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北朝鮮(DPRK)の核戦力一覧

【概要】
北朝鮮は積極的な核兵器開発を継続しているが、具体的な保有核弾頭総数についてはさまざまな見方がある。Kristensenは、2017年4現在の北朝鮮の保有核弾頭総数を(10~20)発と推定する(Kristensen、Hans M. 2017)。他方、Albrightは、2016年末現在、北朝鮮が13~30発の核兵器を保有していると見ている。これは、北朝鮮が保有するプルトニウム(推定33㎏)と兵器級ウラン(175~645㎏)の70%を使用したとの想定に基づく数字である(Albright, David 2017)。Kile & Kristensenは、寧辺の黒鉛減速炉がフル稼働した場合、年間あたりで1発の核兵器に相当する6kgのプルトニウムの生産が可能になると見ている(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。他方、Albrightは、北朝鮮が年間3~5発のペースで核兵器の数を増大させているとし、2020年までに25~50発程度、さらに寧辺での軽水炉の運転を含めれば2020年末までに保有核弾頭数が60発に達する可能性を指摘する(Albright, David 2017)。
北朝鮮は、2006年10月、2009年5月、2013年2月、2016年1月及び9月に核実験を実施したが、北朝鮮が核弾頭を作戦配備していることを示す公開情報は存在しない。一方、多くの非政府機関の分析が、北朝鮮は弾頭小型化などの技術段階に達しているとの見方をしている(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。
2017年6月1日現在
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核弾頭保有数 < 20 1)
内訳
地上発射弾道ミサイル搭載 ?
海洋発射弾道ミサイル搭載 ?
運搬手段 1)
名称 射程(km) ペイロード(kg) 配備状況 備考
地上発射弾道ミサイル
スカッドC(火星6号) 500 700〜800 1988年 2)
スカッドER 1,000 ? ? 3)
ノドン 1,250 1,000〜1,250 1990年 4)
ムスダン(火星10号、BM-25) > 3,000 〜1,000 開発中 5)
KN-08(火星13号) > 5,500 ? 開発中 6),7)
テポドン2(白頭山2号、銀河2号、銀河3号) (二段式) 4,000〜10,000
(三段式) 10,000〜15,000
1,000〜1,500 開発中 8)
KN-15(北極星2号) 1,200〜2,000 ? 開発中 9)
KN-17(火星12号) 4,500 ? 開発中 10)
海洋発射弾道ミサイル
KN-11(北極星1号) 1,200 ? 開発中 11)
【脚注】
1) いずれのミサイルも核能力の有無は不明である。特に記載のない限り、運搬手段の射程の出典は Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016。
2) 射程、ペイロード及び配備年の出典はFAS 2016。最近の発射実験は2017年5月29日。飛翔距離は約450kmで、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した(AFP 2017)。
3) ER = Extended Range (延長射程)。射程の出典は Schiller, Markus & Schmucker, Robert H. 2016。道路移動式。2016年9月5日に3連続発射実験を行ったとされる(Schiller, Markus & Schmucker, Robert H. 2016)。最近の発射実験は2017年5月29日。飛翔距離は約450kmで、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した(AFP 2017)。
4) 道路移動式。一段式。1993年に最初の発射実験を行った(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。発射台は50基以下。175~200基が配備されている(NTI 2017)。近年では、2016年8月3日にノドンとされる弾道ミサイル2発を発射。一発は約1,000kmの飛翔距離であったとされる(もう一発は発射直後に爆発)。2016年9月3日にもスカッドまたはノドンと見られる弾道ミサイル3発が発射された(防衛省 2017)。
5) 道路移動式。一段式。発射台は50基以下。ソ連製R-27(SS-N-6)(液体燃料のSLBM)が基になっている(NTI 2017)。2010年の軍事パレードで初登場した(NTI 2017)。2016年4月~6月に6回の実験を実施した(最初の5回は失敗、最後の1回は部分的に成功とみられる)(NTI 2017)。
6) 道路移動式。三段式。2012年と13年の軍事パレードで登場したが、模型と見る専門家もいる(NTI 2017)。
7) 2015年10月10日、北朝鮮はKN-14(火星14)と呼ばれるKN-08の改良型を公開した。射程は8,000~10,000kmと推定される(Missile Threat 2016-1)。
8) 射程とペイロードの出典はMissile Threat 2016-3。三段式。2006年に最初の発射実験を行ったが失敗。つづいて09年4月5日と12年4月13日に人工衛星発射を意図した飛翔体の発射実験を行ったが、失敗したとみられる。12年12月12日、北朝鮮は人工衛星の打ち上げに成功と発表。米国も「なんらかの物体」が軌道に到達したことを確認。6年2月7日、北朝鮮は再び人工衛星(地球観測衛光明星(クァンミョンソン)4号)の打ち上げに成功と発表。
9) 射程の出典はMissile Threat 2017-1。KN-15は、KN-11の陸上版と見られている。固体燃料。道路移動式。二段式。2017年2月12日に初の発射実験を行い、飛翔距離は500kmであった(Missile Threat 2017−1)。2017年4月5日に北朝鮮が発射したミサイルについて、米軍は当初KN-15と声明を発表したが、「スカッドER」(射程1,000km)であったと分析を修正した(共同 2017)。2017年5月21日に北朝鮮は二度目となるKN-15の発射実験を行った(Missile Defense Project 2017)。
10) 射程の出典はMissile Threat 2017-2。液体燃料、一段式。 道路移動式。KN-17が火星12と同じものか、あるいは2つが別の種類のミサイルであるかを示す確たる証拠はないとされる(Missile Threat 2017-2)。もし同じものであるとすれば、17年4月5日に初の発射実験、4月16日に二度目の発射実験、4月29日に三度目の発射実験を行ったと見られるが、三回とも失敗した。17年5月14日に初めて実験は成功。水平距離約700 km、最大到達高度2,000kmに達し、日本海に落下した(Wright, David 2017)。
11) 射程の出典はMissile Threat 2016-4。ムスダンの海洋版とされる。2015年4月に水中から空中への「射出実験」が行われたと見られている。北朝鮮は潜水艦発射と説明しているが、同年5月8日、11月28日(失敗)、12月21日に実施された実験も同様の水中での射出実験であったと分析されている(梅林宏道 2016)。初となる潜水艦からのSLBM発射実験が行われたのは2016年4月23日、新浦付近の海域であった。この時の飛翔距離は30kmであり失敗と見られる。2016年7月9日、8月24日にも同様のSLBM発射実験が行われた。三度目の実験では500kmの距離に成功したと伝えられる(NTI 2017)。
