Print Friendly and PDF

核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合におけるツァヒャ・エルベグドルジ・モンゴル大統領の演説
2013年9月26日、ニューヨーク
<暫定訳>

議長、
事務総長、
政府代表の皆様、

このような重要な会議で発言し、討議中の諸問題についての私見を述べることで、核兵器のない世界の促進に向けた断固たる措置を講じる必要性について明確かつ強力なメッセージを発する一助を担う機会を得ましたことを大変光栄に存じます。

私たちは皆、核兵器のない世界という骨太のビジョンを支持し、粘り強い努力、相互理解、強い意志を持った交渉、そして国際社会のあらゆる構成員――とりわけ核兵器国―-の緊密な協力によってそれを達成しうると確信しています。それが私たちが今日ここに集った理由にほかなりません。

核軍縮には多様な側面があり、それぞれにおいて慎重な検討が不可欠です。時間の制限がありますので、ここでは以下に述べる7つの問題に焦点をあてたいと思います。

一 核兵器の禁止
モンゴルは国連事務総長による核軍縮に関する5項目提案を支持します。よって我が国は、最も喫緊の課題の一つが核兵器の禁止であるとの見解を共有します。今こそ核兵器禁止条約の交渉を始めるべき時であり、その草案はすでに各加盟国に配布されています。オープン参加国作業部会(OEWG)の一連の会議の結果や核兵器の人道的影響は、そのような行動の緊急性を明白に裏付けています。これに関連して、私は9月26日を「核兵器完全廃棄のための国際デー」に制定するとの呼びかけに賛同します。

二 包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)
包括的核実験禁止条約(CTBT)は核軍縮に向けた促進剤であり、不拡散に向けた強力な道具です。その早期発効は国際社会において今や遅しと切望されてきました。十分な政治的意思があれば、比較的短期間に前進を達成することが可能です。このことから私は、残る8つの発効要件国をはじめとするCTBT未批准国に対し、早急に批准を行うよう求めます。

三 軍縮交渉とキャンペーン
唯一の多国間軍縮交渉の場であるジュネーブ軍縮会議(CD)が期待に見合った働きをしていないのは大変遺憾です。作業の再活性化に向けた協議が続けられていますが、CDは機能不全の状態を脱していません。国際社会は、すべてにとっての死活的利益に影響する問題を、一部の国々の思惑にゆだねてはなりません。1997年の対人地雷禁止条約や2008年のクラスター弾禁止条約の成功裏の締結が示すように、この軍縮機構が機能しない際に国家連合やNGOの役割が欠かせないことがこれまでの国際的な経験から実証されています。誓約を果たすよう核兵器国を促した、NPT再検討会議における新アジェンダ連合、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)の世界的ネットワーク、中堅国家構想(MPI)の役割。また、「グローバル・ゼロ」運動や核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が担ってきた、人々を奮起させ、組織化する役割。そして実際的な核軍縮努力の促進に向けたその他多くの価値ある国家連合とイニシアティブについてとりわけ言及したいと思います。

非核兵器地帯加盟国及びモンゴル(NWFZM)会議は、116か国が参加するグループの発言力を高め、核軍縮交渉における重要な担い手と位置付けることをめざした新しい動きです。NWFZMの一環として、2009年にモンゴルはフォーカル・ポイントの初会合をウランバートルで開催しました。また、2012年にはウィーンにおいて、2015年に予定されている第3回NWFZM会議に向けた準備会議の議長を務めました。今年、メキシコとともに、モンゴルはジュネーブにおける準備会議の共同議長を務めました。

四 非核兵器地帯
非核兵器地帯の設立は、核不拡散と核軍縮の地域的措置としてその有用性が証明されています。今日、9つの非核兵器地帯(NWFZ)が存在します。南極、宇宙、海底、また、人の居住地としてラテンアメリカ及びカリブ地域、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジア、そして一国非核兵器地帯のモンゴルです。これらを合わせると、150万平方キロメートル以上の地域が覆い尽くされます。これらの非核兵器地帯は、グローバルな措置を補完する重要かつ効果的な地域措置であることが広く認識されています。既存の地帯の強化とあわせて、中東や北東アジアといった新しい地帯の設立を促進するための措置が講じられるべきです。後者には長期にわたって対立が存在し、地帯の設置は容易ではないでしょう。しかしだからといって我々は足を止めたり躊躇したりするべきではありません。

