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NPT BLOG 2015

【週報4②】 最終文書採択されず:今後の方向性は?
【週報4①】 最終文書採択されず:なぜ合意できなかったか
【短信8】 最終文書案提出;果たして合意は可能か
【短信7】  フェルキ議長案がブレークスルーになるか
【短信6】 徹夜の交渉、道は見えるか
【短信5】 対立解けないまま、最後の交渉へ
第3報② 深まる対立 ~主要委員会Ⅰ報告をめぐって~
第3報①  深まる対立 ~主要委員会Ⅰ報告をめぐって~(5月14日)
【短信4】 (原子力平和利用)「奪いえない権利」か「機微な技術」の拡散防止か:イラン合意が示唆するもの
第2報 先はまだ見えない
【短信3】 混迷する中東非大量破壊兵器地帯構想:第二委員会(核不拡散)
第1報 外熱内冷? 一般討論を終えて
【短信2】 2つの非人道性共同声明(5月1日)
【短信1】 新アジェンダ連合(NAC)提案はブレークスルーを生むか?(4月28日)
第0報 2015年再検討会議の注目点は?

 

週報4② 最終文書採択されず:今後の方向性は?

被爆70年という節目の年で開催されたNPT再検討会議の失敗は、今後の核軍縮・不拡散政策に大きな影響を与えるだろう。これまでの政策のままでは、核廃絶に向けての動きは加速するどころか、遅滞または逆行する可能性さえある。今後の核廃絶にむけて、これまでの政策の延長線上ではない、新しい考え方が必要とされるだろう。今回の会議の反省点を踏まえて今後の方向性について考察してみた。

① NPT体制の今後;多国間グループや地域信頼醸成の役割をどう考えるか

まずは、この会議の失敗がNPT体制への信頼性低下につながり、核兵器を巡るグローバルな核の秩序が崩壊していくという最悪のシナリオを招かないことが最優先課題だ。そのためには、NPT体制を補完する、様々な取り組みについてその重要性を再認識し、強化していく必要性がある。今回も、最も存在感を示したのは、非同盟諸国(NAM)、新アジェンダ連合(NAC)に加え、あらたに形成された「人道性グループ」であった。日本が主導的役割を果たした「軍縮不拡散イニシャティブ(NPDI)」も、2010年行動計画のフォローアップという目標を掲げ、グループとしての活動がそれなりの成果を上げた。このような同志によるグループの役割が今後ますます重要となる可能性が高い。今回の結果を十分踏まえたうえで、グループの目標、役割、そして連携について、再考することが求められるだろう。
さらに、中東問題で明らかになったように、安全保障上重要な地域の「信頼醸成」向上がグローバルな核の秩序にどう影響を与えるか、についての検討が必要だ。日本が提案した「広島・長崎への訪問」に対する中国の反応やその後の日本、韓国の対応を見ていると、核廃絶に向けての本質的な問題が、地域の不信感によって阻害されてしまう可能性が垣間見えた。今後も地域の安全保障や信頼醸成向上の取り組みについても、その役割をじゅぶん検討する必要がある。

② 核軍縮への取り組み:市民社会と政府の協働の在り方は?

今回の再検討会議では、非公開の会合が多く、特に最後の素案作成段階になると、ほとんどの会合が非公開であり、資料も公開されることが少なかった。そこで重要な働きをしたのが、Reaching Critical Will (RCW)というNGOであり、非公開資料も即座にウエブで公開され、非公式会合に参加できなかった政府代表団や専門家からも高い評価を得ていた。またサイドイベントでは、パグウォッシュ会議が少人数の「トラック2」会合(政府代表団や専門家が個人の立場で非公式意見交換を行う)を開催し、有益な意見交換を行っていた(会議の概要)。このような活動を通じて政府や専門家にも信頼されるNGOの役割は重要である。

この面では、日本も多くの被爆者団体、広島・長崎を中心とした平和首長会議、そしてナガサキ・ユース代表団を含むチーム長崎の存在感は、会議の前半に大きな役割を果たした。今後は、上記のようなNGOや専門家等との協働や政策形成過程への参加の在り方なども検討課題となろう。

再検討会議が失敗に終わった今、I CAN等のNGOと「非人道性グループ」が「核兵器禁止条約」に向けて具体的な動きをとっていくことが予想される。市民社会と政府、専門家の協働の在り方は大きな課題として検討に値する。

③ 日本の政策:「被爆国」と「核抑止依存国」のジレンマ脱却

最後に日本の政策についても新たな方向性が必要だ。今回、上記に述べたように、NPDIを通じて、地味ながらも最終文書草案に大きな貢献をしたことは、評価されるべきだろう。しかし、唯一の「被爆国」としてのリーダーシップという点では、やはり物足りなかった。それは、自国が「核の傘」の下にあり、むしろ「核抑止に依存する国」の代表として、核保有国側に近い立場をとり続けてきたからといえる。特に、人道性の議論における日本の政策対応は、その「矛盾」を露見させたといえる。この「被爆国」と「核抑止依存国」のジレンマを脱却すべく、新しい安全保障政策を目指さない限り、核廃絶への日本の貢献はどうしても限定されたものになることは間違いない。今回最終文書に合意が達成できなかったことは、このジレンマをさらに浮き彫りにすることになる可能性が高い。残念ながら、今の日本の安全保障政策はむしろその逆に向っているのではないか、と懸念される。RECNAが提唱している「北東アジア非核兵器地帯」構想は、まさにこのジレンマを正面から受け入れ、その脱却を目指すものだ。NPT会議の失敗を新たな機会ととらえて、政策の転換を目指すことがもとめられている。

NPT再検討会議は5年に1回しか来ないが、その準備は早い方がよい。今からでも、上記のような3つの点に留意した、新しい核軍縮・不拡散政策を構築していく検討を始める必要があろう。

(文責:鈴木達治郎)

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週報4① 最終文書採択されず:なぜ合意できなかったか

22日(金)午後3時からの予定だった最後の全体会議はほぼ2時間遅れの午後5時に開始。冒頭で、フェルキ議長から「懸命の作業を続けたが、合意に達することができなかったことを正直に報告しなければならない」と報告。この時点で事実上の不採択が決定した。

その後、各代表団の発言が始まったが、冒頭で米国代表団(ローズ・ガテマラー国務次官)が、非常の厳しい口調で「中東非大量破壊兵器地帯会議に関して、議長草案には同意できない。NPT再検討会議を自国の政治目的で操ろうとしている国がいる。特にエジプトとアラブ諸国だ。」と名指しで批判。英国・カナダも米国支持の発言で続いた。これに対し、イラン、エジプトは「米国こそ、合意を妨げた張本人である」と強く主張し、対立が解けずじまいで終わった。他の発言では、核保有国を批判する国が続出。核保有国や核の傘のもとにある非核保有国への不満が露出した。最後に存在感を示したのは、「非人道性の誓約(オーストリア政府の「プレッジ」が発展して名称も変わった)」の署名国数が107か国に達したことを報告したオーストリア代表団、「核廃絶はモラルの戦い。モラルを持つ我々が力を合わせれば核廃絶は可能」と感動的発言を行った南アフリカ代表団であった。その後、手続き的な採決を行って、会議はあっけなく9時に終了した。

この4週間積み上げてきた努力が、最後に崩れてしまった、という失望感が会場全体に漂い、傍聴していた我々も脱力感を覚えながら会場を去った。

はたして、合意できなかった原因は何だったのだろうか。公開の場では見えない交渉の背景など、詳細な分析を待たなければいけないが、大きく次の3つが考えられる。

① 中東(など地域)情勢と核問題の複雑な関係

まず、直接の原因となった中東情勢と核問題の複雑な関係である。中東で唯一核兵器を所有しているイスラエルを、どう非核化のプロセスに組み入れるか。中東非大量破壊兵器地帯の提案は、まさにそのための「対話の場」として機能させることが大きな目的である。しかし、中東地域諸国の安全保障や国内の政治情勢、地域における民族・宗教をめぐる対立の根の深さ、核兵器国である米(とその同盟国)・露の思惑など、その背景は極めて複雑であり、関係諸国の不信感はあまりにも根強かった。今回は、さらにイランと欧米主要国が核問題で交渉中であり、その影響もあったかもしれない。今回の対話の失敗は、北東アジアの核問題と安全保障問題の解決にとっても、その状況は大きく異なるとはいえ、他山の石として参考にすべきかもしれない。

