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A/AC.286/WP.9
2016年2月24日
多国間核軍縮交渉を前進させるための公開作業部会

 

核兵器のない世界に向けたプログレッシブ(漸進的)アプローチ:
ビルディング・ブロック(ブロック積み上げ方式)パラダイムを再訪する

オーストラリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、エストニア、フィンランド、ドイツ、 ハンガリー、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スペイン共同提出作業文書

(暫定訳)

基本的な考え方

1. 国際社会は、平和で安全な核兵器のない世界という目標を共有している。効果的で検証可能、かつ不可逆的な核軍縮を我々が目指すのであれば、「一時的な即効薬」など現実には存在しないし、安全保障に関して各国が持つあたりまえの懸念についても無視することはできない。核兵器の安全保障と人道の両面を考慮することによって、少しずつではあっても、すべてにとっての安全保障を強化し、核兵器のない世界を実現する好機を生み出すような重要な措置を講じることができる。

2. 我々を効果的な形で核兵器のない世界へといざなうプロセスは、必然的に包括的なものとなる。NPTにおける非核兵器国も核兵器国も、この点において不可欠かつ協同の役割を担っている。さらに、核兵器のない世界を実現するためには、NPT上の5つの核兵器国のみならず、核兵器を保有するすべての国を含むものでなくてはならない。

3. こうした目標を達成する手段や順序に関して、とりわけ、我々がその地点に到達させる効果的措置が何であるかについては、各国それぞれに考えがあるだろう。しかしながら、核軍縮を前進させ、究極的に核兵器のない世界を実現するためには、国際社会は相違点に注目するのではなく、共通の目的を実現するための具体的かつ実際的な「ビルディング・ブロック」を明確にすることを通じて、共通点に注目するべきである。

4. 核兵器のない世界に向けて我々が進むためには、ビルディング・ブロックに焦点を当てることが必要だと予想される。それは同時並行的に進行する効果的措置からなるものであって、「プログレッシブ・アプローチ」を構成するものである。これらは多国間、複数国間、二国間、あるいは一国的性格のもので、相互に補強されうる。

 5. 核兵器のない世界を実現するための非法的措置と法的措置の組み合わせは、「プログレッシブ・アプローチ」の基本的な構成要素である。グローバル・ゼロが手の届くところに来れば、核兵器のない世界の実現と維持のための追加的措置が必要となってくるだろう。その時点でNPT第6条は実現の運びとなる。いうまでもなく、その点に到達するまでに、我々には相当の作業が残っている。

 6. プログレッシブ・アプローチが有効性を持つには、NPTをはじめとする既存のグローバル体制を活用しなければならない。第6条でも述べられているように、NPTには、すべての核兵器の廃絶という目標に関して、困難の末に勝ち取った、条約レベルの誓約が既に含まれている。5つの核兵器国はいずれも保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束に合意している。NPTは、法的と非法的の両方で、主要なビルディング・ブロックに関してすべての国家が協働する上での不可欠な基盤(2010年NPT行動計画や核軍縮のための13項目の実際的措置といった過去の合意文書を含め)を提供している。

 7. 核軍縮と不拡散は相互強化のプロセスである。もし我々が核兵器のない未来を真摯に求めるのであれば、核兵器の不拡散体制を強化する措置を欠かすことはできない。そうした措置が本来持つ安全保障面での価値に加え、核軍縮の前進に向けた適切な環境づくりにもプラスとなるからである。たとえば、NPT枠外の国家による核兵器保有やNPT締約国による条約規定への不遵守は、グローバルな核不拡散・核軍縮努力に対する深刻な危機を呈するものとなるし、よってNPTの普遍化に向けた継続的な努力に水を差すものとなる。もう一つ例を挙げるとすれば、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を確実にすることは核実験に対するグローバルな規範の強化するものとなり、主要な軍縮不拡散目標を前進させることにもなる。

