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グローバルゼロ行動計画(抜粋訳)

グローバルゼロ 2009年6月29日

(前略)

グローバルゼロの追求のようなダイナミックかつ複雑な政治的試みにおいては、プロセスのいかなる段階についてもその成功の可否を予測することなどできない。最終目標達成の可否ならばなおさらである。しかし確かなことは、各段階において達成すべき条件についての現実的検証を含む包括的な全体計画が存在しなければ、我々は決して成功しないということである。世界が「核拡散の極限」と核の大惨事に向かって転がり落ちてゆくかたわらで、核兵器廃絶の目標ははるか遠くの夢であり続けるだろう。

核兵器の全廃はすぐに実現できるわけではない。核兵器廃絶に向けた効果的な措置に関する合意をめぐる交渉の開始に先立って、年月をかけた技術的、外交的、政治的な準備が必要となる。交渉ならびに履行にはさらなる年月がかかる。一言で言えば、これは非常に長く困難なプロセスである。ゼロへの道に早く踏み出せば踏み出すほど、核の脅威に早く終止符を打つことができる。実際、我々のスタートが遅れれば、「核拡散の極限」に到達し、時すでに遅し、となるかもしれない。

また、グローバルゼロに関する真剣な協議の開始は、すぐさま安全保障上の利益を生むであろう。核の野望を抱く国は、他の国々が核兵器のない世界の実現を誓約しようとしまいが核兵器を手に入れようと試みるだろう。しかし、グローバルゼロ協定に向けた多国間協定を開始することで、概して言えば核拡散と闘うべきだとのすべての国々の政治的意志を発揚することになるし、個別問題としても北朝鮮やイランといった現在の核拡散の危機を解決することにつながる。くわえて、グローバルゼロ協議の開始以上に、NPTを強化するものはないだろう。上述したように、グローバルゼロ協定の妥結はNPT第6条の義務を果たすことを意味する。

委員会の第2回会合や秋に予定している主要国政府との協議等を通じ、我々は今後数か月でこの計画を発展させ、より良いものにしてゆく。そして、2010年2月2日から4日のグローバルゼロ・サミットにて最終計画を提示する予定である。我々は、あらゆる意見や提案を歓迎する。いかなる道を進むか、最後に決定を下すのは政治指導者である。我々の提案が唯一可能なアプローチではないが、ここで示したプロセスが、有益な枠組みとして活用され、グローバルゼロの達成に向けた戦略をめぐる指導者・専門家・一般市民の間の国際的対話を促すものとなることを希望する。

 

プロセスの概要

第1段階:2010年~2013年

◆米ロが核弾頭を1000まで削減するよう交渉する

―2009年12月5日に失効するSTART Iの後継条約に関する交渉妥結に続き、米ロはあらゆる種類の核弾頭の総数をそれぞれ1000まで削減する協定について交渉する(履行は2018年まで)。

・  この計画の下で、米国の核弾頭解体速度は、現在の速度(年間350弾頭)からかつての平均(1960年から2002年まで、年間1000弾頭)に段階的に戻ることになる。また、ロシアの核弾頭解体速度は、現在の速度(年間450弾頭)からかつての平均(年間1500弾頭)に段階的に戻ることになる。

◆多国間交渉の準備をする

―米ロの2国間交渉に関連し、他のすべての核保有国は、自国の核兵器計画を増強させないことを強く奨励される。

―すべての核兵器保有国は多国間交渉に向けた技術的・外交的な準備を行う。

・  核弾頭及び核物質の完全なる目録を作成する。

・  核弾頭の貯蔵、輸送、解体を検証するための方法を開発し、テストする。

・  多国間交渉に向けた外交枠組みを確立する。

・  ―すべての核兵器能力をもつ国は、

・  核爆発実験を速やかに停止し(CTBTの署名・批准)、兵器級核分裂性物質の生産を速やかに停止する(FMCTの署名・批准)。

・  すべての兵器級核分裂性物質の安全を確保する。

―警戒態勢の緩和、先行使用計画の終了、地域的非核兵器地帯の設立、その他グローバルゼロへの前進につながるような諸措置を奨励する

 