② 核保有国(と「核の傘」国)に対する不信感

しかし、もちろん中東問題だけが合意を妨げたわけではない。やはり今回明確になったのは、多くの非核保有国からは、核軍縮へのコミットを避けようとする核保有国の対応に対する強い不信感があらゆる場面で露見した。今回は特に「核兵器使用の人道的影響」を巡る議論が盛り上がり、もし最終文書が採択されていれば、今回の再検討会議の最大の成果といえただろう。しかし、この「人道性の議論」が各国の核兵器に対する姿勢を二分。その中で注目されたのが、非核保有国ではありながら「核の傘」の下にある諸国の動向である。結果的には、「核の傘」にある非核保有国は、明らかに「核保有国」と同調したため、「人道性グループ」や「非同盟諸国グループ」などからは、結局「核兵器依存」から脱却できない国々として、不信感が強まっていった。今後は、非核保有国の中でも、核兵器に依存する国とそうでない国の対立がさらに深まっていく可能性がある。

③ NPT体制、特に再検討プロセスの限界

最後に、NPT体制、とくに再検討プロセス自体の持つ限界である。NPTは根本的に不平等な条約であり、核保有国は合法的に核保有を続けることができる。無期限延長により、その立場はさらに強くなったといえるが、それに歯止めをかけるのが第6条の核軍縮義務である。しかし、その進展を客観的に検証したり、担保する仕組みがNPTにはない。したがって、この第6条の軍縮義務の履行・不履行を巡り、核保有国と非核保有国で、根強い対立が続いているのである。さらに、再検討会議の決定は原則として満場一致の合意が前提であることを考えれば、核兵器国に新たな要求をすることは極めて難しい。もちろん、一方で非核保有国に対しても新たな核不拡散上の要求を義務付けることも難しい。そういった制約の中では、どうしても「漸進」的な成果しか得られないという構造的な問題が残る。それでも成果を上げるためには、2010年の行動計画のように、具体的な行動を少しずつでも迫っていくか、今回の「非人道性の議論」に見られるように、政策の規範やドクトリンを巡る議論を追求する等が考えられる。また今回の会議の運営面では、非公開の会合や限られた国だけによる交渉が多く行われていたが、透明性に欠ける運営が最後になって響いた可能性もある。再検討プロセスの実効性をどう改善していくかは大きは課題である。

次回②では、今後の方向性について整理する。

(文責:鈴木達治郎)

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短信8 最終文書案提出;果たして合意は可能か

23日(金)未明、予定より6時間ほど遅れて、2015年再検討会議の最終文書案が代表団に提示された。すぐにRCW (Reaching Critical Will)のサイトにアップされていたので、注目すべき点を整理しておく。文書は全体で24ページ、184項目にわたるが、前文(第I、II条)に始まり、NPTの条項ごとに合意点が記述されており、主要委員会I(第VI条), II(第III条)、III(第IV条)の最終報告案がそのまま挿入される形となっている。最後に第VII条と地域安全保障、さらに脱退問題等の第X条について記述されている。

主要委員会Iの核軍縮については、昨日の議長案とほぼ変化がないようなので、説明を省略する。

主要委員会IIでは、追加議定書の項目がやはり議長のワーキングペーパーからは「追加議定書」の普遍化に対し、反対の方向で修正がなされている。たとえば、項目20では、ワーキングペーパーにあった「追加議定書が統合された保障措置の一部をなす」という文章が削除、また項目26では同様に「包括的保障措置と追加議定書の普遍化」の部分が削除されている。一方で、新たに項目21に「地域保障措置」の記述が追加されており、「透明性と信頼醸成向上にカギとなる役割を果たす」とされている。主要委員会IIIで注目された「奪いえない権利」の記述は、議長ワーキングペーパーの原文がそのまま採用されている。

最終文書案で最も注目されるのは、やはり中東非大量破壊兵器会議に向けての提言部分(項目169)であろう。これは先日公表された補助委員会IIのワーキングペーパーからかなり修正されており、交渉が難航したことが伺える。主要な変更点としては;
①主催者は国連事務総長に限定(WPでは「1995年中東決議の共同提案国、地域諸国との相談の上」という記述が削除)されたこと
②日程が12月15日までだったのを来年3月15日まで延ばしたこと
③中東非大量破壊兵器条約に「法的拘束力のある」という記述が追加
④「合意達成」が会議の主な目標であったのが「会議の主要な決定は地域国のコンセンサスよってなされる」と修正。
等が目立つ。これらの記述修正が合意されて出てきたものなのか、まだ交渉の途中なのかはあきらかでない。
本日午後3時に、全体会議でいよいよこの文書が採択されるかどうかが決定される。

(文責:鈴木達治郎)

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短信7 フェルキ議長案がブレークスルーになるか

21日(木)朝、主要委員会I(核軍縮)の最終文書案がフェルキ議長から公開された。しかし、午後3時のプレナリー(全体会議)は5時まで延期され、5時の会合では、本日午後10時に最終文書案が公開されることが議場で発表されて終わった。残る最大の課題は中東問題といわれており、こちらはまだ交渉が続いている。主要委員会Iの議長案は、交渉時間が限られていることを考えれば、この内容を受け入れるか否かの選択を各国・各グループが迫られているといえ、現在も非同盟諸国グループ(NAM)が検討を続けているようだ。

この議長案は、これまでの内容からいくつか重要な修正がなされている。評価の部分と今後の行動の部分に分かれているが、今後の行動部分で、最も重要な部分は、核軍縮の効果的措置に関する提言項目19である。

ここでは、今年の第70回国連総会に、第6条の完全な履行のための法的項目を含む効果的措置を明確にするための「オープンエンド(公開)作業部会(OEWG)」を設立することを勧告している。このOEWGで議論する法的項目として、「核兵器禁止条約」といった特定の内容は削除されているものの、「単独の法的文書(stand-alone instrument)」または「枠組み合意(framework agreement)」が明記されている。これまで明記されていた法的拘束力をもつ条約や時間的枠組みについての記述はすべて削除されているので、当初の素案からはかなりの後退といえる。しかし、一方で、法的項目についての議論を開始することを勧告している点は、2010年の行動計画からは一歩前進と見ることもできる。気になるのは、このWGは「コンセンサスを基本として運営する」ことが明記されているので、実質的にはなかなか決定ができない可能性が高いという懸念が残される。

そのほか、特に日本にとって注目すべき点として、以下の3点をあげておく。

項目7:すべての締約国が、次の再検討会議に向けて、核兵器の役割をさらに減少させることを目指して、その軍事・安全保障の概念、ドクトリンや政策を見直すことを要求する。

これは、2010年Action Plan 1をより明確に、非核保有国を含めて、安全保障政策の見直しを要請するものであり、注目するが、素案では「核兵器の全廃を目指して」という文言がやはり削除されている。

項目18:核兵器使用の人道的影響について、「核兵器の被害をこうむった人々や地域社会(community)」と直接交流すること」を軍縮・不拡散教育の中に含めている。この文章は、「広島・長崎訪問」という文言はないものの、実質的に被爆者や被爆地への訪問を述べていると読むことができる。

このほか、核保有国の報告様式の項目11では、「安全保障に損害を与えない範囲で」という文言が加えられており、素案に比べれば全般的には核保有国の主張をより多く反映している印象が強い。ただ、2010年と比較すれば、いくつかの進展が明記されていることも間違いなく、合意が形成されることを期待したい。

(文責:鈴木達治郎)

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短信6 徹夜の交渉、道は見えるか

NPT再検討会議は、いよいよ最後の大詰めを迎えている。19日(火)、主要委員会I(核軍縮),II(核不拡散),III(平和利用)のそれぞれの議長から合意に達することができなかったことが報告されたが、議論の内容をまとめたワーキングペーパー(I: http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=NPT/CONF.2015/MC.I/WP.1
、II:http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=NPT/CONF.2015/MC.II/WP.1、III:http://www.un.org/en/conf/npt/2015/pdf/NPT-CONF2015-MC.III-WP.1_Working%20paper%20of%20the%20Chair%20of%20%20Subsidiary%20Body%203.pdf) がそのまま全体会議に提出され公開された。また、補助委員会II(中東非大量破壊兵器問題等、http://www.un.org/en/conf/npt/2015/pdf/NPT-CONF2015-MC.II-WP.2.pdf)、補助委員会III(条約脱退問題等、http://www.un.org/en/conf/npt/2015/pdf/NPT-CONF2015-MC.III-WP.1_Working%20paper%20of%20the%20Chair%20of%20%20Subsidiary%20Body%203.pdf)も合意に達していないことが報告されたが、全体会議に提出され公開された。

これを受け、フェルキ議長は、主要委員会II, IIIに対して、非公式委員会(非公開)を開催して、20日(水)10:00までに報告するよう要請。主要委員会IIでは、さらに5つの課題(保障措置、核不拡散、核セキュリティ、輸出管理、非核兵器地帯)に分かれて、非公開の交渉を行った。主要委員会Iについては、どこで会合が開かれているか明らかにされていないが、フェルキ議長が自らまとめ役を務めているようで、主要な国(P5, NAM, NAC, NPDIなどから日本を含む20か国程度といわれている)を集めて、集中的な議論を続けてきた。

