RECNA 解説と見解
「核兵器禁止条約の交渉に関する決議」について
2016年10月31日
2016年10月28日(金) (日本時間)、国連総会第一委員会にて、来年3月から核兵器を法的に禁止する条約の交渉を始めるという歴史的な決議 (A/C.1/71/L.41) がなされた(賛成123、反対38、棄権16)。RECNAとしても、この歴史的な決議を支持するものであるが、今後の核軍縮に向けての意義と課題を簡単にまとめてみた。
1.核兵器法的禁止に向けて世界は動き出した
今年、8月に国連公開作業部会の勧告文が出されてから、このような決議が採択される可能性が高いことは予想されていた。この流れは、2013年「核兵器の人道上の影響に関する国際会議」、2014年「核兵器の非人道性に関する誓約」と、ここ数年の核兵器禁止に向けての潮流が、まさに今回の決議につながったといえる。「核兵器禁止の法的枠組み」に向けての交渉開始を支持する非核保有国の声は、世界で明らかな多数派となった。核兵器の法的な禁止が、いよいよ国連で議論されることになったことは、歴史的にも深い意義をもつ。RECNAとしても、本決議を支持し、今後の交渉の行方を注意深く見守っていきたい。
2.対立の鮮明化と実効性が課題
一方で核兵器国や核抑止依存の非核保有国が今回の決議に明確に反対したことは今後の交渉の難しさを示唆している。なかでも米国は、決議直前になって、NATO同盟国に対して、決議に反対するよう要請をだしていたことが報じられるなど、かなりの圧力をかけていたとみられる。また、核兵器国の中でも中国やインドが棄権しており、核保有国間でも立場が微妙に違う点も注目に値する。また、NATO加盟国のオランダが棄権するなど、核抑止依存の非核兵器国の態度もけっして一枚岩ではない。この鮮明化した対立が、今後の核軍縮・不拡散動向にどのような影響をもたらすかは注意深く分析する必要がある。今後も核保有国が不参加のまま交渉が進むことで、実効性に乏しい条約となる可能性も否定できない。このような課題をどう乗り越えていくかが、今後注目すべき点である。
3.日本の対応
日本は、国連作業部会では「棄権」であったのに、今回は「反対」に回った。「核軍縮は核兵器国と非核保有国が協力して進めるべき」との主張がその理由であるが、このままでは、被爆国として核廃絶をリードする国としての立場と核抑止依存の「ジレンマ」がますます深くなっていく。今こそ核抑止依存の安全保障政策からの脱却を目指す良い機会と考えるべきだ。従来のように「段階的アプローチが現実的」と主張するだけではなく、禁止条約の交渉には参加して、核兵器国との橋渡し役を果たせるよう、具体案を検討すべきだ。