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新アジェンダ連合を代表した、南アフリカ共和国ゾリサ・マボンゴ IAEA 大使による演説

2015 年核不拡散条約(NPT)再検討会議第 1 回準備委員会
クラスター1:核軍縮
2012 年 5月3日、ウィーン

議長、

 新アジェンダ連合(NAC)の 7 か国であるブラジル、アイルランド、エジプト、メキシコ、ニュージーランド、スウェーデン、そして我が国南アフリカを代表しまして、ここで発言することを光栄に思います。

 NAC は、一般討論の演説におきまして、自らの存在意義について説明し、核兵器によってもたらされる脅威の存在しない世界を実現するために引き続き努力していくとの誓いをあらためて述べました。したがいまして、本演説においては、2010 年 NPT 再検討会議で採択された行動計画の履行と、2015 年の再検討サイクルに向けた NAC の期待に焦点を当てて述べることといたします。

 2010 年の行動計画は、我々が核軍縮を追求してゆく上で、重要な成果となりました。10年間も合意がなかった状態から、ようやくあるべき道に戻ってきたのです。まちがいなく、2010 年再検討会議は、条約第 6 条にしたがって核軍縮につながるような保有核兵器の完全廃棄を明確に達成するという自らの誓約を、核兵器国(NWS)が再確認する場でありました。さらに核兵器国は、この点に関する措置について前進を加速させることもあらためて誓約し、したがって条約第 6 条の履行を前進させるとした 1995 年と 2000 年の決定を再確認したのです。重要なことは、再検討会議が核軍縮措置に関連して、不可逆性、検証可能性、透明性の原則を適用するという誓約をあらためて強調したことでした。

 2010 年再検討会議の成否は、最終的にはこれらの真摯な約束事がどれほど履行されたかで測られます。2010 年再検討会議の成果は、加盟国が、NPT の目標達成を支える具体的な今後の行動を通じて、条約への誓約を示すあらたな機会を与えました。合意された措置の履行を怠ることは、再び、加盟国間の信頼を損ない、NPT プロセスの信頼性を低下させることになるでしょう。

議長、

 したがって、この第 1 回準備委員会は、これまでの進捗状況を確認し、その歩みを振り返る機会を与えています。2010 年再検討会議以降の歩みは、広がりにおいても質においても控え目なものでしたが、NAC は進展を確認するのにやぶさかではありません。

 我々はしたがって、ロシア連邦と米国が、2000 年再検討会議で合意された 13 の実際的な措置の中の「行動 8」にしたがって、両国間で新しい START 合意を発効させ、作戦配備されている戦略核兵器の総数を削減したことを歓迎いたします。しかし、NAC は、数千発の核弾頭が手付かずのまま残されており、核兵器国の領域外に配備されている核兵器の削減・廃棄に関連して何の進展も見られないことに引き続き懸念を持っております。同様に、保有核兵器の近代化が継続されており、大量の資源がこの目的に費やされていることを引き続き懸念いたします。これは、NPT での約束に反するものです。NAC は、核兵器のいかなる削減も、採る全ての軍縮措置がそうであるように、不可逆的で透明性を有し、国際的に検証可能なものでならないということを再度繰り返します。このことは、軍事および安全保障上のすべての概念やドクトリン、政策において、核兵器が引き続き役割と重要性を与えられていることと結びついています。残念なことに、核抑止政策が、依然として、核兵器国ならびにその安全保障上の同盟国における軍事ドクトリンを決定づける特徴となっています。

 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効は、さらなる進展が喫緊の課題とされている重要な未解決問題です。CTBT は、核兵器取得の敷居を高くし、質的な意味での軍拡競争を防止し、国家安全保障戦略における核兵器依存を減らすことで、国際的な不拡散・軍縮体制の中心的要素を成すものです。条約の発効は、効果的な検証メカニズムの確立を通じて、国際安全保障システムへの信頼性を強化することにつながるでしょう。この点において、2010 年の行動計画に含まれているすべての CTBT 関連の約束を果たす必要があります。CTBT の発効に向けては一定の前進が見られました。最近ではインドネシアが批准しましたが、これは、付属書 2 の国家としては 2008 年以来初めての批准となります。我々はさらに、中央アフリカ共和国、ガーナ、ギニア、グアテマラ、トリニダードトバゴが批准し、ニウエが署名したことを歓迎いたします。

 NAC は、一般討論での演説において、中東に関する 1995 年の決議と、この点に関連して 2010 年の NPT 再検討会議で合意された行動を完全履行することの重要性を強調いたしました。したがって、我々は、1995 年決議実現の第一歩として、2012 年に招集される会議の成功を願っております。