 8. 我々は国際環境の大勢を考慮に入れなければならない。多国間核軍縮における前進は、直近の優先課題として、実際的かつ効果的な信頼醸成措置の促進を必要としている。この目的に向けては、核軍縮プロセスの全体的な遅延につながりうる、国際社会のさらなる分断を避けることが肝要である。信頼性を高める環境を構築することが包括的プロセスの確保においては不可欠である。こうした信頼は、核兵器を保有するすべての国家が具体的な核軍縮措置を履行し、すべての非核兵器国が既存の不拡散への誓約を履行していくことを通じて構築されていかねばならない。

 

効果的な実際的措置

9. 効果的な実際的措置には以下が含まれる。

 (a) 透明性向上に関する措置、とりわけ核兵器国及び他の核保有国が、戦略及び非戦略ともに自国の保有核兵器に関連して、また、核分裂性物質の保有量に関連して、透明性措置を強化すること。これには核弾頭削減に関してより具体性を高めることを含む。また、透明性向上のため、報告書を質の面でも頻度の面でも改善すること。

(b) 核兵器ないし他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産に使われる平和利用目的の施設を解体あるいは転換すること。

(c) 国際の安定と安全を促進する形で、核兵器システムの作戦上の地位の低下のためのさらなる実際的措置を講じることを通じ、偶発的あるいは無認可の核兵器使用のリスクを低減すること。核兵器システムの警戒態勢解除はリスクを下げ、核兵器と非核兵器国の間の信頼を構築するものとなる。

10.関連する安全保障問題を考慮しつつ、バランスのとれた方法で以下を追求する。

(a) 配備された戦略核兵器数の削減

(b) 非戦略及び非配備の核兵器数の削減

(c) 核兵器削減に関する複数国間での交渉開始及び締結までの間、核保有数を削減し、最低でも増やさないと核兵器保有国が誓約すること。

(d) 安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割の低減

(e) CTBT発効までの間、すべての核兵器保有国が核実験モラトリアムを維持し、宣言すること。また、新たな核兵器技術の使用やCTBTの目的や目標に反するいかなる行為をも自粛すること。

(f) 核兵器及び他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産禁止条約が交渉、発効されるまでの間、すべての核兵器保有国が兵器級核分裂性物質の生産モラトリアムを維持し、宣言すること。

(g) とりわけ核兵器保有国において、核兵器使用がもたらす人道上の影響に関することを含めた軍縮・不拡散教育を促進すること。

(h) 「核軍縮検証のための国際パートナーシップ」を通じたものを含め、透明で不可逆的、効果的に検証可能な核軍縮という現在及び将来の課題に対処すべく、検証能力の開発努力を継続すること。こうした課題は、核兵器のない世界に向けて保有核兵器が削減されるにつれ、重要さを増している。

(i) すべての核兵器保有国が、安全の保証に関して、あるいは、もしまだそうしていなければ、そのような保証を供与することに関して、自国の誓約を完全に尊重するとの継続的に誓約すること。

(j) 核兵器及び他の核爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止する条約交渉、ならびに、核軍縮や核兵器の使用や使用の威嚇から非核兵器国を保証する効果的な国際取り決めといったその他の核関連重要議題を含め、ジュネーブ軍縮会議(CD)における実質作業に直ちに復帰すること。

(k) 包括的な保障措置協定や追加議定書に対する普遍的支持や履行を含め、国際原子力機関(IAEA)の保障措置システムを支持し、強化すること。

(l) ハーグ行動規範(HCOC)の履行を促進し、その普遍的な受諾に寄与すること。

(m) 核保有国同士を筆頭に、国家間の敵意や緊張の度合い緩和するための努力を含め、保有核兵器のさらなる大幅削減を促進するような条件作りに寄与すること。この点において信頼醸成措置は重要な役割を担う。

 

効果的な法的措置

11. 1980年代のピーク時以降の核兵器の世界的備蓄における大幅削減を含めたこれまでの二国間ないし単独での「ビルディング・ブロック」に加え、核兵器のない世界の達成と維持のための多国間の法的「ビルディング・ブロック」がすでに多数存在している。NPTはグローバルな核不拡散体制の要石であり、さらにその他にも相互に支えあう国際取り決めとして、IAEA保障措置システム、部分的核実験禁止条約、宇宙条約、海底条約、CTBT、核テロリズム防止条約、そして多国間の軍縮機構が存在する。さらなる法的「ビルディング・ブロック」が必要である。

