確かに「NPTは不平等条約である」という指摘は強いです。本当なら、すべての国に核兵器の保有を一律に禁止すれば良いのです。しかし、現実には、第一回国連総会から「核兵器の禁止」は議論されてきましたが、ついに実現しませんでした。おそらく条約の交渉にあたった各国は、いきなり核兵器の全面禁止を求めれば、結局また何も決まらないで終わってしまい、核兵器の開発や生産が国際的に野放しになってしまう結果になるのではないかと心配していたのでしょう。そこで、とりあえず「まだ核兵器を持っていない国は、作らない」、「すでに持っている国は、できるだけ早く無くすように努力する」という点で妥協するのが最善だと考えたのだと思います。また、国際社会において、何が各国の間で本当に「平等」を意味するのかは、難しいところです。結局のところ、各国が条約に参加するのは、その内容が「平等」だからではなく、その条約の内容が、「自分の国に利益をもたらす」と判断するからだと言うべきでしょう。
(広瀬 訓)