 NAC は、結果として全会一致合意には至らなかったものの、作業計画草案の提出を含め、ジュネーブ軍縮会議(CD)でなされた最近の重要な努力を歓迎いたします。NAC は、作業計画に関する全会一致合意が引き続き得られなかったために、大変な努力が払われたにも関わらず、核軍縮に関する 2010 年行動計画の具体的な 3 つの勧告を CD が履行できなかったことを残念に思います。

議長、

 いくつかの控え目な前進はあったものの、主要な課題は残ったままです。核兵器使用を防止する唯一の絶対的な保証は、その完全廃棄と、ふたたび製造することはないとの確約を得ることです。NAC がこれまで常に主張してきましたように、存在しないものは拡散しようがありません。それゆえに、核兵器廃棄までの間、残ったすべての課題に正面から取り組むことが肝要なのです。こうした課題には、核軍縮と核不拡散の双方の目標を達成するために、核兵器やその他の核爆発装置のための核分裂性物質の生産を禁止する、非差別的で多国間の、効果的に検証可能な条約の締結など、核軍縮に関する実質的な作業を開始することが含まれます。またそうした課題には、核兵器国から明確かつ法的拘束力のある安全の保証を得ることに対する非核兵器国の正統な関心に応えてゆく必要性も含まれています。

議長、

 これまでの再検討会議でなされた合意や約束が履行されなければ、その一つ一つが NPTの信頼性の低下につながり、加盟国間の信頼感の喪失につながります。それゆえ、我々は、何がなされ何がなされていないかを認識しつつも、この準備委員会は、将来を見据え、2010年の最終文書の後続行動についての結論や勧告に反映されるように、履行の加速の誓約について具体的な表現を与えなくてはなりません。
そのためには、NAC は 2015 年の再検討サイクルがとりわけ次のことをしなければならないと考えております。

・第一に、核兵器国は、1995 年、2000 年、2010 年の合意にしたがって、具体的かつ体系的、前進的な努力を通じて、遅滞なく、第 6 条に由来する義務を果たすべきです。

・第二に、保有核兵器の大幅な削減を目指した新 START 合意の後継措置は、戦略兵器と非戦略兵器の両方において、配備および非配備の核兵器すべてを対象とすることが必須要件です。

・第三に、核兵器国は、透明性を向上させる措置を含めて、自らの約束を履行することへの誓約に対する信頼感を生み出すことが重要です。核兵器国には、標準的な報告様式に可能なかぎり早く合意し、「行動 5」および行動計画のその他の要素の履行に関してみられた前進について、2014 年に先んじて、定期的に報告することが求められます。

・第四に、すべての加盟国、とりわけ核兵器国と中東地域の全関係国は、1995 年中東決議の履行に関して採られた措置を、国連事務局を通じて、2015 年再検討会議の議長と、準備委員会の議長に対して、会議に先立って報告すべきです。

・第五に、適切かつ効率的な核軍縮の検証能力と法的拘束力のある検証制度を早急に開発する必要があります。すべての核兵器国は、軍事的用途にはすでに必要のない核分裂性物質を国際原子力機関(IAEA)の管理下に置く多国間体制の整備を開始、ないしは加速すべきです。

・第六に、核兵器の無差別性かつ不均衡性に鑑みて、すべての加盟国は、核兵器の使用が国際人道法に違反することを再確認すべきです。加えて、国際法、とりわけ国際人道法との整合性も含めて、核兵器使用に伴う壊滅的な人道的結果について調査し、よりいっそう考慮する必要があります。

・第七に、2010 年 NPT 会議最終文書における結論ならびに今後の行動に向けた勧告と合致する形で、すべての核兵器の完全廃棄と万人にとってより安全な世界を実現するために、さらなる措置が合意されるべきです。

・第八に、核兵器国を含む軍事同盟に参加している国家は、透明性と信頼醸成の重要な措置として、集団安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割を減じ廃棄するために取った措置、あるいはこれから取る予定の措置について報告すべきです。

・最後に、すべての NPT 加盟国は、核兵器のない世界の達成と維持のために、相互に補強しあう国際条約の包括的枠組みの構築に向けて努力すべきです。すべての核兵器の完全廃棄に向けた法的拘束力を伴ったこうした枠組みには、効率がよく信頼できるものになるために、強力な検証システムに裏打ちされた明確に定義された基準及び行程表が含まれるべきです。

議長、

 これらの発言を持ちまして、NAC を代表して、この声明で扱った多くの要素を盛り込んだ「核軍縮」と題する作業文書(NPT/CONF.2015/PC.I/WP.29)を提出したいと思います。終わりに、議長、NAC は、核兵器国と NPT 外のその他の国家が保有核兵器を迅速かつ後戻りできない形で完全に廃棄するための必要な措置を取るよう、すべての加盟国と協力してまいります。我々は、市民社会の関係者を含む皆様に対して、核兵器とそれに伴う壊的結果の脅威から解き放たれたよりよい世界を追求するために、我々と手を取り合うことを呼びかけます。

ありがとうございました。

(翻訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

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