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北朝鮮(DPRK)の核戦力一覧

【概要】
北朝鮮は積極的な核兵器開発を継続しているが、具体的な保有核弾頭総数についてはさまざまな見方がある。Kristensen & Norrisは、2018年5月現在の北朝鮮の保有核弾頭総数を10~20発と推定する(Kristensen, Hans M. & Norris, Robert S. 2018-2)。他方、Albrightは、2016年末現在、北朝鮮が13~30発の核兵器を保有していると見ている。これは、北朝鮮が保有するプルトニウム(推定33㎏)と兵器級ウラン(175~645㎏)の70%を使用したとの想定に基づく数字である(Albright, David 2017)。Kile & Kristensenは、寧辺の黒鉛減速炉がフル稼働した場合、年間あたりで1発の核兵器に相当する6kgのプルトニウムの生産が可能になると見ている(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。他方、Albrightは、北朝鮮が年間3~5発のペースで核兵器の数を増大させているとし、2020年までに25~50発程度、さらに寧辺での軽水炉の運転を含めれば2020年末までに保有核弾頭数が60発に達する可能性を指摘する(Albright, David 2017)。

北朝鮮はこれまでに6回の核実験を行った(2006年10月、2009年5月、2013年2月、2016年1月及び9月、2017年9月)。6回目のに核実験の威力は200キロトン前後と推定され、熱核融合爆弾を使用したとみられる。北朝鮮が核弾頭を作戦配備していることを示す公開情報は存在しない。一方、多くの非政府機関の分析が、北朝鮮は弾頭小型化などの技術段階に達しているとの見方をしている(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。しかしそれでも弾頭の大気圏再突入が安定して行える技術レベルに達しているかは懐疑的である(Wright, David 2017-8)。

また北朝鮮はこの間、核弾頭搭載可能とみられる弾道ミサイルの発射テストを頻繁に行ってきた。地上発射弾道ミサイルについては準中距離(射程 1,000〜3,000km)、中距離(射程 3,000〜5,500km)、ICBM(射程 5,500km 超)のいずれでも開発を進めており、その一部は配備済みと見られている。