第2段階:2014年~2018年

◆多国間協定の交渉及び批准をする

―多国間枠組みのなかで、米ロは、それぞれの核弾頭総数を500まで削減することに合意する(履行は2021年まで)。その条件として、他の核兵器保有国は2018年まで自国の備蓄兵器を凍結し、2021年までに均衡の取れた削減をする。この協定には、次のようなものが含まれる。

・  この協定の発効には、すべての核兵器保有国の署名ならびに批准が求められること。

・  協定の発効に先立って、包括的な検証・施行システムを確立すること。このシステムは、すべての核弾頭の安全かつ検証措置を伴う解体、核弾頭のあらゆる部品と核分裂性物質の廃棄あるいは民生利用への転換、既存の核兵器を隠匿したり秘密裏に新しい核兵器を生産したりしないという協定義務の遵守を目的とする。このシステムは、米ソ(ロ)の保有核兵器の2国間削減の検証や、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ、南アフリカ、リビア、イラクにおける核兵器計画の廃止など、長年にわたる成功の経験を基礎にして作られる。また、この計画で示されている米ロのさらなる弾頭削減の検証による経験も活かされる。今日の限定的な監視能力をもってすら、外国による情報機関の目を逃れて兵器級核物質(高濃縮ウランやプルトニウム)を相当量生産した国はない。上記の検証・実行システムは、次のような要素を含む。

*  運搬手段、核弾頭、核分裂性物質の完全なる目録の作成、監査、ならびに査察。

*  核弾頭が解体され、不正行為(弾頭の隠匿や核兵器・核物質の秘密裏の製造)が存在しないことを直接肉眼で、ならびに科学的な方法を用いて確認するための、現地における非通告抜き打ち査察。

*  最新鋭の監視技術の広範な活用。たとえば、核爆発物質を間接的に検知するための地域的及び広範囲における環境サンプリングや、そうした物質の生産施設を検知するための熱探知など。

*  遵守をめぐる争いを解決し、合意に違反した場合はそれを遵守させるための合意メカニズム。

◆民生用燃料サイクルの保障措置を強化する

―グローバルゼロ協定の交渉と並行して、すべての核兵器能力をもつ国が、核物質の兵器生産への転用を防ぐために、包括的かつ普遍的な保障措置システムの確立を進め、合意すること。この計画には、次のようなものが含まれる。

・  まず初めに、すべての国の核燃料サイクル全体を国際的な保障措置の下に置く。これには、ウラン採鉱、精錬、すべての原子炉、すべての使用済み燃料が含まれる。

・  すべての国々が国際原子力機関(IAEA)の追加議定書を採択し、未申告の核物質あるいは核活動を探知するための広範囲な査察を受諾すること。

・  新たな保障措置の確立。場合によっては、国際燃料バンクを設立や、ウラン濃縮・プルトニウム再処理のための燃料サイクルの国際管理を含む。

 

第3段階:2019年~2023年

◆グローバルゼロ協定の交渉及び批准をする

―グローバルゼロ協定の交渉には以下のものが含まれる。

・  2030年までにすべての核兵器保有国が核弾頭総数をゼロにすることをめざした段階的かつ均衡の取れた、検証措置を伴う削減スケジュール。

*  すべての核兵器保有国は2025年までに2021年の保有量を半減する。

*  すべての国家は2030年までにゼロまで削減する。

・  協定の発効には、すべての核兵器能力をもつ国の署名及び批准を要する。

・  検証・実行システムの継続的な履行。

 

第4段階:2024年~2030年

◆残りすべての核弾頭を廃絶する

―すべての核保有国は、段階的で均衡の取れた、検証措置を伴ったすべての核弾頭の解体を2030年までに完了させる。このなかで、余剰核弾頭は、退役するにともない監視下に置かれた保管庫に移り、次に多国的な監視と検証の下に置かれた解体施設に移される。

―検証・実行システムの継続的な履行。(後略)

 

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)

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