その結果が、多少遅れて本日20日(水)15:00のプレナリーで発表された。主要委員会IIは多少の進展があったものの、まだ合意には達しておらず、主要委員会IIIは、かなりの進展があったので、明日には合意事項について報告できる見通し、との報告があった。しかし肝心の主要委員会Iと中東問題については、フェルキ議長みずから「まだかなりのギャップがあり、報告できる内容はない」との発表があり、合意までの道はかなり遠いことを思わせた。議長によると、ギャップが大きい重要な課題は「核兵器使用の非人道的影響」、「核軍縮の効果的措置(第6条)」「核保有国の報告様式」の3つであることを明らかにした。

残す時間は、あと2日。22日(金)の午後3時の最後の会合に合意文書案ができていなければいけないことを考えれば、残された時間は少ない。フェルキ議長は、「NPT体制の維持強化が我々の共通目標であり、意見が異なることがあっても、力を合わせて最後まで合意達成に努力せねばならない。会場が6時までしか使えないなら、会場外で夜も交渉を続けてほしい。」と最後の訴えを行った。今晩は、おそらく徹夜で交渉が行われているはずである。

明日21日(木)の午後3時。プレナリーでその結果が明らかにされる。

(文責:鈴木達治郎)

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短信5 対立解けないまま、最後の交渉へ

主要委員会IIIにて、NAMの提案への対応を議論する代表団
(2015年5月15日 撮影:RECNA)

主要委員会IIIにて、NAMの提案への対応を議論する代表団(5月15日)撮影:RECNANPT再検討会議第3週が終わり、本日(18日)からはいよいよ最終文書にむけての議論が始まった。本日は主要委員会I(核軍縮)III(原子力平和利用)で、報告書案の最後の議論が行われた。主要委員会I(核軍縮)は週報3で報じたように、対立が深まっているのが現状だが、主要委員会II(核不拡散)、主要委員会III(平和利用)については、議論と調整がかなり進んだようで、収束が見えてきたと見られていた。しかし、結果的には両主要委員会とも、対立が解けないまま、報告書に合意することなく最終討論を終えた。主要委員会I(核軍縮)のほうは、週報3①②で詳細に分析されているので、今回は主要委員会II(核不拡散)、III(平和利用)の論点を整理しておこう。

主要委員会IIは、核不拡散を担保する保障措置と平和利用のバランスが大きな課題となっていた。特に追加議定書の普遍化を要求する先進国に対し、追加議定書は条約上は義務ではなく、あくまでも自主的な措置だ、とする途上国側の議論が続いていた。ただ、より重要な課題として注目されていた課題は、中東非大量破壊兵器地帯であり、そのための会議について、15日(金)にようやく補助委員会II(非公開)から素案が公表された(http://www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/revcon2015/documents/SB2-CRP1.pdf)この内容をめぐってまだ議論が行われる可能性があるが、他に入手したロシア案と比較しても、それほど大きな差はない。素案では国連事務総長が2015年12月15日までに「全て中東諸国(アラブ諸国、イラン、イスラエル)」が参加して、会議を開催することを提案している。その主要目的は会議の「アジェンダ、様式、会議の成果物」について合意を得ること、となっており、特にアジェンダ(他の安全保障問題を議論するのかどうか)を巡る相違点が焦点となっているようだ。これ以外に、日本としては北東アジアの議論が注目されるところだが、北朝鮮に対する項目が含まれているだけで、北東アジア非核兵器地帯への記述は含まれていない。

議論が最も進んでいるとみられる主要委員会III(平和利用)では、15日(金)午前中に議長報告ワーキングペーパー素案(http://www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/revcon2015/documents/MCIII-CRP1-Rev3.pdf)が出されたが、先日短信3で報告したNAM(非同盟およびその他諸国グループ)が、これに対するコメント(http://www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/revcon2015/documents/MCIII_CRP5.pdf)を文書で提出した。これを巡って、議長が議論を一時中断し、代表団が議場の中央に集まって、まとめのための協議を行う、という珍しい一幕もあった(写真)。

これまでの経緯やNAMのコメントを中心に論点を整理してみると以下の4点が重要と思われる。

・「奪いえない権利」の確認

何よりもこの問題は、核拡散防止のための措置とのバランスである。NAMは、この権利を少しでも侵すような措置は「核軍縮、不拡散、平和利用の微妙なバランス」に深刻な影響をあたえ、条約の目的にそぐわないと強調している。結局この問題が最後まで対立の種となり、合意に達することができなかったといえる。

・非発電を含む原子力科学技術へのアクセスと先進国の技術協力

「奪いえない権利」と深く関与しているのが、この技術協力のセクションである。7日に提出された最初の議長案(http://www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/revcon2015/documents/CRP1_MCIII.pdf)では、「技術協力」という項目そのものがなく、途上国からの要請もあって、「技術協力」というセクションが新たに付け加えられた経緯がある。このセクションは原子力発電以外の平和利用に集中しており、途上国がこの問題を非常に重視していることが伺える。

・原子力安全、核セキュリティの重要性とIAEAの役割

福島原子力発電所事故以降の初のNPT再検討会議、ということで注目されたが、すでに過去に出されたIAEA報告書、国際会議、その他国連関連機関の報告書等の文章を引用することでほぼ尽きている。ここで注目したいのは、安全性、核セキュリティ確保の責任は各メンバー国の主権であり、IAEAの安全基準やピアレビュー等についても、少しでも規制色を強める文言は修正・削除されていった。

・核燃料サイクルの権利と規制、多国間管理の進め方

7日の第1案にはなくて、もう一つ追加された項目が、「核燃料サイクルへの多国間アプローチ」であった。この分野での国際協力を奨励する趣旨となっているのであるが、すでに短信3で紹介したように、「エネルギー・原子力政策とともに核燃料政策を決定する権利、各国が機微な技術の能力を開発する権利を侵さない範囲に限定すべき」、というNAMの主張をめぐり、表現で意見の交換が続いていた。

さらに、15日(金)には補助委員会III(非公開)の報告書案(http://www.reachingcriticalwill.org/images/documents/Disarmament-fora/npt/revcon2015/documents/MCIII_WP1.pdf

も公表された。ここでは、条約第X項のNPT脱退を巡っての議論があったとされるが、意見がまとまっていない模様である。この補助委員会案について、主要委員会IIIでは1回の議論もされないまま、主要委員会が終了してしまったため、一部から手続きとしての不備を追求されるなど、最後は後味の悪い終わり方となってしまった。

あす(19日)からは、いよいよ全体会議(プレナリー)で最終文書作成に向けての討論が始まる。

(文責:鈴木達治郎)

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第3報② 深まる対立 ~主要委員会Ⅰ報告をめぐって~

第3報①に続き、主要委員会Ⅰ(核軍縮)報告書案の主なポイントを概観する。前回のブログ執筆後の翌15日(金)に同案の改訂版が配布されたため、そこでの変化も踏まえて「法的枠組み」「時間枠を定めた行動」の2つの論点を見ていきたい。

<法的枠組み>
本ブログで紹介してきたように、新アジェンダ連合(NAC)を中心とする勢力は、NPT第6条の完全履行には法的な枠組みが必要であり、そのための具体的アプローチの検討を進めるべき、との主張を繰り返してきた。NACの要求は、現在の主要委員会Ⅰ報告書案の「行動」部分に次のように反映されている。

「19.会議は、すべての加盟国が、遅滞なく、国連軍縮機構の枠組みにおいて、核兵器のない世界の達成と維持に必要とされる法的条項やその他の条項を含む、第6条の完全履行のための効果的な措置を特定し、細部を明らかにしていく包含的なプロセスに関与していくことを奨励する。これらの法的条項は、さまざまなアプローチを通じて制定されうる。そうしたアプローチには、『単独型』法的文書、すなわち『簡潔型の核兵器禁止条約【Nuclear Weapon Ban Treaty】』や、決議A/RES/68/32に参照されるように、特定の時間枠において核兵器を廃絶する段階的計画を含む『包括的な核兵器禁止条約【Nuclear Weapon Convention】』 などの形式があり得る。また、主たる禁止、義務、ならびに時間枠をともなった、不可逆的かつ検証可能な核軍縮に向けた枠組みを確立する、『相互に支え合う複数の法的文書による枠組み合意』や、『その他の取決め』が含まれる。このプロセスにおいては、同時並行での実現が可能である、相互に支え合う、実際的なビルディング・ブロックについても特定し、細部を明らかにしていくことができる。」(強調は筆者)