2018年6月1日現在
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核弾頭保有数 10〜20
内訳
地上発射弾道ミサイル搭載 ?
海洋発射弾道ミサイル搭載 ?
運搬手段 1), 2)
NATOの呼称(名称) 射程(km) ペイロード(kg) 配備状況 備考
地上発射弾道ミサイル
スカッドER(火星9号) > 1,000 500 2016? 3)
ノドン(火星7号) > 1,200 1,000 1993? 4)
KN-15(北極星2号) > 1,000 ? 開発中 5)
ムスダン(火星10号/BM-25) > 3,000 1,000 2017? 6)
KN-17(火星12号) 3,300〜4,500 1,000 開発中 7)
テポドン2(白頭山2号/銀河2号/銀河3号) > 12,000 > 800 2012? 8)
KN-20(火星14号) 10,400 ? 開発中 9)
KN-22(火星15号) 13,000 1,000? 開発中 10)
海洋発射弾道ミサイル
KN-11(北極星1号) > 1,000? ? 開発中 11)
【脚注】
1) いずれのミサイルも核能力の有無は不明である。特に記載のない限り、運搬手段の射程及びペイロードの出典は Kristensen, Hans M. & Norris, Robert S. 2018-1
2) 地上発射弾道ミサイルの発射台はデポドン2のみが固定式サイロ、他はすべて道路移動式発射車両。
3) 一段式。液体燃料。ER = Extended Range (延長射程)。2016年9月5日に3連続発射テストを行ったとされる(Schiller, Markus & Schmucker, Robert H. 2016)。最近の発射テストは2017年3月6日で、4発がほぼ同時に発射された。高度260km,飛翔距離 1,000kmで3発が日本の排他的経済水域内に落下した(Wright, David 2017-1)。
4) 一段式。液体燃料。1993年に最初の発射テストを行った(Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016)。発射台は50基以下。175~200基が配備されている(NTI 2018)。近年では、2016年8月3日にノドンとされる弾道ミサイル2発を発射。うち1発は約1,000km の飛翔距離で、秋田県の西 250km の日本の排他的経済水域内に落下した(もう1発は発射直後に爆発)。2016年9月3日にもノドンと見られる弾道ミサイル3発が発射され、奥尻島の西 200〜250km の日本の排他的経済水域内に落下した(防衛省 2017)。
5) 一段式。固体燃料。KN-15は、KN-11の陸上版と見られている。2017年2月12日に初の発射テストを行い、飛翔距離は500kmであった(Missile Threat 2017)。同年5月21日に北朝鮮は二度目となるKN-15の発射テストを行った(Missile Defense Project 2017)。
6) 一段式。液体燃料。発射台は50基以下。ソ連製R-27(SS-N-6; 液体燃料のSLBM)が基になっている(NTI 2018)。2010年の軍事パレードで初登場した(NTI 2018)。2016年4月~6月に6回の実験を実施した(最初の5回は失敗、最後の1回は部分的に成功とみられる)(NTI 2018)。
7) 一段式。液体燃料。最初の発射テストは2017年4月5日だったが失敗。同年4月16日と4月29日のテストも失敗している。同年5月14日に初めて発射テストに成功した。軌道はロフテッド軌道(高度 2,000km,飛翔距離 700km)で、日本の排他的経済水域外の日本海に落下した。飛行時間は約30分間。通常軌道では 4,500km に相当する(Wright, David 2017-2)。さらに同年8月28日に通常軌道(高度 550km,飛翔距離 2,700km)での発射テストに成功した(Wright, David 2017-5)。このとき、津軽海峡上空の宇宙空間を通過して太平洋に落下した。同年9月15日のテストも通常軌道(高度 770km,飛翔距離 3,700km)(Wright, David 2017-6)で、津軽海峡上空の宇宙空間を通過して太平洋に落下した。
8) 三段式。液体燃料。2006年に最初の発射実験を行ったが失敗。つづいて2009年4月5日と2012年4月13日に人工衛星発射を意図した飛翔体の発射テストを行ったが、失敗したとみられる。2012年12月12日、北朝鮮は人工衛星の打ち上げに成功と発表。米国も「何らかの物体」が軌道に到達したことを確認。2016年2月7日、北朝鮮は再び人工衛星(地球観測衛光明星(クァンミョンソン)4号)の打ち上げに成功と発表。
9) 二段式。液体燃料。最初の発射テストは2017年7月4日で、ロフテッド軌道(高度 2,800km,飛翔距離 950km)で行われ、日本の排他的経済水域内に落下した。飛行時間は約39分間。通常軌道では 6,700km に相当する(Wright, David 2017-3)。2回目は同年7月28日で、ロフテッド軌道(高度 3,700km,飛翔距離 1,00km)で行われ、日本の排他的経済水域内に落下した。飛行時間は約47分間。通常軌道では 10,400km に相当する(Wright, David 2017-4)。
10) 二段式。液体燃料。2017年11月29日に最初の発射テストがロフテッド軌道(高度 4,500km,飛翔距離 960km)で行われ、青森県西方約 250km の日本の排他的経済水域内に落下した。通常の軌道では 13,000km に相当する(Wright, David 2017-7)。
11) 一段式。固体燃料。ムスダンの海洋版とされる。2015年4月に水中から空中への「射出実験」が行われたと見られている。北朝鮮は潜水艦発射と説明しているが、同年5月8日、11月28日(失敗)、12月21日に実施された実験も同様の水中での射出実験であったと分析されている(梅林宏道 2016)。初となる潜水艦からのSLBM発射実験が行われたのは2016年4月23日、新浦付近の海域であった。この時の飛翔距離は 30km であり失敗と見られる。同年7月9日、8月24日にも同様のSLBM発射実験が行われた。3度目の実験では 500km の距離に成功したと伝えられる(NTI 2018)。
【出典】
Albright, David 2017: “North Korea’s Nuclear Capabilities: A Fresh Look: Summary of Major Findings in Conjunction with PowerPoint Slides Presented During a Series of Talks Given in DC,” 28 April, 2017. http://isis-online.org/uploads/isis-reports/documents/North_Korea_Nuclear_Capability_Estimates_Summary_28Apr2017_Final.pdf(2018.6.1アクセス)
