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第二回「核兵器の人道的影響に関する会議」
議長概要(暫定訳)

 146か国の政府、国連、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月運動、そして市民社会団体の代表は、偶発的か意図的かにかかわらず、いかなる核爆発もがもたらす地球規模かつ長期的な結末について、公衆衛生、人道援助、経済、開発・環境問題、気候変動、食糧安全保障、リスク管理をはじめとする21世紀社会の観点や関心から議論すべく、2014年2月13日から14日にかけてメキシコ・ナヤリットにて開催された「第二回核兵器の人道的影響に関する会議」に参加した。

各国政府ならびに市民社会からの幅広く、積極的な参加は、核兵器の影響に関する地球規模の懸念とともに、これが世界中のすべての人々にとっての最重要課題であるという認識が広がったことを反映した結果であると議長は考える。

ナヤリット会議は、広島・長崎における核攻撃の被害者・生存者の参加に感謝の意を表する。

ナヤリット会議は、核兵器の影響に関する情報に基づいた議論を促すという「ファクト・ベース」のアプローチをとることによって成功を収めた。プレゼンテーションや議論におけるいくつかの主たる結論は以下の通り。

・核兵器爆発の影響を国境で押しとどめることはできない。したがってそれはすべての人々に共有された深刻な懸案である。
・一発の爆発がもたらすのは即死や破壊だけではない。社会経済開発も阻害され環境も悪化する。被害は広範に及ぶものとなり、貧しく、弱い立場にいる人々が最も深刻な被害を受ける。
・インフラが再建され、経済活動、貿易、通信、医療施設、学校などが復興するまでには数十年がかかりうる。それにより深刻な社会的・政治的な弊害が生まれる。
・放射線被曝は短期的・長期的に人体のあらゆる臓器に悪影響を与えうるものである。それは癌のリスクを上げ、将来的な遺伝性疾患を発生させうる。

・核拡散、サイバー攻撃に対する核指揮統制ネットワークの脆弱性、人的ミス、非国家主体、とりわけテロリストによる核兵器入手の可能性を受けて、こんにち、核兵器使用の危険性は世界規模で増大している。
・より多くの核兵器を高い警戒態勢で配備する国が増えていることを受け、これらの兵器が事故、ミス、無認可あるいは意図的に使用される危険性は著しく増加している。
・明白な事実は、いかなる国家あるいは国際機関であろうと、核兵器爆発が起きた際に適切に対応し、必要とされる短期及び長期的な人道援助や防護を提供する能力を持たないということである。加えて、たとえそれ
   を試みたとしてもそのような能力を確立することは不可能と思われる。

ナヤリット会議は第一回核兵器の人道的影響に関する会議(オスロ、2013年3月)のフォローアップであり、これらの結論はオスロ会議の成果を基盤としている。

核爆発がもたらす多岐にわたる被害や悪影響は、保有核兵器の維持近代化に巨大なリソースが費やされていることとあわせて、これらの兵器の存在がまさに非合理的であり、正統性が疑問視されており、とどのつまり人間の尊厳に反するものであることを示している。

議長が見るに、核兵器の人道的影響に対する認識は、核兵器をめぐる議論に関与している人々の心と頭にすでに変化をもたらしている。

国際的な核軍縮・不拡散体制の中心要素である包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効といった諸行動と、2015年核不拡散条約(NPT)再検討会議における包括的成果の達成は、核兵器の人道的影響の議論とあいまって、相互に補強されるプロセスである。

核兵器の完全廃棄に向かう上で、いかなる努力も取るに足りないということはない。これに関して、多くの参加者が2013年に開催された国連総会ハイレベル会議によってもたらされた前進への弾みに注意を喚起した。

議長は、ナヤリット会議への市民社会の参加及びその貢献に深い感謝の念を表明する。互いに利益となる目的に向けて努力すべく、新たな、また、一新された多層的なパートナーシップを市民社会との間で生み出していくよう、すべての政府に求める。

議長は、オーストリア政府が第三回核兵器の人道的影響に関する会議の開催を申し出たことを心より歓迎する。オスロ及びナヤリットのフォローアップとして、現在の気運を高め、それらの結論をより確固たるものとし、前進させるものとして、参加者からは強い支持が示された。多くの参加者が述べたように、ナヤリット会議は、核兵器国及びNPT未加盟国に対し、オーストリアでの第三回会議への参加を繰り返し求める。

そうしていく上で、我々は、過去において、諸兵器がまず非合法化され、そして廃棄されてきたことを考慮しなければならない。我々は、これこそが核兵器のない世界を達成する道であると信じる。

このことは、NPT、また、ジュネーブ条約共通第1条でも示されているように、国際法に基づく我々の義務に合致するものである。

核兵器の人道的影響に関する広範かつ包括的な議論は、法的拘束力のある条約を結ぶことを通じて、新たな国際基準及び規範を実現するとの、政府及び市民社会の誓約につながっていかなければならない。

この目的に資するような外交プロセスを開始する時期が来たことをナヤリット会議は示したと議長は考える。このプロセスには、特定の時間枠、最も適切な議論の場の明示、明確かつ実質的な枠組みが含まれるとともに、核兵器の人道的影響が軍縮努力の本質に据えられたものでなければならないと我々は考える。

行動に移るべき時が来た。広島、長崎への核攻撃から70年目を迎える今こそが、我々が目標に向かうにふさわしい里程標である。ナヤリットは「ポイント・オブ・ノー・リターン(もはや後戻りできない地点)」なのだ。

2014年2月14日、メキシコ・ナヤリットにて

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