上記の太字部分が最新の改訂版において加筆された部分である。「その他の条項を含む」という文言が入ることによって、第6条の「効果的な措置」が法的アプローチに限定したものではない、という認識が示されている。法的議論に消極的な各国の見解を反映させたものであり、NACの立場から言えば、「弱められた」ということになるだろう。また、最後の「ビルディング・ブロック」(ブロック積み上げ方式)に触れた部分にも注目したい。「ビルディング・ブロック」アプローチとは、核軍縮停滞の元凶と批判される「ステップ・バイ・ステップ」(段階的)アプローチを補完し、実行可能な軍縮措置を「同時並行」的に進めることが可能であると、日本など「核の傘」の下の国々が提唱している核軍縮アプローチである。ただし、「ビルディング・ブロック」においては「核兵器禁止条約」などの法的枠組みの検討は適切な国際環境が整った後の「最後のブロック」であるとされており、その意味では検討の即時開始が可能であるとするNACらの主張との隔たりは大きい。

<時間枠を定めた行動>
主要委員会Ⅰ「補助委員会報告案」に当初盛り込まれていた時間枠を定めた具体的な行動要求(本ブログ第2報参照)は、その多くが削除・修正された。たとえば、米ロ両国に対して、「START条約失効(2018年)までに、非戦略核兵器を含めた保有核兵器のさらなる削減に向けた米ロ交渉の締結がなされることを要求(補助委員会報告案・項目3)」していた箇所は、「条約の可能な限りの早期の締結を目指して、非戦略核兵器を含めた核兵器備蓄の大幅削減を達成するために両国が早期に交渉を開始することを奨励」に修正された。

最終文書の「行動」要求に、時間枠に関する言及が盛り込まれるか否かは重要な注目点である。核軍縮のペースの遅れに不満を募らせ、明確な時間枠の設定を求める非核兵器国の度重なる要求に対し、核兵器国は「時間枠は核軍縮にそぐわない」と反発している。ここでも対立の溝は埋まっていない。

現在の主要委員会Ⅰ報告書案は、過去のNPT再検討会議における数々の合意の履行を求める中で特定の時間枠やベンチ―マーク(指標)が必要であるという認識について、かろうじて次の表現を残している。「行動」の項目を列挙している節の冒頭部分である。

「47.会議は、条約第6条、『核不拡散・軍縮のための原則と目標』と題された1995年再検討・延長会議の決定第3、4(c)節、2000年再検討会議最終文書で全会一致合意された核軍縮のための実際的措置、ならびに2010年再検討会議で合意された後継行動のための結論と勧告、とりわけそれらの中の核兵器国に関する部分について、本文書で合意するように、具体的な指標及び時間枠を特定することを通じたものを含め、それらを履行する一層の、加速された努力が必要であることを認識する。」これらの箇所が今週の最終文書策定の過程で争点となっていくと思われるが、現時点では合意の見通しが見えてこない。これからはまさに外交交渉プロセスに入り、状況把握がさらに困難になるが、合意にむけての努力が続くことを期待したい。

(文責:中村桂子)

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第3報① 深まる対立 ~主要委員会Ⅰ報告をめぐって~(5月14日)

会議第三週の14日(木)午前11時、核軍縮問題を扱う「主要委員会Ⅰ」の報告書案が政府関係者に配布された。本ブログでは2回にわたってそのポイントを概説したい。

経緯
第二週目に本格化した再検討会議の議論は、3つの「主要委員会I,II,III」と、その下に設けられた「補助委員会I,II,III」(非公開)の会合が交互に開かれる形で進められてきた。Ⅰ(核軍縮)のテーマに関して言えば、第二週の金曜日に主要委員会Ⅰ、補助委員会Ⅰのそれぞれの議長(前者が2014年準備委員会議長であったエンリケ・ロマン=モレイ大使、後者がスイスのベンノ・ラグナ―大使)から、最初の報告書素案が出された。本ブログ第2報で伝えたように、核兵器の非人道性に対する認識を基盤とし、核兵器禁止の法的枠組みの必要性や時間枠を区切った核軍縮措置の要求を盛り込んだ「補助委員会Ⅰ」報告書案は、とりわけ5つの核兵器国(P5)の激しい修正要求を受け、3週目の12日(火)に「改訂版」として再提出された。

14日に出された「主要委員会Ⅰ」報告書案(以下「合体」報告書Ⅰ案)は、上述した8日付「主要委員会Ⅰ」報告書案と12日付「補助委員会Ⅰ報告書案・改訂版」の2つの素案をもとに、「合体版」として出されたものである。今後、他の主要委員会からも同様の「合体」報告案が出され、(場合によって改訂を経て)最終週である4週目のどこかの段階で3つのテーマを網羅した最終報告書案として一本化されていくことになる。

9ページにわたる「合体」報告書Ⅰ案は、「条約の履行状況に関する評価」(以下、「評価」。1~41節)と「今後の行動」(以下、「行動」。42節(1~20小節))の2つのセクションで成り立っている(そういったタイトルがあるわけではなく、内容として)。大きくは8日付「主要委員会Ⅰ」報告書案の内容が「評価」部分に、「補助委員会Ⅰ報告書案・改訂版」の内容が「行動」部分に反映されている。14日午後の議論(公開)でかなりの国が指摘していたように、「評価」と「行動」部分の内容には多くの重複があり、全体として冗長な印象は否めない。

核兵器国側の主張を多く反映
「合体」報告書Ⅰ案の内容を見ていこう。「核兵器国」「非核兵器国」双方の主張を受けた修正が随所になされているが、とりわけ「非人道性」「法的枠組み」「時間枠を定めた行動」の言及部分については、明らかに「核兵器国側の主張」を反映した点が多く散見された。ここではまず「非人道性」に関して紹介する。なお、中国の削除要求との関係で注目が集まっている「広島・長崎訪問」に関する部分はこの「合体」報告書Ⅰ案においては復活しなかった。

■「非人道性」
先週の素案を巡る議論の中で、フランスを筆頭に、P5からは厳しい意見が相次いだ。これらを受け、とりわけ非人道性の認識が国際社会の「共通理解」ととれる表現や、核兵器使用のリスクに対する認識を含め、この間の核兵器非人道性をめぐる国際議論の前進と成果に触れた箇所が軒並み修正・削除された。いうまでもなく、非人道性の議論は核兵器禁止の法的枠組みの必要性を訴える「土台」となるものであり、そこが大きく弱められる結果となった。

「評価」第29節では、8日付「主要委員会Ⅰ報告案」にはなかった2つの「非人道性」共同声明への言及が新たに盛り込まれた。しかし、8日付主要委員会Ⅰ報告案(23節)において「核兵器のもたらす受け入れがたい人道上の結末に関する広範な国際議論、なかでもこの問題に対する共通理解を深めたオスロ(2013年3月)、ナジャリット(2014年2月)、ウィーン(2014年12月)の会議について歓迎する」(以下、強調は筆者)と表現されていた部分は、「会議は、2010年~2015年の再検討サイクルの間での国際議論において、核兵器使用のもたらす壊滅的な人道上の影響に対する関心が多数の加盟国に広がったことを歓迎する。会議は、この問題に対する理解を増進させることとなった、オスロ(2013年3月)、ナジャリット(2014年2月)、ウィーン(2014年12月)で開かれた会議に留意する」と全体のトーンを弱めた表現に修正された。

次に削除部分であるが、以下の重要な4か所が削除された。
①8日付主要委員会Ⅰ報告書案(23節)にあった「核兵器の人道上の影響に関するオスロ、ナジャリット、ウィーン会議における事実情報に基づく議論は、人類の生存ならびに次世代の健康に対する重要な示唆とともに、核兵器の強大かつ制御不能な破壊能力及びその無差別性によりもたらされる受け入れがたい人道上の結末を強調した」。

②「評価」第30節は、8日付主要委員会Ⅰ報告案24節を基にしたものであるが、「会議は、核兵器のいかなる使用もがもたらす壊滅的な人道上の結末に対する深い懸念を想起する。会議は、国際会議で示されたものを含め、核兵器の人道上の影響をめぐる新たな情報や事実情報に基づいた議論を認識する」の箇所が削除。

③8日付主要委員会Ⅰ報告書案(25節)にあった「会議は、核兵器使用のリスクが増大していることに対する懸念を表明した。会議は、核兵器使用のもとらす破滅的な人道上の結末に鑑み、核兵器に関係するリスクがすべての人類にとっての懸案であることを再確認する」の箇所が削除。

④関連して、8日付主要委員会Ⅰ報告書案の26節にあった「会議は、核兵器使用の人道上の結末をめぐって新たな情報が提示されてきたこと、また、こうした情報が国際法に照らした核兵器の評価について重要な示唆を提起していることを認識する」の部分。同様に、「行動」第8節は「補助委員会Ⅰ報告書案」第6節とほぼ同文であるが、核兵器に関連するリスクが「多くの加盟国がこれまでに理解していたよりも大きい」の記述が削除された。