前述したような諸地帯の設立を通じて、私たちは新しい地帯の設立に役立つ豊かな経験を手にしています。以上のことから、モンゴルは、国連が非核兵器地帯の設立に関するあらゆる側面からの包括的研究を再び実施することを提案します。そのような実際的で有用な研究が最初に実施されたのは38年前であり、前述の諸地帯を設置する上で役立ったからです。そうした研究をラテンアメリカ及びカリブ地域に非核兵器地帯が初めて設置された40周年を国際社会が祝う前に実施するということも考えられます。

五 モンゴルの非核兵器地位
2つの核兵器国に挟まれたモンゴルは、核兵器のない世界というビジョンに則して、20年以上も前に自国が一国非核兵器地帯であることを宣言し、爾来その地位を制度化するべく懸命な努力を重ねてきました。国内においては、2000年に、その地位を明確に定義し、それに違反する行為を犯罪化する国内法を制定しました。また、国際レベルにおいては、国際社会の幅広い支持を受けるとともに、我々の柔軟でありつつも筋の通った、粘り強い政策の結果として、このようなモンゴルの独自の地位が国際的な評価を広く獲得しています。2012年9月には、5つの核兵器国がモンゴルの非核兵器地位を認識するのみならず、その地位を尊重し、それに背くようないかなる行動もとらないことを誓約する共同声明に署名しました。これは、モンゴルに対して核兵器のシステムのいかなる部分も受け入れるよう圧力をかけないことをすべてのP5に誓約させたことを意味します。よって将来の地政学的競争や大国間の対立のコマとしてモンゴルを利用することは許されません。安定し、同盟にくみせず、安全を保証されたモンゴルは信頼と安心の地帯となり、その領土が他国の利益を害するために利用されることはありません。モンゴルの経験は、たとえ小国であっても核兵器のない世界というビジョンの促進に貢献できるとの希望を与え、それを証明するものです。

六 北東アジア
政治的・外交的手段を柱とする安全保障の確保を身をもって体験した国として、モンゴルは、この地に非核兵器地帯を設立することが可能か、そしてそれはいかにして達成可能か、を検討する非公式ベースの作業を北東アジアの国々と行う準備ができています。それが容易なことではなく、勇気、政治的意思、忍耐力を要するものであることを私たちは十分に理解しています。しかしそれはたとえ直ちに可能ではなくとも、間違いなく実現可能です。実現までの間においては、さらなる信頼醸成の促進のための措置がとられるべきです。このことを念頭に、この3月、私は「北東アジアの安全保障に関するウランバートル協議」の開始を提案し、段階的な地域間の信頼醸成を可能にするオープン協議に地域諸国を招待いたしました。

議長、我々は核軍縮の前進に向け最大限の努力をはらう所存です。今日の極めて重要な集まりを通じて、必要とされる推進力を生み出すべきです。ご清聴ありがとうございました。

(暫定訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)

このページのトップへ

  • nu-nea_project2021-2023
  • 北東アジアの平和と安全保障に関するパネル(PSNA)
  • J-PAND
  • RECNA図書
  • 「被爆の実相の伝承」のオンライン化・デジタル化事業ウェブサイト
  • 第2回オピニオン賞
  • YouTube共通チャンネル
  • YouTubeユース動画再生リスト
  • 世界の核弾頭データ
  • 世界の核物質データ
  • ニューズレター
  • ポリシーペーパー
  • レクナの目
  • Monitor BLOG
  • 市民データベース
  • 核兵器廃絶長崎連絡協議会
  • ナガサキ・ユース代表団
  • RECNAアクセス