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視点―
世界的な核軍縮は無政府的拡散に対する唯一の回答

2009年10月20日、ル・モンド紙

 

 第二次世界大戦という極限的抗争の中で生まれた核爆弾は、冷戦期における二極間の相互抑止の手段であった。イギリス、フランス、中国もまたそれを取得した。二大国家の戦略的覇権競争の中で、核抑止力は冷戦期において軍事紛争を抑制する役割を果たし、ある部分では冷戦後もその機能は存続した。しかし、世界の深層における2つの変化は、核兵器の未来における役割の再考を我々に迫っている。

 第一に、超大国ブロックの解体以後の紛争の多様化によって、抑止メカニズムは以前ほど規定力をもつものではなくなってきた。なぜなら、紛争の多くは、純粋に地域的な動機によるものになった。紛争の当事者たちはグローバルな大国の圧力に対抗しているわけではなく、そこでは核大国の死活的な利益が害されているわけでもない。一方、核兵器国は相互関係において持続可能な協調的政策を選択してきた。グローバルな抗争の唯一の旗手は、原理主義の拡大を目論む非国家主体である。その結果、抑止の戦略的有効性はますます片隅に追いやられた。

 第二に、1968年の核不拡散条約(NPT)以来形成された核拡散取極めによって制度化された規制装置は、その実効性を失っている。2、30年前にはNPTは主要国に核兵器を取得せず、もしくは核兵器を否定するよう促し、成功を収めていた。しかし、NPT体制の均衡の基盤となる核兵器国による誓約は履行されなかった。イスラエル、インド、パキスタンは抵抗もなく、「核兵器クラブ」に加わり、険悪な地域的危機の解決がいまだなされていない。核兵器国が自ら署名した軍縮プロセスにおいてなし遂げたのは限られた前進でしかない。

 今、イランや北朝鮮の行動によって確認され強調されている不拡散の失敗は、積年の失敗の帰結である。すなわち、既に容認されてしまった核拡散によって現存する合意の正当性は弱体化され、戦略的敵対国に対する認識を共有する少数国によって築かれた体制の有効性は、新規参入国の登場によって掘り崩されてきた。この現象に伴って体制への熱意は持続し難いものとなった。なぜなら関係する主体が余りにも多く、いずれかの体制が不安定になる可能性があるからである。それゆえ、国際的な安全保障は深刻な危機に立たされている。他の種類の兵器の拡散に対してなしえた成功も、核兵器という最も殺傷力の高い大量破壊兵器の増加によって瓦解してしまうかもしれないということを付け加えておきたい。

 こうした観測から導かれる結論は明瞭である。すなわち、平和にとって最も重要なのは拡散防止の成功であり、それはNPTにおける5核兵器国(P5)が緊急でより根源的なイニシアチブを発揮するか否かに懸かっている。P5は軍縮を完遂する計画を主導するプロセスを引き受け、3つの事実上の核兵器国をそこに参加させ、新しい核兵器開発計画をすべて放棄し、主要な地域的危機の克服のためのイニシアチブを強め、政治的リスクを引き受けねばならない。

 バラク・オバマ米大統領は、いくつかの極めて有望な姿勢を表明した。その最初のものは、4月6日のプラハ演説とドミトリー・メドベージェフ・ロシア大統領との会談であった。重要な戦略転換が行われる可能性があるが、同時に大きな障害も予想される。すなわち、力の象徴として獲得された核兵器に対する米国の政治及び軍首脳の愛着、ロシア、中国の指導者の変心への疑念、インド、パキスタン、イスラエルの地域戦略、そして北朝鮮とイランに核計画を放棄するよう説得することの困難などである。

 この議論においてフランスが果たす役割は特別に重要である。すなわち、フランスは伝統的に自主独立の精神を持ち、保有核兵器数の厳格な充分性と確固たる安全確保体制において責任ある姿勢を維持してきた。そしてフランスは兵器の制限及び効果的査察のためのすべてのイニシアチブに忍耐強くかつ建設的に参画してきた。フランスは、他の核兵器国と同じく、信頼に足る核不拡散体制の再建に多大な関心を持っている。フランスが世界に発する平和と正義の政治的メッセージは、自らこれから始まるであろう効果的かつ均衡ある軍縮プロセスにおいて、力強く創造的な役割を担うことを求めている。このプロセスは、ヨーロッパの同盟国を含め、地球上の多くの人々が求めているものである。

 本宣言に署名した我々は、この分野における経験に立って、フランスが軍縮プロセスを成功させることを誓約し、その論理的帰結として、時がきたならば軍縮を自国の核能力にも波及させるという断固たる決意を確認することを願う。フランスは、2010年に行われる5年に1度のNPT再検討会議を契機として民主主義の下で必要な議論を開始し、来たる交渉開始の日のために積極的に備えるべきである。

アラン・ジュペ(元首相、共和国連合)
ベルナール・ノーラン(将軍、元空軍戦闘軍司令官)
アラン・リシャール(元国防相、社会党)
ミシェル・ロカール(元首相、社会党)

 

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ。原文はフランス語。
仏「核軍縮のための市民行動」(ACDN)による英訳を訳出)

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