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核兵器禁止条約の発効を受けて

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2021年1月22日

 核兵器禁止条約(TPNW)が発効を迎えた。発効は、「ノーモア・ヒロシマ」「長崎を最後の被爆地に」という被爆者と被爆地の想いと行動に多くの国や人々が共鳴した成果であり、核兵器廃絶への大きな追い風として、心から歓迎の意を表したい。

 2014年2月にナジャリットで行われた核兵器の非人道性に関する国際会議で、主催国メキシコが、「Point of No Return(我々はもう戻れない地点にいる)」と述べたように、世界には不可逆的な変化がすでに起こり始めている。それは、力による脅し合いという旧態依然の安全保障から、国際協調と信頼に基づく「すべての人類の安全保障」(条約前文)へと向かう、新たな潮流である。

 昨年より続く未曽有のコロナ禍は、安全に対する多くの人々の認識を一変させた。環境破壊、パンデミックといったグローバルリスクに対し、核兵器は安定や安心をもたらすどころか、破滅リスクを増幅する存在でしかない現実が浮き彫りになった。多くの人々が、核兵器の時代に「終わりの始まり」を感じている。

 核保有国ならびに「核の傘」下の国は条約に背を向け続けている。しかし、この転換期において、日本政府の果たせる役割は大きい。TPNW参加の是非について日本が真摯な議論を開始することは、他の「核の傘」国を動かす好材料となろう。すぐに署名・批准に向かえなくとも、来る締約国会合にオブザーバー参加を表明し、実質議論に関与する筋道を早急につけるべきだ。検証体制の確立や被害者援助の制度作りといった重要議題において、日本の貢献は極めて大きなものとなる。

 核軍縮に前向きな米新政権が誕生した。ここ数年の核軍拡の流れを逆転させ、核軍縮の動きを再び加速させる機会ととらえ、同盟国として新政権の核軍縮政策を支持し、具体的な核軍縮措置を提言していくことで、核兵器国と非核兵器国の真の「橋渡し」役を果たすことができる。

 停滞している核軍縮を再起動させるうえで、「核軍縮プロセスの民主化」をさらに進める新たなアプローチが必要である。NGO、メディア、地方自治体、そして民間企業や世界の若者達を含め、市民社会はこの機運を活用し、各国や国際機関とのさらなる連携のもと、TPNWの普遍化と規範強化に向けた革新的・創造的な活動を強化していくべきだ。

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