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2023年6月22日

REC-PP-17 改訂版

核兵器問題の主な論点整理:国際政治・安全保障編 改訂版(2023年6月)
吉田 文彦, 中尾 麻伊香, 西田 充, 向 和歌奈, 河合 公明, 堀部 純子, 樋川 和子, 遠藤 誠治, 牧野 愛博

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 本ポリシーペーパーは 同題名で2023年4月に刊行したもの の改訂版です。「4 核不拡散の多面的な課題」を新たに追加挿入したほか、「2 国際政治と核抑止・核軍縮の複雑な関係 」に「核共有」「ミサイル拡散と核軍縮の関係」の2本の論考を加えています。

★ 改訂版の主な要点は こちら


 2021年1月に核兵器禁止条約(TPNW)が発効した。被爆地を含め、世界の多くの国々で「核のない世界」を望む人々にとって歴史的な一歩であった。しかしながら、核抑止はこの世界の安全保障政策に深く広く根を張っており、核抑止依存諸国(核を持つ国、核の傘国)はTPNWに反対の、あるいは慎重な態度をとり続けている。
 理想主義(TPNWグループ)と現実主義(非TPNWグループ)が鋭く対峙する構図となり、核不拡散条約(NPT)を基盤にした核軍縮・不拡散によって国際安全保障、国家安全保障の安定化をはかるという、ここ半世紀の核問題のグローバル・ガバナンスの根幹さえ揺るがしかねない事態となっている。
 加えて、ウクライナを侵略したロシアが「核の恫喝」を繰り返して核戦争リスクを高め、米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止も宣言した。米国と中国の対立関係も強まって、核軍縮の行方はすっかり視界不良に陥ってしまった。
 そうした中で、日本学術振興会の科学研究費助成(基盤研究B)による研究プロジェクト「安全保障を損なわない核軍縮」(研究代表者・吉田文彦)を進めてきた。核抑止と核軍縮に関する理想主義・現実主義の双方に存在するバイアスの矯正作業を経て、両者の間の「最大公約数=共有可能な中庸領域」を見定め、「安全保障を損なわない核軍縮」に向けた最適解と重点政策群を提示する。これを主たる目的に研究を続けてきた。
 最適解模索のプロセスで必要なのは、様々な分析・論評を踏まえた核兵器や核抑止に対する「総合的な評価」である。研究チームはここ1年余り、「総合的な評価」のための情報の収集と整理、多様な考え方に関するヒアリングや文献調査、それらに基づく包括的な意見交換に取り組んできた。
 ここでの成果を研究チームの外でも活かしてもらうのがいいのではないか。そんな思いから、核兵器や核抑止などに関わる主要な論点を整理して、レクナ・ポリシーペーパーとして刊行することにした。研究プロジェクト全体では多岐にわたる論点を国際政治・安全保障・核軍縮、核不拡散、国際法の3分野に分けて考察してきたが、ここではまず、核兵器と国際政治・安全保障・核軍縮の分野における主な論点を著すことにする。
 核兵器の問題に関心のある大学生、大学院生、市民の皆さんの目に触れて、何がしかご参考になればと願っている。

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★ 既刊のレクナポリシーペーパーは こちら

 

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2023年6月5日

『世界の核物質データ』2023年版   全リスト

2023年版の『世界の核物質データ』ポスターを公開しました。サムネイル画像をクリックしてご覧ください。[PDF: A3サイズ印刷可]

日本語版 英 語 版 韓国語版
       
2023年6月 FissileMat_2023_JPN FissileMat_2023_ENG FissileMat_2023_KOR

 今年の特徴は、昨年減少した総在庫量が分離プルトニウム量の増加により、ふたたび増加に転じたことです。高濃縮ウラン(HEU)の総在庫量は1,260トン、19,680発分(昨年より6トン、約80発分増加)となりましたが、これは「その他の非核保有国」の数値の扱い方の違いによるもので、実質的には増加ではありません。しかし、分離プルトニウムは全体的に増加傾向が続き、民生用のプルトニウム(主にフランス)が増加したため、総在庫量は552トン、92,000発分(昨年より8トン、約1,400発分増加)となりました。その結果、総量は111,680発分となり昨年(110,200発分)より約1,480発分の増加となりました。(詳細は下記「資料1」以下参照)
 