 12. すでに出来上がっている法的ブロックの中で、前述の第4節で述べたように、NPT(とりわけ第6条)は「プログレッシブ・アプローチ」の中心柱であり続けている。堅牢なNPTとその普遍化を通じてのみ、我々は拡散を防止し、第6条の誓約に基づく前進を続けることができる。とりわけ、2010年NPT行動計画及び2000年NPT再検討会議で合意された軍縮に向けた13項目の実際的措置を含めて、NPTの継続的な重要性をしっかりと認識することが必要である。

 13.その他の効果的な法的措置には以下が考えられる。

(a) CTBT の早期発効を達成すること。

(b) 2015年のGGE報告を基盤として、核兵器あるいは他の核爆発装置用の核分裂装置の生産禁止のための検証可能かつ差別的でない条約を交渉すること。そこにおいては、目的達成のためにすべての関連する疑問が扱われること。

(c) 米オバマ大統領が2013年にベルリンで提案したように、米国とロシアの間で新START条約の後継条約の交渉が開始されること。

(d) 核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約が普遍化されること。

(e) 核物質防護条約の2005年修正の発効を促進すること。

(f) 国連安保理決議1540の具体的履行に向けて支援を提供すること

(g) 軍事目的にもはや必要ではない核物質を特定すること。そのような分裂性物質の不可逆的な除去を確実なものとすべく、IAEAの文脈において、法的拘束力を有する検証取り決めを開発すること。

(h) 非核兵器地帯を強化するとともに、地域国間の自由意思に基づく枠組みを基盤とする新たな非核兵器地帯や非大量破壊兵器地帯を創設すること。

(i) 複数国あるいは多国間での核兵器削減交渉を開始すること。

 

結論

14. 国際社会は現在、短・中・長期的な観点を含め、論理的な次のステップとして「効果的な措置」を明確化するという課題に立ち向かっている。「プログレッシブ・アプローチ」における重要なランドマークは、我々が「最小化」地点に到達した時となるだろう。「最小化」地点とは、核兵器が非常に少ない数まで削減され、効果的な検証技術と手法を伴う国際的に信頼性のある検証体制が確立された時を指す。いずれ、核兵器のない世界を目指す上では、多国間での核兵器条約(NWC)や複数の核兵器国間での取決めといった、差別的でなく、国際的に検証可能な核軍縮の枠組みが、最終の「ビルディング・ブロック」として、一体どのようなものになるのかを長期的な視点で検討することが必要になるだろう。こうした法的取決めは、核兵器が廃棄され、新たな核兵器が作られていないという保証を各国に与えるものとなる。このような交渉にすべての核兵器保有国を含むことは紛れもなく必須である。しかしこの最小化地点に到達するまでにその前段となる多くの作業が必要である。

15. 各国が最小化地点に進み、そして最後の核兵器を放棄するまでの用意ができるに至るには、解決しなければならない様々な政治、安全保障、技術的検証、そして執行に関する問題がある。これらの問題について検討を行うことを、最小化地点に到達するときまで待つ必要はない。そうした検討は今からでも行うことができる。たとえば、核軍縮の妨げとなっている地域問題も取り扱う必要がある。核兵器保有国はさらなる削減の前進を可能にすべく、それらの国々の間で複数国間の条約を交渉することを検討すべきである。

 16. 信頼に関する環境がどう動くかは、そうした最終措置の前進に影響を与えるものであり、共通の目標に向けて我々が前に進んでいく上で十分に考慮されていかなければならない。信頼醸成に貢献する初期段階の措置としては、非法的及び法的な措置からなる広範かつ柔軟な「枠組み」に関する合意がありうるだろうし、これは軍縮プロセスを前進させるものとなる。公開作業部会は、こうした急務について我々に議論の機会を与えてくれた。こうした「プログレッシブ・アプローチ」の下でどのような措置を取るべきかの議論に参加することは、すべての国家にとって、とりわけ、しかしそれに限定しないが、核兵器保有国にとっての利益である。

(暫定訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

 

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