FAS 2016: “Hwasong 6/ Scud-C,” 21 October 2016, https://fas.org/nuke/guide/dprk/missile/hwasong-6.htm(2018.6.1アクセス)
Kile, Shannon N. & Kristensen, Hans M. 2016: “North Korea’s military nuclear capabilities,” SIPRI Yearbook 2016: Armaments, Disarmament and International Security, Oxford University Press 2016, pp.655-660.
Kristensen, Hans M. & Norris, Robert S. 2018-1: “North Korea nuclear capabilities, 2018,” Bulletin of the Atomic Scientists, vol.74, no.1, pp.41–51.
Kristensen, Hans M. & Norris, Robert S. 2018-2: “Status of World Nuclear Forces,”Federation of American Scientists. http://fas.org/issues/nuclear-weapons/status-world-nuclear-forces/ (2018.5.28アクセス)
Missile Threat 2017: “KN-15 (Pukkuksong-2),” https://missilethreat.csis.org/missile/pukkuksong-2/ (2018.6.1アクセス)
Missile Defense Project 2017: “North Korea Tests KN-15, says missile is ready for production,” 21 May 2017. https://missilethreat.csis.org/north-korea-tests-kn-15-says-missile-is-ready-for-production/(2018.6.1アクセス)
NTI 2018: “Country Profiles: North Korea: Missile,” July 2017. http://www.nti.org/learn/countries/north-korea/delivery-systems/(2018.6.1アクセス)
Schiller, Markus & Schmucker, Robert H. 2016: “Flashback to the Past: North Korea’s “New” Extended-Range Scud,” 8 November, 2016. http://www.38north.org/2016/11/scuder110816/(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-1: “North Korea Launches Four Missiles “Simultaneously”,” March 6, 2017. https://allthingsnuclear.org/dwright/north-korea-launches-four-missiles-simultaneously(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-2: “North Korea’s Missile in New Test Would Have 4,500 km Range,” May 13, 2017. http://allthingsnuclear.org/dwright/north-koreas-missile-in-new-test-would-have-4500-km-range(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-3: “North Korea Appears to Launch Missile with 6,700 km Range,” July 3, 2017. https://allthingsnuclear.org/dwright/north-korea-appears-to-launch-missile-with-6700-km-range(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-4: “North Korean ICBM Appears Able to Reach Major US Cities,” July 28, 2017. https://allthingsnuclear.org/dwright/new-north-korean-icbm(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-5: “North Korea’s Missile Test over Japan,” August 28, 2017. http://allthingsnuclear.org/dwright/north-koreas-missile-test-over-japan(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-6: “North Korea’s Sept. 15 Missile Launch over Japan,” September 14, 2017. http://allthingsnuclear.org/dwright/nk-sept-15-launch-over-japan(2018.6.1アクセス)
Wright, David 2017-7: “North Korea’s Longest Missile Test Yet,” November 28, 2017. https://allthingsnuclear.org/dwright/nk-longest-missile-test-yet(2018.6.1アクセス
Wright, David 2017-8: “Reentry of North Korea’s Hwasong-15 Missile,” December 7, 2017. https://allthingsnuclear.org/dwright/reentry-of-hwasong-15(2018.6.1アクセス
梅林宏道 2016: 「D.P.R.K.の核兵器運搬手段 第1版」ピースデポ・ワーキングペーパー No.3J, 2016年9月25日. http://www.peacedepot.org/wp-content/uploads/2016/12/WorkingPaper3J.pdf(2017.6.16アクセス)
防衛省 2017: 「2016年の北朝鮮によるミサイル発射について」, http://www.mod.go.jp/j/approach/surround/pdf/dprk_bm_20160909.pdf(2017.6.2アクセス)
©RECNA 核弾頭データ追跡チーム

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