◆ ポスターの『解説しおり』も公開しました。こちらからご覧いただけます。

◆ 右の2つの画像はクリックすると拡大します。以下のPDF版も閲覧・ダウンロードできます。

核物質の保有マップ(PDF)

核物質の保有総量(PDF)

◆ 核物質保有マップの元となったデータは次からご覧いただけます。
分離プルトニウム保有量一覧(2023年6月)
高濃縮ウラン保有量一覧(2023年6月)

◆ 記者会見時(2023年6月5日)の配付資料
・資料1 2023年版『世界の核物質データ』解説
・資料2 各国の最新状況:2022年6月~2023年5月
・資料3 2023年版 核物質データ追跡チーム
 

◆ 過去の『世界の核物質データ』は[全リスト]からご覧いただけます。
 

[⇒ 英語版]


◆『世界の核弾頭データ』2023年版も公開しました。
  世界の核弾頭一覧2023
 

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『世界の核弾頭データ』2023年版   全リスト

2023年版の『世界の核弾頭データ』ポスターを公開しました。サムネイル画像をクリックしてご覧ください。[PDF: A3サイズ印刷可]

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2023年6月 NuclearWH_2023_JPN NuclearWH_2023_ENG NuclearWH_2023_KOR

 2023年6月現在、地球上に存在する核弾頭の総数は推定12,520発です。これは昨年比で200発の減少となります。保有国は、米国、ロシア、フランス、英国、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の 9カ国です。
 今年5月のG7サミットで発表された「核軍縮に関する広島ビジョン」は、「世界の核兵器数の減少は継続しなければならず、逆行させてはならない」と述べました 。確かに、核弾頭の総数は冷戦後一貫して減少傾向にあります。ピーク時(1987年)に7万発近くが存在した核弾頭は、米ロの二国間条約などによって 大幅にその数を減らしました。
 しかし、実質的な核軍拡は進んでいます。注目すべきは、「現役核弾頭」の数です。これは、総数から 「退役・解体待ち」の核弾頭数を除いたもの、すなわち配備されていつでも使える状態にある核弾頭と、配備に備えて貯蔵されている核弾頭の数の合計です。「現役核弾頭」数は、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新STARTの履行期限(2018年2月)以降、明らかな増加傾向にあります。
 加えて、各国はいずれも保有核兵器の質的な向上を進めています。国際的な軍縮・不拡散・軍備管理の枠組みは極めて大きな逆風に晒されています。(詳細は下記「資料1」以下参照)
 

◆ ポスターの『解説しおり』も公開しました。こちら からご覧いただけます。

◆ 各国の詳細なデータは「世界の核弾頭一覧」からご覧いただけます。

◆ 記者会見時(2023年6月5日)の配付資料
・資料1 2023年版『世界の核弾頭データ』解説
・資料2 核弾頭総数の推移(国別)2013年~2023年
・資料3 ロシア・米国の核兵器近代化計画について
・資料4 2023年版 核弾頭データ追跡チーム
 

◇ 過去の『世界の核弾頭データ』は[全リスト]からご覧いただけます。
 

[⇒ 英語版]


◆『世界の核物質データ』2023年版も公開しました。
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2023年5月31日

