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国連事務総長による
軍縮諮問委員会作業報告

A/68/206
2013年7月26日
<抜粋、暫定訳>

 概要
国連軍縮諮問委員会は、第59会期を2013年2月27日~3月1日にニューヨークで、第60回会期を6月26日~28日にジュネーブでそれぞれ開催した。委員会は、これら2回の会期において、次の具体的項目に焦点をあてた議論を行った。(a)地域及びグローバルな安全保障を前進させる上での非核兵器地帯間の関係、(b)新たに出現した技術が軍縮と安全保障に及ぼす影響。

委員会は、前者の項目について徹底的な意見交換を行った。そして、地域及び国際の平和と安全、軍縮、不拡散のために非核兵器地帯が果たす重要な役割について引き続き重視していくよう、また、既存の地帯の推進やさらなる強化に向けて指導的役割を担うよう、国連事務総長に勧告した。さらに、事務総長は、それが適切と考えられる場合には、すべての核兵器国に対し、あらゆる地帯に正式な承認を与えるよう奨励すべきである。事務総長は、非核兵器地帯間のいっそう緊密な連携や協力を促進すべきである。それぞれの地帯で得た教訓、それらの利点、限界といった経験について、既存の非核兵器地帯の代表が意見交換を行うことを可能にするプラットフォームあるいはフォーラムの創設はその一例である。事務総長は、新たな非核兵器地帯の設立をめぐる課題やすべての関係する側面について調査を行うべきである。また、現在の行き詰まりを乗り越えるための新たな道筋の探求や共通基盤の模索に向けた努力において、シンクタンクや市民社会のさらなる参加を奨励すべきである。事務総長は、中東における非核・非大量破壊兵器地帯の設立を目指したあらゆる努力を強く支持すべきであり、同地帯の設立に関する会議に向けた準備会合の開催を主導すべきである。また、事務総長は、現状の行き詰まりの打開に向け、地域国家間の信頼醸成と建設的な対話を促進するあらゆる措置を奨励すべきである。さらに、事務総長は、北東アジア非核兵器地帯の設立に向けた適切な行動について検討すべきである。これには、地域国家間の透明性と信頼醸成を奨励する地域フォーラムのいっそう積極的な役割を強めるなどの方法が挙げられる。

(略)

Ⅰ はじめに(略)

Ⅱ 実質議論及び勧告
A. 
地域及びグローバルな安全保障を前進していく上での非核兵器地帯間の関係

4.2012年7月にジュネーブで開かれた第58会期において、委員会は、それぞれの非核兵器地帯間の関係を含む、今後の議論につながる諸問題について短い意見交換を行った。その結果、既存のさまざまな非核兵器地帯のあいだの関係、中東など新たな地帯の創設に向けて現在検討されている諸提案、そしてそのような地帯が地域とグローバルの両方の安全保障の前進にどのように寄与するかといった点を探りつつ、非核兵器地帯の諸問題を委員会が検討することは時宜を得ているとの見解となった。

5.委員会の第59会期において、「考えるための材料」文書がTogzhan Kassenova氏によって提出された。また、市民社会の代表としてモントレー国際大学ジェームズ・マーティン不拡散センターの上級研究員であるGaukhar Mukhazhanova 氏が意見発表を行った。

6.委員会は、地域・国際の両方の安全保障や不拡散を促進する上で、非核兵器地帯が重要な役割を果たすという点で一致した。また、そのような地帯の設置がもたらす利益をさらに評価するための機会について見解を述べた。

7.既存の非核兵器地帯、また複数の地帯の関連議定書に対し、核兵器国が全面的な承認を与える必要性が数名の委員によって強調された。いくつかの地帯においては地帯内の国家と核兵器国との調整努力が行われていることに言及があった。

8.いくつかの加盟国からは検証と遵守の重要性が強調された。それらの実施能力については地帯によって差があることが指摘された。特定の地域においては監視遵守の能力や手段が不十分であることから、そうした能力の確立に向けて国際社会や国際機関が当該地域国家に支援を提供すべきであるとの見解が示された。

