に関する情報を毎年提供すること。
② 使い捨てSLV計画に関して、商業上、経済上の秘密性の原則と一致するように、
・SLV政策及び地上(実験)発射場の概要に関する発表を毎年行うこと。
・以下の③で言及される事前通報の仕組みに従って宣言されたように、前年に発射されたSLVの数及び一般な種類の名称に関する情報を毎年提供すること。
・(立ち入りが許容される程度の決定を含めて)自発的に、地上(実験)発射場への国際的な監視団員の招待を検討すること。
③弾道ミサイル及びSLV計画に関して、
・弾道ミサイル及びSLVの発射及び飛翔実験に関する事前通報を相互に行うこと。こうした通報には、弾道ミサイル又はSLVの一般的な種類の名称、計画された発射通報を知る手段、発射区域及び計画された方向といった情報が含まれるべきである。
b)参加国は、適切なことだけれども、自発的に、前記の透明性措置に加えて二国間又は地域的な透明性措置をつくることができる。
c)前記の諸々の信頼醸成措置の実施は、これらの措置が適用される計画の正当化に資するものではない。
5.組織的側面
参加国は下記のものを行う決意である。
a)毎年あるいは参加国の合意に従い、定期会合を開催する。
b)出席する参加国の総意によって、実質面及び手続き面の全ての決定を行う。
c)これらの会合を、以下のような方法などを通じて「国際行動規範」の運用を定義し、再検討し、さらに練り上げるために利用する。
・「国際行動規範」の枠組みの中で、通報その他の情報の交換に関する手続きを確立すること。
・各国の発表から生じる問題、並びに/若しくは、弾道ミサイル及び/又はSLV計画から生じる問題の自発的解決のための適切な仕組みを確立すること。
・信頼醸成措置に関する提出物を収集、配布し、新たな参加国の署名を受領、発表し、参加国が合意した他の任務を行う、当面の中心的連絡国として、参加国の1カ国を指名すること。
・考えられうる「国際行動規範」の改正を含む、参加国が合意した他の方法。
(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)