REC-PP-18

 核兵器問題の主な論点整理:国際人道法編(2023年5月)
 河合 公明, 真山 全

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 法の存在価値を語る時、欠かせないキーワードが「法の支配」と言えるだろう。もともとは、国内の「公正で公平な社会」にとって「不可欠な基礎」として発展してきたもので、「全ての権力に対する法の優越を認める」という考え方である。この国内的価値が、パワーポリティクスが跋扈する国際社会にも次第に適用されるようになり、多くの課題を抱えながらも、「友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤」となってきたと、2022年版『外交青書』は記した。
 だが、ロシアによるウクライナ侵略が始まるなど、国際社会における「法の支配」をないがしろにする動きが相次ぎ、2023年版『外交青書』では強い懸念が示されている。たとえば、「国際社会においては、法の支配の下、力による支配を許さず、全ての国が国際法を誠実に遵守しなければならず、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは決して認められてはならない」と強調している。
 核軍縮・不拡散の分野でも「法の支配」よりも「力による支配」が広まる危険な風潮がある。今後、どのようにして「法の支配」を再構築・普遍化していくのか。この問いへの解を求める知的挑戦は、「核のない世界」を目指していくうえで、避けて通れないものである。ここで記す核兵器問題に関する国際人道法の主な論点が、核兵器問題の今後に関心を持つ大学生、大学院生、市民の皆さんの学びの一助になればと願っている。

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2023年5月25日

G7広島サミットの「責任」とは何なのか

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)見解
2023年5月25日

 G7サミットが広島で開かれ、核保有国の米英仏、「核の傘」国の日独伊加の7カ国のリーダーが集った。グローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国のリーダー、ウクライナの大統領も招かれ、短時間ながらも「被爆の実相」に触れた。

 被爆地でのこの大規模な首脳会合の前と後では何かが変わるのではないか、変えられるのではないか。いや、変えていく転機にしていかなければならない。ウクライナ侵略開始後のロシアが理不尽な核の恫喝を繰り返すなか、核使用のないままに戦争を終わらせ、核軍縮を再構築していくことの必要性、その切迫性を強く実感させるサミットとなった。

 何が大切なのか。G7サミットで合意された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」の中で6回も使われている「責任ある」(responsible)という文言に着目したい。ビジョンでは最初に、「ロシアの無責任な核のレトリック」としてロシア批判の文脈で使われ、次に、「核兵器のない世界」をめざすG7は、この「究極的な目標」が「責任あるアプローチを通じて達成される」と考えている旨が記された。さらには、中国を意識してのことか、「効果的かつ責任ある透明性」(核戦力のデータ公開など)が大事との立場も表明した。このほか、核不拡散等に関連して3か所で「責任」が用いられている。

 首脳たちの責任の強調には期待を寄せたい。ただ、言いっぱなしの責任は、そのまま無責任に姿を変えることを忘れないでほしい。首脳たちは、原爆資料館を訪れるとともに原爆慰霊碑に献花を行い、被爆者と面会した。核兵器の非人道性と核軍縮の重要性を国際社会に示した点で大きな意義がある。首脳たちは人間として実感したことを持ち帰り、今後の核軍縮・不拡散政策の具体的成果に結びつけてこそ、責任を果たしたことになる。

 「無責任な核のレトリック」とのロシア批判には、同感である。だが、言外に、「自分たちは責任ある核のレトリック」との含意を感じさせる。核抑止とは、核兵器の使用を示唆する脅しで自らが望まない行動を相手にさせないことであり、抑止が破綻した場合には核兵器を使用することが前提とされる概念である。もちろん、ロシアの危険なレトリックは言語道断だが、だからといってG7諸国の核抑止依存が安心で安全と胸を張れるわけではない。そもそも、どの国が使おうと責任ある核使用や、誰かが責任を負いきれる核使用があるとは思えない。

 ビジョンでは、「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明(2022年1月)」を想起して、「核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないこと」が確認された。重要な基本原則ではあるが、さらに踏み出して、ロシアが核を使うことなく、米英仏も核による威嚇やその使用にいたることなく、ウクライナでの戦争を終結させる強い決意をもっと示してほしかった。そんな決意の言葉があれば、「長崎を最後の被爆地に」とのメッセージが広島G7サミットでも響いたと、この地からもっと共感を得たことだろう。岸田文雄首相にはそこまでの議長力を、責任を持って発揮してもらいたかった。

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