さらに、重要な修正部分を指摘したい。「行動」第1節の最後の一文、「会議は、この目的の実現までの間、核兵器が二度と使用されないことが人類の生存にとっての利益であることを強調する」は2度の修正を経て現在の形となった。8日に出された最初の「補助委員会Ⅰ報告書案」の前文2節目での表現は、「核兵器が、いかなる状況においても(under any circumstances)二度と使用されないことが人類の生存にとっての利益である」であった。これはスイス、ノルウェー、ニュージーランド、南アフリカ、オーストリアらが推進してきた非人道性「共同声明」に登場する表現である。本ブログ短信2で紹介したように、今回の再検討会議で出された最新の声明には、NPT加盟国の圧倒的多数である159か国が賛同を表明している。

P5の批判を受け、「補助委員会Ⅰ報告書案・改訂版」におけるこの文言は「70年近くにわたる核兵器不使用の記録が永遠に続くことは人類の生存にとっての利益である」に変更されていた。これは米国政府の演説や「NPTに関する日米共同声明」(4月28日)にも使われている表現である。非核兵器国から修正要求が相次いだことを受け、両者の間をとる形で「いかなる状況においても」を削除するという折衷案に至ったと推測される。この「いかなる状況においても」という文言は、核兵器不使用の宣言を示唆するという理解から、過去の非人道性「共同声明」において日本政府が共同声明への不賛同の理由に挙げたことでも知られている。

このように、状況は重要な項目を巡り、「核兵器国」(と核の傘にある非核保有国)対「その他の非核保有国」の対立がより深まっている点が懸念される。~続く~

(文責:中村桂子)

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短信4 (原子力平和利用)「奪いえない権利」か「機微な技術」の拡散防止か:イラン合意が示唆するもの

第三委員会で熱弁をふるうイラン代表
(2015年5月12日 撮影:RECNA)

NPT再検討会議も2週間が終わり、最終文書素案が提出され、第3週からは補助委員会を中心に最終文書に向けての交渉がいよいよ本格化する。原子力平和利用(第三委員会)の補助委員会では、米国の見解にあるように「脱退」を巡る議論が行われているようだ。今後どのような合意につながるのか、興味深い。これ以外は、福島事故を踏まえての安全性向上、核セキュリティの向上等も議論されているが、新しい提案はまだ見えてこない。

しかし、第三委員会ではなによりも、NPT4条に規定される「奪いえない権利」を巡る議論が中心である。今回は、その中でも特に存在感を示すイランに注目してみたい。イランは、4日(火)の冒頭で「非同盟およびその他諸国グループ(Non Aligned Movement: NAM)」の代表として、非常に強い調子で、「奪いえない権利」について演説を行った。筆者の注目点は、先進国と途上国間の協力条件、中でも核兵器転用可能な核物質(高濃縮ウランとプルトニウム)に関わる「機微な技術(ウラン濃縮、再処理)」を含む核燃料サイクルの取り扱いであった。この点でNAMの主張は以下に象徴される。

「どの締約国も、第4条に規定される『奪いえない権利』に部分的にでも障害を与える措置は、締約国間の権利と義務の微妙なバランスに深刻な影響を与え・・条約の目的にそぐわないものである(項目3)」

「我々グループは、一部の国が追加議定書批准を原子力輸出の条件としていることについて深刻な懸念を表し、そのような条件は即座に排除するよう要求する(項目5)」

「我々グループは、以下の点をもう一度再確認する。各締約国は各国の必要条件に合わせ、かつNPTに基づく権利と義務に矛盾しない範囲で、それぞれのエネルギー政策や核燃料サイクル政策を決定する主権を有する、特に、それは平和利用目的の全面的な核燃料サイクルを国内にて開発する奪いえない権利を含むものである(項目8)」

項目3はこれまでもイランをはじめとするNAMが主張してきたことであり、福島事故以降の安全性向上を巡る新たな条件についても、強い反対を示していることにつながる。

項目5は、日本を含む原子力供給国グループが追加議定書を輸出条件として導入したことに対する批判であり、NPT上は追加議定書が義務でないことを強調した見解である。項目8は、まさにイランが欧米6カ国との長い交渉を続けている最大の課題であり、ウラン濃縮・再処理という機微な技術の拡散を防止したい先進国側との対立が浮き彫りになっている。

この文書と、イランと欧米6カ国が長い交渉の結果、たどり着いた仮合意を比較すると、その差は驚くほど大きく、交渉の困難さを容易に想像させるほどのものである。仮合意の内容は、濃縮、再処理、透明性の向上の3点で、重要な点は以下のようにまとめられる。

①ウラン濃縮能力については、現状の約3分の1に削減し、今後10年間は次世代遠心分離機の導入も、新たな濃縮施設の建設も行わない。濃縮度を今後15年間は3.67%を上限とし、国内の低濃縮ウラン在庫量を300kgにまで削減する

②重水炉は、兵器級プルトニウムの生産ができないよう設計を見直し、既存の炉心・機器は解体・撤去する。使用済み燃料は今後とも無期限で再処理を行わず、すべて国外に搬出する

③透明性向上については、追加議定書を批准し、IAEA査察をより広い範囲で受け入れる。

これらの合意は、米国がもともと要求していた「濃縮ゼロ」から見ると米国側が譲歩したように見えるが、前述のNAM演説と比較すると、イラン側もかなりの譲歩を行ったといっても過言ではない。特に、②の再処理については、他の条件が期限付きであるのに対し、「無期限に再処理を行わない」とした点が注目される。

NPT再検討会議のサイドイベントで、国際核物質専門家パネル(IPFM)が主催した「イラン合意とのその後」と題するセッションでは、核交渉に当たったイランの元政府高官が以下のように述べていたのが印象的だった。

「米国側が『ゼロ濃縮』から『平和利用の権利を認める』立場に転換し、『イランの主権を尊重して対等の立場で交渉する』ことで、イラン側も交渉に前向きに転換することができた。イランとしては追加議定書の批准は全く問題なく、また今回の合意が将来の中東非大量破壊兵器地帯での原子力平和利用の在り方に示唆を与えるものであってほしい。」

このイランの動向を見ていると、「奪いえない権利」を認めつつも、「機微な技術の拡散防止」については、条件付で合意が十分に可能であり、その両立も決して不可能ではないと思わせるものであった。機微な技術をめぐる多国間アプローチなど、今後NPTにおける合意が可能かどうか。現時点での見通しは厳しいが、少しでも進展がみられることを期待したい。

(文責:鈴木達治郎)

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第2報 先はまだ見えない

会議第二週目の8日(金)夕方、3つの主要委員会(Main Committee)からの報告書素案が政府関係者に配布された。再検討会議の最終文書策定に至るプロセスにおける最初のたたき台となるものである。

「一般討論」(本ブログ第1報参照)に続き、第一週目の金曜に始まった主要委員会は、「主要委員会Ⅰ」(核軍縮、安全の保証問題など)、「主要委員会Ⅱ」(核不拡散、保障措置、非核兵器地帯など)、「主要委員会Ⅲ」(核エネルギーの平和利用、脱退問題など)の3つで構成され、テーマ別の会合を一週間にわたって重ねてきた。それぞれの主要委員会には「補助委員会」(subsidiary body)が設置され、より具体的なサブテーマに特化した議論が行われた。たとえば、主要委員会Ⅰの補助委員会(補助委員会Ⅰ)においては、「核軍縮」「ビルディング・ブロック(ブロック積み上げ。包括的核実験禁止条約(CTBT)発効など、核軍縮のさまざまな具体的措置を同時並行的に実施するアプローチを指す)、「効果的な措置」の3つのセッションが設けられた。本ブログの短信1に書いたように、「効果的な措置」セッションは、核軍縮を謳ったNPT第6条の完全履行に向け、核兵器禁止条約を含めた法的アプローチの議論をテーブルに載せることを狙った「新アジェンダ連合」(NAC)の提案を受けて実現したもので、従来にはないサブテーマである。その意味では前進が図られたと言える。

ただ残念なことに、今週行われたすべての補助委員会は「非公開」、すなわち各国政府代表以外の傍聴を不可とするものであった。NGOからは、すべての議論が市民社会にも開かれるべきであるとの要求が繰り返されていたが、それは叶わなかった。

報告書案の話に戻ろう。これらは各委員会での議論を受け、それぞれの議長の責任でまとめた文書である。配布は各国政府代表のみに限定されたが、NGOの情報開示努力により、一部がウェブにアップされた。4つの素案(主要委員会Ⅰ、Ⅱ、Ⅲからそれぞれ一つ、補助委員会Ⅰから一つ)が5月8日付で出されたとみられる。