9.それぞれの非核兵器地帯には特性があり、ガバナンスや遵守メカニズムといった面が比較的弱い地帯があることから、数名の委員は、非核兵器地帯に関して諸モデルを比較検討し、それらの有効性の向上に向けて、また、新しい地帯創設へのモデルとして、それぞれの得た教訓を共有することの重要性を強調した。

10.一部の委員からは、核不拡散条約の文脈やジュネーブ軍縮会議における現在進行中のイニシアティブを念頭に置きつつ、お互いの経験を議論するべくそれぞれの地帯の代表者が一堂に会する場をもつことを事務総長が検討することも一案であるとの提案があった。

11.また、委員会は、非核兵器地帯に関するいかなる議論も中東非核・非大量破壊兵器地帯の問題を抜きには語れないことを強調した。地帯設置に向け提案されている会議をめぐる進展の欠如は、その性質として主に政治的なものであり、技術的なものではないと見られている。

12.委員会は、事務総長が、中東非核・非大量破壊兵器地帯の設立に向けた会議の問題をあらためて最優先事項と位置付け、停滞打開への指導的役割を担うことで積極的に関係者に関与していくべきであるとの点で一致した。他の3つの招集国とともに、事務総長がファシリテーターの努力に対し継続的かつ確固たる支持を提供していくことが提案された。

13.また、委員会は、中東非核・非大量破壊兵器地帯設立のための会議に向けた準備会合の開催を事務総長に要求するという提案に支持を示した。これは、提案の会議に関する日程調整のプロセス開始に寄与しうるものである。

14.北東アジアを含む他の地域に非核兵器地帯を設立するという諸提案に関連して、委員の一人からは、非核兵器地帯の設立に向けては関係国家間にいかなる重大な安全保障上の懸念があってもならないし、最低限のレベルの信頼がなければならないという発言があった。したがって北東アジア非核兵器地帯の創設は困難と考えられた。別の一人の委員は、南アジアにおける現在の戦略的状況を鑑みれば、同地域に非核兵器地帯を設立することは不可能ではないにせよ、極めて困難と考えられる、との見解を述べた。

15.非核兵器地帯の設立及び発展の基盤として、戦略的安定性を維持することの重要性に対する意見があった。戦略安定性なくては、核不拡散及び軍縮に関するいかなる議論も不可能であると強調された。

16.委員会は、2013年6月にジュネーブで開催された第60会期において、地域及びグローバルな安全保障を前進させる上での非核兵器地帯間の関係についての議論を継続した。そこでの議論は、Togzhan Kassenova, Rut Diamint, Sung-joo Choi, Wael al-Assad の4名の委員が提出した「考えるための材料」文書を基に行われた。

17.核兵器の拡散防止、ならびに地域と国際の平和、安全、協力の促進において非核兵器地帯が担う重要な役割を鑑み、委員会は、既存の諸地帯の代表者のあいだの交流を強化し、それぞれが得た教訓、制度化の際の価値基準、検証、国際原子力機関(IAEA)保障措置などに関して知識・情報の定期的な共有を行う重要性を強調した。また、委員会は、地帯間における知識・経験の共有や協力を促進するプラットフォームが必要であるという点で一致した。

18.委員(複数)は、条約体制の履行支援、非核兵器地帯の目的や機能に関する知識や理解の促進、それらを通じた地域どうしの地域間協力や得られた教訓や経験の共有の強化といった点で既存の非核兵器地帯の事務局が担ってきた重要な役割を強調した。委員(複数)は、同様のメカニズムが未だ発展していない地帯において、それらを制度化することを奨励した。

19.委員会は、国連が非核兵器地帯に提供してきた継続的かつ有益な支援、そして地域機関や既存の地域メカニズムが担ってきた重要な役割を称賛した。また、委員会は、限られたリソースのなかでの既存の地帯の履行、新たな地帯の設立促進、情報や知識の共有、新しい提案の開発といった面で市民社会が担ってきた前向きな役割を歓迎した。

20.委員(複数)は、新しい非核兵器地帯の設立が、関係国のみが決定でき、また地域の力学やそれぞれの地域に固有の安全保障状況に依存するような複雑な問題であるという点で一致した。中東や北東アジアにおいて将来的に地帯を発展させるための不可欠な措置として、建設的な対話と信頼醸成が必要であることが再度強調された。中東非大量破壊兵器地帯に関する会議の延期が、すでに脆弱な地域にさらなる緊張をもたらす原因となることに懸念が表明された。これは平和プロセスのいっそうの後退を生みかねない。また、委員(複数)からは、中東地帯に関する会議の延期、誓約の不履行、進展の欠如が、2015年NPT再検討プロセスを人質にとることになりうるとの見解が述べられた。