【出典】
Albright, David 2017: “North Korea’s Nuclear Capabilities: A Fresh Look: Summary of Major Findings in Conjunction with PowerPoint Slides Presented During a Series of Talks Given in DC,” 28 April 2017, http://isis-online.org/uploads/isis-reports/documents/North_Korea_Nuclear_Capability_Estimates_Summary_28Apr2017_Final.pdf(2017.6.2アクセス)
APF 2017: 「北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本海に落下」、2017年5月29日、http://www.afpbb.com/articles/-/3129892(2017.6.12アクセス)
FAS 2016: “Hwasong 6/ Scud-C,” 21 October 2016, https://fas.org/nuke/guide/dprk/missile/hwasong-6.htm(2017.6.12アクセス)
Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016: “North Korea’s military nuclear capabilities,” SIPRI Yearbook 2016: Armaments, Disarmament and International Security, Oxford University Press 2016, pp.655-660.
Kristensen, Hans M. 2017: “Alert Status of Nuclear Weapons (Version 2),” https://fas.org/wp-content/uploads/2014/05/Brief2017_GWU_2s.pdf (2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2016-1: “KN-14 (KN-08 Mod 2),” https://missilethreat.csis.org/missile/kn-14/(2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2016-2: “Taepodong-1,” https://missilethreat.csis.org/missile/taepodong-1/(2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2016-3: “Taepodong-2 (Unha-3),” https://missilethreat.csis.org/missile/taepodong-2/(2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2016-4: “KN-11 (Pukkuksong-1),” https://missilethreat.csis.org/missile/kn-11/(2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2017-1: “KN-15 (Pukkuksong-2),” https://missilethreat.csis.org/missile/pukkuksong-2/ (2017.6.2アクセス)
Missile Threat 2017-2: “Hwasong-12,” https://missilethreat.csis.org/missile/hwasong-12/(2017.6.12アクセス)
Missile Defense Project 2017: “North Korea Tests KN-15, says missile is ready for production,” 21 May 2017, https://missilethreat.csis.org/north-korea-tests-kn-15-says-missile-is-ready-for-production/(2017.6.2アクセス)
NTI 2014: “Design Characteristics of North Kore’s Ballistic and Cruise Missiles,” July 2014, http://www.nti.org/media/pdfs/design_characteristics_of_north_koreas_ballistic_and_cruise_missiles.pdf?_=1406744044&_=1406744044(2017.6.2アクセス)
Schiller, Markus & Schmucker, Robert H. 2016: “Flashback to the Past: North Korea’s “New” Extended-Range Scud,” 8 November 2016, http://www.38north.org/2016/11/scuder110816/(2017.6.15アクセス)
Missile Defense Project 2017: “North Korea Tests KN-15, says missile is ready for production,” 21 May 2017, https://missilethreat.csis.org/north-korea-tests-kn-15-says-missile-is-ready-for-production/(2017.6.2アクセス)
Wright, David 2017: “North Korea’s Missile in New Test Would Have 4,500 km Range,” http://allthingsnuclear.org/dwright/north-koreas-missile-in-new-test-would-have-4500-km-range(2017.6.12アクセス)
梅林宏道 2016: 「D.P.R.K.の核兵器運搬手段 第1版」ピースデポ・ワーキングペーパー No.3J, 2016年9月25日, http://www.peacedepot.org/wp-content/uploads/2016/12/WorkingPaper3J.pdf(2017.6.16アクセス)
防衛省 2017: 「2016年の北朝鮮によるミサイル発射について」, http://www.mod.go.jp/j/approach/surround/pdf/dprk_bm_20160909.pdf(2017.6.2アクセス)
共同 2017: 「北朝鮮ミサイルはスカッドER 米軍が分析修正」, 『日本経済新聞』, 2017年4月6日, http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040001_W7A400C1000000/(2017.5.31アクセス)
©RECNA 核弾頭データ追跡チーム

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