これらの素案は、今後各委員会でのさらなる検討を経て委員会報告にまとめられ、全体会議にあげられることになる。そして再検討会議議長の下で最終文書案として一本化され、各国の駆け引きによる多くの修正を経たのちに最終合意文書となっていく(合意に至るとすれば、であるが)。言うまでもなく、この過程において、とりわけ核兵器禁止の法的議論の言及に核兵器国らが反発することは必至であり、素案における文言が大きく変更することは十分考えられる。実際、過去の最終文書策定過程においても、核兵器国の「横やり」によって重要な表現が薄められるという局面が多々見受けられた。しかし、まず重要なことは、この段階の素案においてこの間の法的アプローチの議論が十分反映されることであり、どこまでの内容が盛り込まれるかが注目された。

その意味で、補助委員会Ⅰの報告案は期待を裏切らないものであったと言える。「補助委員会1:実質的な要素に関する素案」と題された文書には、2010年以降の議論の焦点であった核兵器の非人道性に対する認識が随所に述べられた。その上で、そうした認識が「第6条の完全履行に向けた喫緊の行動を駆り立てている」とし、とりわけ法的アプローチの必要性がNACの提案を取り入れつつ次のように述べられた。

「加盟国の大多数が、第6条の完全履行には法的枠組みが必須であると考慮していることに留意し、会議は、すべての加盟国が、遅滞なく、国連軍縮機構の枠組みにおいて、核兵器のない世界の達成と維持に必要とされる法的条項を特定し、詳述していく包摂的なプロセスに関与していくことを奨励する。これらの法的条項は、さまざまなアプローチを通じて制定されうる。そうしたアプローチには、『単独型』法的文書、すなわち『簡潔型の核兵器禁止条約【Nuclear Weapon Ban Treaty】』や、特定の時間枠において核兵器を廃絶する段階的計画を含む『包括的な核兵器禁止条約【Nuclear Weapon Convention】』 などの形式があり得る。また、主たる禁止、義務、ならびに時間枠をともなった、不可逆的かつ検証可能な核軍縮に向けた枠組みを確立する、『相互に支え合う複数の法的文書による枠組み合意』や、『その他の取決め』が含まれる。」(項目17)

また、補助委員会Ⅰの報告書案において、次のように時間枠を定めた行動が求められている点についても、今後の議論の推移を注目していきたい。
・START条約失効(2018年)までに、非戦略核兵器を含めた保有核兵器のさらなる削減に向けた米ロ交渉の締結がなされることを要求(項目3)。
・2020年までの次の再検討サイクルにおいて、世界的な核兵器備蓄の早期削減の達成に向け、米ロが他の核兵器国を関与させていくことを要求(項目3)。
・できるだけ早期に、遅くとも2020年再検討会議までに、核兵器を安全保障ドクトリンから未だ排除していないすべての加盟国が、核兵器の先行使用を想定した概念、ドクトリン、政策を放棄することを奨励(項目3)。
・2020年再検討会議までに、非核兵器地帯の関連議定書に批准するとともに、あらゆる保留事項や解釈宣言を撤回することをすべての関係各国に奨励(項目13)。

なお、今回の再検討会議において、核兵器禁止の法的枠組みの問題とならんで焦点化している「中東非大量破壊兵器地帯」をめぐる議論であるが、入手した5月8日時点の主要委員会Ⅱの報告書にはその部分が一切触れられていなかった。報告書案のまとめ方において各国の考え方に相当の隔たりがあると考えるべきであろう。

(中村桂子)

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短信3 混迷する中東非大量破壊兵器地帯構想:第二委員会(核不拡散)

議場オブザーバー席の ISRAEL の国名プレート
(2015年5月4日 撮影:RECNA)

NPT再検討会議も二週目に入り、三つの主要委員会での議論が始まった。その中で第二委員会は、核不拡散、民生用原子力関連物資の軍事転用を監視する保障措置、NPTの普遍性および非核兵器地帯をテーマとして議論が進められている。この中で、核不拡散と保障措置については、基本的に現在のIAEAによる保障措置の維持、強化と原子力関連物資および技術の輸出管理について意見が交わされている。しかし、その内容は核軍縮と核不拡散のバランスや、不拡散のための措置が原子力の平和利用との両立など、むしろ第一委員会や第三委員会と重なる部分が多く、議長からも他の委員会と重複しないよう議論を整理する意向が示された。また、テロ組織のような非国家主体に対する不拡散措置の重要性に言及する国も目立ったが、NPTは本来国家間での不拡散を念頭において成立した条約であり、非国家主体への拡散の問題は想定されておらず、非国家主体への大量破壊兵器とその運搬手段の拡散に関する2004年の国連安保理決議1540[i]に依拠して意見を述べる国がほとんどで、NPTの枠内で積極的に議論を深めようという姿勢には乏しい印象であった。

現時点で各国とも多くの時間を割いて論じているのは、NPTの普遍性の確保と中東非大量破壊兵器地帯の問題である。普遍性の確保に関しては、中東諸国および非同盟諸国がイスラエルの姿勢を強く非難し、また、初日に演説した30の国と国家グループの内、10カ国ほどが北朝鮮の姿勢を批判した。インド、パキスタンについては、非同盟あるいはイスラム協力機構(OIC)のメンバーとして外交的に近い国も多く、名指しで厳しい批判が出ることはなく、NPTに加盟せず、IAEAの保障措置を受け入れていない国に対し、原子力分野で協力することはNPTに反するという一般論の枠内で間接的に言及する国があった程度である。

中東非大量破壊兵器地帯については、第二委員会の冒頭にファシリテーターのヤッコ・ラーヤバ大使(フィンランド)から、中東非大量破壊兵器地帯に関する国際会議の開催へ向けての進捗状況、特にスイスで五回にわたって行われたアラブ諸国、イスラエル双方を含む関係国による非公式協議について報告がなされ[ii]、主に先進諸国からはラーヤバ大使の精力的な活動を評価する声が出された。しかし、中東諸国と非同盟諸国の大半はラーヤバ大使の報告と中東非大量破壊兵器地帯をめぐる現状に対し、「1995年のNPT無期限延長の条件だったはずの問題が20年経っても実質的な進展がない」として批判的な姿勢を示し、特に国際会議の開催に同意していないイスラエルに対し厳しい非難を行った。ちなみにイスラエルは今回の再検討会議に20年ぶりにオブザーバーとして参加しており、議場に代表が姿を見せていただけでなく、中東非大量破壊兵器地帯に関する国際会議の開催へ向けて前向きに取り組んでいる旨の文書を提出している[iii]

アラブ諸国の中でも、エジプトは明確な期限も、具体的な内容も定義しないままでの非公式協議の継続は無駄であり、むしろ中東非大量破壊兵器地帯の実現を遅らせたとしてラーヤバ大使のアプローチを批判、2010年から始まった再検討プロセスが2015年の再検討会議で終了したことにより、2010年にファシリテーターに任命されたラーヤバ大使の任期は完了したとして実質的にファシリテーターの解任を求めた[iv]。そのうえで、アラブ諸国および非同盟諸国が求めているように、アラブグループの提案[v]に基づいて、今回の再検討会議の終了後180日以内に国連事務総長が自ら招集者となり、中東非大量破壊兵器地帯設置へ向けての国際会議を招集するよう強く要求した。おそらくこの問題が今回の再検討会議の成否を決めるうえで、極めて重要な位置を占めそうだ。議場でも、オブザーバー席のイスラエル代表へ近づき、言葉を交わす代表も散見された。残念なことに、中東非大量破壊兵器地帯を含む地域的な問題は、非公開で開催される補助委員会(Subsidiary Body)で検討されることになっており、我々が傍聴することはできない。しかし、問題が具体的で、なおかつ短時間での解決が要求されているだけに、議論が難航することは容易に予想できる。

(文責:広瀬 訓)

[i] http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/1540(2004)(英語)
[ii] http://papersmart.unmeetings.org/media2/4658104/npt-conf2015-37.pdf(英語)
[iii] http://papersmart.unmeetings.org/media2/4658077/npt-conf2015-36_towards-a-regional-dialogue-in-the-middle-east-an-israeli-perspective-by-israel.pdf(英語)
[iv] http://statements.unmeetings.org/media2/4658196/egypt-en.pdf(英語)
[v] http://papersmart.unmeetings.org/media2/4658061/npt-conf2015-wp33_working-paper-by-bahrain-on-behalf-of-the-arab-group.pdf(英語)

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第1報 外熱内冷? 一般討論を終えて

4月26日のサイドイベントでナガサキ・ユース代表団のブースを訪れたアンジェラ・ケイン国連軍縮担当高等代表
 (撮影:RECNA)