21.北東アジアにおける地帯の設立を促進するために地域フォーラムが担う前向きな役割について、委員の一人が言及した。何人かの委員は、朝鮮半島の非核化の問題や、朝鮮半島の平和と安全保障の問題を議論する際の適切なメカニズムとして6か国協議について言及した。

22.委員(複数)からは、核兵器国の有する責任、消極的安全保証に関する扱いが地域間で平等ではないことへの不満、批准が済んでいない非核兵器地帯条約議定書の締結に向けた政治的意思及び継続的努力の必要性についての言及があった。非核兵器地帯に対する支持と尊重をより公式な方法で再確認するよう、事務総長から他の核兵器保有国に対し要請がなされるべきとの提案が出された。そのような一方的宣言は、1995年4月11日の国連安保理決議984と同じく、安全保障理事会によって留意されうるものである。将来的な非核兵器地帯の設立の文脈においては、いくつかの国の拡大抑止について議論することが必要であるとの指摘があった。委員の一人からは、たとえば南アジアにおいて、核分裂性物質の備蓄や核弾頭数のさらなる増加を防ぐ、「増加禁止」地帯の設立に関する提案があった。

23. 委員会は以下の勧告を行った。
(a
)事務総長は、地域及び国際の平和と安全、軍縮、不拡散に資する不可欠な実際的ツールとしての非核兵器地帯の重要な役割を引き続き重視してゆくべきである。事務総長は、他の非核兵器地帯において開発された最も高い基準や実践について検討し適用するよう非核兵器地帯条約加盟国に奨励することを通じ、既存の地帯の促進及びいっそうの強化を目指した指導的役割を担うべきである。事務総長は、核兵器国に対し、すべての地帯ならびにそれらの関連議定書に公式の承認を与えるよう奨励すべきであり、また、いかなる未解決問題についてもすべての関係者との建設的な対話を奨励すべきである。加えて、事務総長は、非核兵器地帯への支持に関する公的な誓約を行うよう、他の核兵器保有国に対して奨励すべきである。

(b)事務総長は、非核兵器地帯間のいっそう緊密な連携や協力を促進すべきである。既存の非核兵器地帯の代表が一堂に会し、それぞれの地帯で得た教訓、それらの利点、限界に関する経験を共有できるようなプラットフォームあるいはフォーラムを創設することもその一例である。地域・国際組織、シンクタンク、市民社会団体及びネットワークは、そのような地帯の将来的な実現を追求している地帯の代表者とともに、そうしたフォーラムの一翼を担うべきである。

(c)事務総長は、核不拡散と核軍縮のツールであるところの、新たな非核兵器地帯の設置における課題や関連したあらゆる側面を調査する適切な方法について検討すべきである。国連軍縮研究所(UNIDIR)はそのような努力の一端を担うべきである。また、事務総長は、現在の行き詰まりを克服するための新たな方途を追求し、共通基盤を模索することを目指した努力の中で、シンクタンクや市民社会組織、ネットワークのさらなる関与を奨励すべきである。

(d)事務総長は、中東非大量破壊兵器地帯の設立をめざしたあらゆる努力を支持するために自身の権限を活用すべきである。とりわけ、事務総長は、中東非大量破壊兵器地帯に関する会議に向けた準備会合を、可能な限り早期に、最優先事項として開催する上で指導力を発揮することができる。事務総長は、現在の停滞を打ち破り、地域の平和と安全を促進するという目的に向けて、地域諸国の信頼醸成と建設的対話を促進するあらゆる措置を奨励すべきである。

(e)また、事務総長は、北東アジア非核兵器地帯の設立に向けた適切な行動を検討すべきである。とりわけ、事務総長は、地域国家間の透明性や信頼醸成を奨励する地域フォーラムの開催に向けて、いっそう積極的な役割を強めることができる。

(後略)

(暫定訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

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