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新たな軍縮計画を開始せよ

エフゲニー・プリマコフ
イーゴリ・イワノフ
エフゲニー・ベリホフ
ミハイル・モイセーエフ

2010年10月22日

2010年には、核軍縮・核不拡散の分野において、世界的な安全保障に肯定的な影響を与えるような重要な出来事が続いた。米ロ両国の大統領は、プラハで新戦略兵器削減条約に署名した。もし両国の議会がこれを批准すれば、2つの核保有国の戦略関係はより安定し、透明性を伴った、予測可能なものとなる。ワシントンで開かれた核保安サミットでは、世界規模での核物質の安全強化に向けた決議が採択された。2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議は、同条約の強化に関する最終文書への署名をもって閉幕した。

これらの出来事が有益であることは疑いもない。しかしそれらは、相互抑止という核戦略イデオロギーに触れるものとはなっていない。新たな、グローバルで多極的な世界においては、大国及びその同盟国間に大規模な武力紛争が起こることを想定するのは難しい。そうしたなか、核抑止が主として前世紀的な脅威に対処しようとしていることは逆説的である。

また同時に、核抑止は21世紀の新たな脅威に対して有効ではない。そうした脅威には、大量破壊兵器ならびにその運搬手段の拡散、世界規模でのテロリズム、民族・宗教紛争、国境を越えた犯罪などが含まれる。核抑止が大量破壊兵器の拡散を招くこともありうる。

核抑止による国家間協力への否定的影響を回避するためには、最小限充分性の原則に基づく条約を通じた軍備レベルの低下が必要である。また、すべての国が平等に安全を確保するとともに、技術的欠陥、他国の意図に関する間違った解釈、政治指導部の政策決定における時間不足によって核による第一撃やミサイル発射が行われてしまう可能性を排除すべく、戦略的安定性を促進することも必要である。新STARTはこれらすべての要件を満たすが、なおも多くの課題が残されている。

核軍縮の次の段階は二国間のみに限定されるべきではない。他の核保有国に対しても制限を加え、信頼を構築する措置が求められる。米国と異なり、ロシアはその地政学的位置から、すべての核保有国へのアクセスが可能であり、この点はさらなる軍縮に向けて考慮されなければならない。

核抑止の概念は、世界的な核軍縮への道程における克服困難な障壁となっている。米国、ロシア、その他の国においては、核軍縮の支持者ばかりではなく、反対論者も間違いなく存在する。その中には未だに冷戦期の固定概念を引きずっている人もいるが、多くは軍縮プロセスに関連した具体的かつ正当な懸念を表明している。そのような議論を簡単に無視することはできない。例えばロシア国内には、核能力がロシアの大国としての地位にとっての重要要素であるとする考えが広く存在している。

経済の近代化や生活水準、社会的・政治的権利・自由の向上、科学・文化の発展によってロシアの対外イメージは十分に確保されるであろうと我々は確信している。しかし、国際関係において「戦力投射」による威嚇が用いられる限り、ロシアは自国ならびに同盟国、そして正統な権益を守るべく核を含む十分な軍事力を保持しなければならない。

このように核軍縮は国際的な安全保障や安定性の向上とともに、国家間のさらなる信頼醸成を必要とするものである。オバマ政権は世界的な安全保障の課題について見直しを行い、世界的な安全保障規制及び制度の強化、紛争解決における外交手段の活用、ロシアとの対等なパートナーシップを重視した新たな多国間アプローチに舵を切った。これらの原則が米国及びその同盟国の外交政策に反映されることが重要である。このことは対弾道ミサイル防衛、通常兵器、戦略的非核兵器、さらには宇宙軍事化計画に適用される。長期的視野にたって、我々は「核兵器のない世界」とは現在の世界から核兵器を差し引いたものではないという結論に達した。他の原則や制度に基づいた国際システムが必要である。「核兵器のない世界」は、他の大量破壊兵器、通常兵器、また、新たな物理的原則に基づいた先端的非核兵器及びシステムを使った戦争のない世界とならなければならない。これは大規模戦争に限ったことではなく、地域紛争についても同じである。今日、複数の小国は核兵器が通常兵器における大国の圧倒的優位に対抗する手段とみなしている。この考えが地域レベルでの核拡散を誘発し、核テロの脅威を増長している。このような脅威を取り除くために、大規模紛争及び地域的、国際的、領土的紛争の平和的解決に向けた信頼できるメカニズムを構築することが必要である。

核軍縮には国際システム全体の徹底的な点検が必要である。このことはグローバル経済や金融、エネルギー供給、環境、気候、人口、伝染病、国境を超えた犯罪、そして宗教的・民族的過激主義といった21世紀における他の主要問題の解決にもつながるだろう。それゆえ核軍縮はそれ自体が目的ではなく、より文明的な原則や新しい世紀の要請に応える、国際的な人間の在り方を再構築するための1つの重要分野であり、前提条件であり、手段であると言えよう。

エヴゲニー・プリマコフはロシアの元首相、外相
イーゴリ・イワノフは元外相
エフゲニー・ベリホフはロシア・クルチャトフ研究所総裁
ミハイル・モイセーエフは元軍参謀総長

 

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)

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