会議の第一週に予定されていた「一般討論」が終わった。「一般討論」とは、会議に参加する各国代表が、それぞれ自国の立場や方針を表明する場であり、いわば「顔見せ」のような色彩の強い部分である。日本は岸田外務大臣、アメリカはケリー国務長官が演説したように、各国の大臣クラスによる演説も珍しくない。しかし、実際には、各国とも原則論や政治的なアピールが先行し、具体的な内実には乏しいという印象は拭えない。特に今回は、各国とも淡々と従来の立場を繰り返す例が多く、正直なところ、議論は低調で、議場が冷え込んだまま終了したという感じが強い。

核軍縮に関しては、大方の予想通り、核兵器の大幅な削減の実績を強調する米ロ、具体的な削減数を示す英仏と、期限を決めての核兵器禁止の法的な枠組みを求める非同盟諸国や核軍縮の効果的措置への法的アプローチの議論を求める新アジェンダ連合の間の溝は埋まる気配をまだ見せていない。それ以外の非核兵器国に対する核兵器の使用もしくは核兵器による威嚇の禁止や、いわゆる「核の傘」とNPTの整合性の問題などでも、核兵器保有国およびその同盟国と主に非同盟諸国との間の意見は対立したままであり、容易に妥協点が見いだせるような状況ではない。

核兵器の人道的な側面については、演説を行ったほとんどの国は何らかの形で言及している。それを具体的にどのように核軍縮に反映させていくのかという点では、まだ方向性が定まっているわけではないが、いくつか注目すべき声明もあった。一つは国家代表としては最後から二番目に登場したマラウィの声明である。[i]マラウィの駐在武官による演説は、広島・長崎を想起し、「我々はヒバクシャの訴えが聞こえない振りをして、核兵器を近代化し、いつでも使えるように準備し、世界を危険にさらしてきた」と語り始め、「我々は核兵器のもたらす人道的な結末に気づかない振りを続けてきた。国家も人類も核兵器によって守ることはできない、核兵器は、我々が守る振りをしている同じ人間を脅かすものである」と述べた。アフリカの現役軍人にまで被爆者の声がしっかりと届いていたことが非常に印象深かった。

もう一つは「軍隊を捨てた国」コスタリカの声明で[ii]、まず現在の国際的な議論の流れとして「国家の安全保障」に「人間の安全保障」が取って代わるべき時に来ているとした。そして時代遅れとなった「国家の安全保障」のために大量の核兵器が「人間」を脅かす現状を否定し、真の平和と安全保障は武力によって得られるものではなく、平和を求める多くの人々の願いを民主的に実現することによって成立するとした。さらに、それを具体化する手段として国際法があるとし、人道性から核兵器廃絶へ至る論理を明確に提示したのである。これらの意見が直ちに今回の会議の行方を左右するというわけにいかないであろうが、核兵器を論理的に追いつめてゆく一つの根拠としては注目したい。

また、核不拡散については、やはり非国家主体による核テロの可能性のような問題が広く指摘され、核兵器と核関連物質、技術の管理の重要性で各国の意見は一定の方向性を見出しているようである。原子力平和利用に関しては、福島第一原発の問題に言及し、原子力の安全性の確保について言及する国も散見されたが、「平和利用の推進」という方向性に疑義を挟む国は無かった。目立ったのは、医療、保健や環境、農業などの「非エネルギー分野」での放射線の活用を重視する開発途上諸国からの要求であった。国際原子力機関(IAEA)は文字通り「原子力エネルギー」を本来扱う国際組織であり、非エネルギー分野での国際協力が十分ではなかったという指摘はある程度事実であろう。そして、開発途上国がその充実を求めることはむしろ当然であるが、日本から傍聴に訪れている人の中には、開発援助の必要性について次々と意見が出ることに戸惑うような反応も見られた。NPT再検討会議はもちろん核軍縮にとって極めて重要な国際会議である。しかし、核軍縮のためだけに開催される会議ではなく、「原子力の平和利用」も核軍縮と同じく主要テーマとして扱われているという事実は、日本ではなじみが薄い。NPT再検討会議は、核軍縮と平和の問題だけでなく、「開発と環境」という、世界が抱えるもう一つの深刻な問題にも取り組まなくてはならないのである。

一般討論が全般的に低調なまま終了した反面、議場の外は各種のイベントで盛り上がっている。各種の集会やパレード、被爆者の体験講話のような催しから、世界各国の政府高官や政治家、専門家を招いての各種のフォーラムや講演会まで、多種多様な企画が連日開催され、熱心な議論が展開されている。各国の代表や政府関係者が参加していることも多く、中には個人の立場で自国の方針を堂々と批判するような関係者を見かけることすらある。このようなイベントでは、議長として多忙を極めているはずのタウス・フェルキ大使や国連のアンジェラ・ケイン軍縮担当高等代表の姿を間近に見る機会もある。各国政府の代表だけでなく、様々な立場の人々の意見に直接耳を傾けるフェルキ大使とケイン高等代表の姿勢は特にNGO関係者の間では高く評価されている。核兵器廃絶を求めて世界中からNPT再検討会議の場に参集した市民の熱意が二人を通して会議の行方に少しでも反映されることを期待したい。

(文責 広瀬 訓)

[i] http://www.un.org/en/conf/npt/2015/statements/pdf/MW_en.pdf(英語のみ)
[ii] http://www.un.org/en/conf/npt/2015/statements/pdf/CR_en.pdf(英語のみ)

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短信2 2つの非人道性共同声明(5月1日)

4月28日にオーストリアのクルツ外相が159か国を代表して読み上げた「核兵器の人道上の結末に関する共同声明」(日本語暫定訳英文)に続き、4月30日にはオーストラリア(以下、混乱を避けるために「豪」と表記する)のギリアン・バード国連大使が「核兵器の人道上の結末に関する声明」(日本語暫定訳英文)を発表した。その内容は、前回2014年秋の国連総会の場で出されたものとほぼ変わっていない。

「核兵器の人道上の結末」を表題に掲げた2つの共同声明が居並ぶ形で登場したのは2013年秋の国連総会が最初であった。翌14年総会も同様の形であったから、今回で3度目となる。表題こそ同じであるものの、スイス、ノルウェー、オーストリア、ニュージーランドらが主導し、核兵器非合法化への動きを視野に入れつつ進められてきた前者と異なり、後者は「安全保障と人道」の両面の重要性を主張し、「(核軍縮に向けた)近道は存在しない」と、いわば「核の傘」の下の国々に受け入れやすい路線を打ち出してきた。事実、この豪声明に賛同している26か国は、米同盟国(豪、日本)、NATO加盟国(ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、エストニア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、トルコ)といった顔ぶれで、ジョージア、フィンランドの2国を除き、いずれも拡大核抑止に依存する政策をとり続ける国々である。賛同国数の推移でいえば、1回目17か国→2回目20か国→3回目26か国と漸増と言えよう。

このように、相反する軸を持つと言える2つの声明であるが、両者にともに賛同している国が2つ存在する。日本とフィンランドだ。非人道性に関する政府発言の中で、日本はこのテーマが国際社会のさらなる分断を招くのではなく、核軍縮に対する考えの異なる国々を繋げる「触媒」であるべきとの主張を繰り返している。確かに、豪声明には「核の傘」依存国を非人道アプローチに巻き込んでいく手段として評価できる面はある。しかしながら、非人道性に注目する多くの国が、「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する」(「オーストリアの誓約」より。日本語暫定訳英文)ことがその論理的帰結であると主張する中で、「日本はまた、核兵器のない世界の達成に向けた実際的で具体的なアプローチを支持し、我々が現在直面しているいっそう厳しい安全保障環境を念頭に、適切な安全保障政策をとり続ける必要性を再確認する」(5月1日、主要委員会Ⅰでの佐野利男軍縮大使の発言。英文)と述べるように、非人道性の重みを語りながらも「核の傘」依存の現状を肯定することには矛盾と限界があるのではないか。

(中村桂子)

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短信1 新アジェンダ連合(NAC)提案はブレークスルーを生むか?(4月28日)

第0号で紹介したように、今回の再検討会議の注目点の一つは、「核兵器の非人道性」に注目した「核兵器禁止に向けての法的枠組み」についての議論がどれだけ進むか、にある。この点に関して、ここでは新アジェンダ連合(New Agenda Coalition、NAC。ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、南アフリカ、ニュージーランドの6か国で構成)が行っている提案について紹介したい。1998年に旗揚げしたNACは、時宜を得た柔軟な戦略で核兵器国に核軍縮努力を迫ってきた指導的勢力である。核兵器国による核兵器完全廃棄の「明確な約束」を含む2000年再検討会議の13項目合意を実現させた立役者としても知られている(当時はスウェーデンを含む7か国)。

会議初日(27日)午後の「一般演説」(General Debate)において、NACを代表して登壇したニュージーランドのデル・ヒギー大使は、「(今回の再検討会議が)核軍縮における意思決定と前進に向けた転換点となるべきだ」と力強く述べ(英文)、NAC提出の2つの作業文書(NPT/CONF.2015/WP.8NPT/CONF.2015/WP.9)を紹介した。「NPT第6条」と題された後者(日本語暫定訳英語)は、同条項が求めるところの、核軍縮に向けた「効果的な措置」(effective measures)を前進させるため、どのような法的な選択肢がありうるかを検討しようと各国に提案するものである。

参考までに、核軍縮義務を規定したNPT第6条の条文を再掲しておこう。
「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」(強調は筆者)

NACは、「効果的な措置」を前進させる法的アプローチについて、あらゆる選択肢を排除せず、まずはそれらをテーブルにのせて議論することを主張している。非人道性の議論が盛り上がる一方、核保有国や核の傘の下にある国々が条約交渉につながる動きを警戒し、「ステップ・バイ・ステップ」の段階論に固執し続ける中で、現状の硬直状態を打開しようとの画期的な試みである。核兵器禁止条約に反対する勢力は、法的議論が「NPTを中心とした現在の核不拡散努力を損なわせる」との主張を崩さない。これに対して、NACは法的な議論こそがNPT第6条の実現に向かうものであり、NPTの目的にまさに合致するものだ、と反論している。この点が、「効果的な措置」論の最大のポイントと言えるだろう。

NACはすでに2014年準備委員会に提出した作業文書の中で、法的アプローチの4つの選択肢を紹介している。①「包括的な核兵器禁止条約(Nuclear Weapon Convention)」、②「簡潔型の禁止条約(Nuclear Weapons Ban Treaty)」、③「相互に支え合ういくつかの条約による枠組み」、④「前述3つの混合型」である。今回2015年に提出された作業文書では、選択肢を①②のような「単独型(stand-alone)」と③のような「枠組み協定型」に整理し、それぞれのメリット、デメリットを述べている。

この議論をNACは今回の会議でいかに進めようとしているのか。NACは以下の2つの具体的な提案を行っている。

1.「主要委員会Ⅰ」の下部組織(subsidiary body)において、「効果的な措置」を議論するセッションを開催する。
2.NPT再検討会議以降も、国連総会などあらゆる核軍縮協議の場で、「効果的な措置」の議論を前進させるための適切なフォローアップをするという「決定」を再検討会議で行う。

1の提案については、NAC諸国の働きかけを受け、現在検討が進んでいる段階であるとさまざまな情報筋から聞いている。主要委員会Ⅰの議論がスタートするのは来週頭であり、間もなくその行方がわかるだろう。

非人道性をめぐる動きについては、会議2日目(28日)にオーストリアのセバスチャン・クルツ外相が読み上げる形で、6回目となる「非人道声明」も発表された(日本語暫定訳英語)。賛同国は前回より微増となる159か国である。また、「オーストリアの誓約」文書の賛同国数が76(4月28日現在)に上ることがオーストリア政府から発表された。「オーストリアの誓約」(日本語暫定訳英語)も、NPT第6条の核軍縮義務の完全履行に向け、「核兵器の禁止及び廃棄に向けた法的なギャップを埋めるための効果的な諸措置を特定し、追求する」ことを求めている点でNAC提案と軌を一にするものである(しかしNAC6か国のうち、ニュージーランドのみ「オーストリアの誓約」に賛同していない点は興味深い)。同誓約に賛同した76か国の大半は小国を含む発展途上国であり、NATO加盟国を含め「核の傘」の下の国々は未だ背を向け続けている。「効果的な措置」の議論を求めるアプローチがブレークスルーを生むか否かの鍵を握るのは非核兵器国、とりわけ「核の傘」の下の国々が今後どれほど積極的になれるかにかかっていると言えるだろう。

今回の再検討会議の行方について、確かに悲観的な見方は多い。しかし、核兵器の非人道性を根底に、法的禁止につながる新しい局面を拓こうとの懸命な努力が現場で続けられていることもまた事実である。こうした動きを丹念に紹介していきたいと思う。

(中村桂子)

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第0報 2015年再検討会議の注目点は?

再検討会議が開かれるニューヨーク国連本部前にて
(2015年4月24日 撮影:RECNA)

 

いよいよ2015年NPT再検討会議が幕を開く。会期は2015年4月27日(月)から5月22日(金)という長期間にわたる会議である。被爆70年に開催される今回の会議について、前評判によると、残念ながら画期的な成果はあまり期待されていない。しかし、それでも停滞している核廃絶に向けて、新たな展開の契機となる可能性は十分にある。会議前から諦めているわけにはいかない。

過去、RECNAはNPT再検討会議準備委員会の内容を現地から逐次分析して「NPTブログ」として情報発信を続けてきた。今年のNPTブログは、会議の規模も大きいことから、毎週末に会議のポイントを「NPTブログ」として報告するとともに、「核軍縮」「核不拡散」「原子力平和利用」というNPTの3本柱に沿って、各教員が自らの専門分野に焦点を当てた「短信」を、適宜ブログに掲載する体制をとることにした。全体の動きと個々の重要課題の動きをバランスよく届けられるようにとの意図である。

会議前の「第0報」として、今回のNPT再検討会議の注目点を整理しておこう。

まず、注目された議長は、アルジェリアのタウス・フェルキ大使となった。大使は多忙な中、会議直前の4月4日に長崎を訪れ、原爆資料館や爆心地を訪れた。RECNAやナガサキ・ユース代表団のメンバーとも面談する機会があった。重要な再検討会議の前に被爆地を訪れ、ヒバクシャの声に耳を傾ける機会を持っていただいたことは、会議にとっても重要な要素になると期待したい。

会議の論点として注目される課題は次の4点と考えられている。

第一に前回の2010年の最終合意文書をどの程度履行しているかに注目したい。前回の最終文書には64項目の行動計画があげられているが、なかでもアクション1に、「すべての加盟国は、NPT及び核兵器のない世界という目的に完全に合致した政策を追求することを誓約する」と書かれている点が重要だ。これは核兵器国のみならず、日本のような非核兵器国にも当てはまるものだ。核兵器国は最近核軍縮のペースが落ちており、特に近代化により「量」は減っても「質」の面で核軍縮といえないような動きを見せている。このような核兵器国の動きをどう評価するかも注目したい。また、日本がメンバーである「軍縮・不拡散イニシャティブ(NPDI)」の重要な提案の一つである「透明性」の向上が、どの程度実現するかも注目される。

第二に、「核兵器の非人道性」に注目した「核兵器禁止に向けての法的枠組み」についての議論がどれだけ進むか、が核廃絶への道筋をつける意味で極めて重要だと考えられる。核兵器国は、依然「法的拘束性」をもった核兵器の禁止や廃絶へのコミットに難色を示しているが、どれだけ誠意を見せるのか。また、非核兵器国の中でも立場の異なる国もあるが、そういった立場を超えてどれだけ非核保有国が核兵器国への圧力を強められるか、が注目される。

第三は、中東やウクライナ情勢など、地域レベルの安全保障の問題が核の脅威や核不拡散に及ぼす影響が懸念される。会議直前のロシアによる「核使用準備」発言が、非核兵器の核抑止への依存増加といった、核廃絶に逆行する動きにつながらないか。また、北東アジアの安全保障と非核化への道筋がどれだけ議論されるかも注目される。RECNAの提言「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」は、こういった厳しい安全保障環境の中で、どの程度説得力を持って迎えられるか。8日(金)に開催される公開フォーラムが注目される。

第四に、イラン問題をはじめ、原子力平和利用の権利と核不拡散の両立の在り方が注目される。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故後、初めてのNPT再検討会議であり、原子力の安全性や核テロリズムの脅威についての議論も起きる可能性がある。また世界に蓄積している核兵器に利用可能な核物質やウラン濃縮・再処理といった機微な技術拡散問題も重要な課題だ。

最後に、日本政府と市民社会の動きについても述べておきたい。2010年の合意文書の履行という意味でも、日本が核抑止に依存しない安全保障政策への転換を示す義務がある。その一つの有力な選択肢である「北東アジア非核兵器地帯」について、是非再検討会議の合意文書に組み入れるよう日本政府の努力を期待したい。また、今年も数多くのNGO、非核自治体、被爆者団体等が会議の周辺でイベントを行う。直接外交の舞台に参加するわけではないが、こういった市民社会の声は間違いなく外交の舞台に届いている。被爆地からの「長崎を最後の被爆地に」という声がNPT再検討会議の成功に結びつくことを祈りつつ、会議の動向を注目していきたい。

(文責;鈴木達治郎)

本年のブログは、週1回程度、毎週末を目安に「週報ブログ」を、鈴木達治郎、広瀬訓、中村桂子の共同執筆で掲載する。また、それ以外に、それぞれのテーマ(核軍縮(中村)、核不拡散(広瀬)、原子力平和利用(鈴木))に焦点をあてた「短信」を適宜、それぞれ担当者の名前で掲載する予定。

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