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不確定な時代における英国の安全:戦略防衛・安全保障見直し

(第3章のみ全訳)

2010年10月19 日

 

第3章 抑止力
3.1 「国家安全保障任務・計画ガイドライン」は、極限的な脅威を抑止する究極の手段として、最小限の効果的な核抑止力が必要であると述べている。「戦略防衛・安全保障見直し」と並行して、我々は核に関する宣言的政策の見直しを行い、我々の核兵器能力規模のさらなる削減の可能性を含め、対費用効果を確保すべくトライデント更新について精査を行った。以下がその結論である。

 

戦略的文脈
3.2 現在、いかなる国も、英国の独立ないし主権を脅かすような意図も能力も有していない。しかし我々は、英国に対する大規模かつ直接的な核による威嚇が再び出現する可能性を排除できない。核能力の使用あるいは使用の威嚇に関する一国の意図は比較的早急に変化しうる。我々は相互信頼や安全保障の強化に向けて国際的な努力を続けてゆくが、一方で、我々を重大な危機に陥れるような国際安全保障環境の大きな変化が起こる可能性を排除することは不可能である。

3.3 過去40年以上にわたって核能力を有する国家の数を制限してきた核不拡散条約(NPT)の成功にもかかわらず、大量の保有核兵器が今でも存在し、核不拡散の危険は継続している。核武装国家の数が増大する可能性を我々は無視できない。同様に、将来においていくつかの核テロ支援国家が登場する危険も存在している。それらの国々が我々の国家安全保障を脅かし、地域的・世界的な安全の維持に向けた我々や国際社会の活動を妨害するような行為をとることを許してはならない。

3.4 英国の核抑止力がNATOを通じて欧州・大西洋地域の集団的安全保障を支えているとの認識もまた重要である。核抑止力はNATOの戦略全体の重要な一部を担っており、英国の核戦力はそれに実質的に貢献している。

 

核兵器政策
3.5 今議会の冒頭において外相は、核に関する宣言的政策を、2010年及びそれ以降の政治・安全保障の文脈に照らして適切なものとすべく見直すことを宣言した。英国は長年にわたり、NATO同盟国の防衛を含め、自衛の極限的状況においてのみ自国の核兵器の使用を検討するという姿勢を明確にしてきた。また、何時、どのように、いかなる規模で核兵器の使用を検討するかについての詳細に関しては、意図的に曖昧さを継続している。

3.6 責任ある核兵器国、そしてNPT加盟国として、英国は「核兵器のない世界」という長期目標を引き続き誓約する。英国は拡散を抑制し、多国間軍縮を前進させるための努力を継続してゆく。また、英国は核兵器国と非核兵器国のあいだの信頼を構築し、核保有国がそれらの放棄を可能とみなすような、いっそう安全で安定した世界に向けて効果的な措置を講じてゆく。

3.7 英国は現在、NPT加盟の非核兵器国に対して核兵器の使用あるいは使用の威嚇を行わないという保証を供与している。こうした保証を与えるにあたって、我々はNPTの普遍的支持ならびに遵守の必要性を強調するとともに、安全の保証は不拡散義務への重大な違反を犯している国には適用されないということに留意したい。現在、英国及びその死活的国益に対し、化学・生物といった他の大量破壊兵器の能力を開発している国々からの直接的な脅威は存在しないが、もし将来的な脅威、状況の進展、それらの兵器の拡散が核兵器使用を避けられないものとするのであれば、そうした保証を見直す権利を我々は留保している。

 

対費用効果
3.8 2006年12月、前政権は「英国の核抑止力の将来」と題する白書(Cm6996)を発表した。2007年3月には、議会が現在のトライデントミサイル運搬手段を基盤とする最小限の核抑止力を維持することを承認した。前政権下では、2020年代後半に現在のバンガード級原潜が退役する際にそれらを代替するという計画に関して作業が始められた。本年5月の連立政権政策プログラムは次のように述べた。「我々は英国の核抑止力を維持し、トライデント更新の対費用効果を精査してゆくことで合意した。自由民主党は代替策に関する検証を継続する」。対費用効果についての検証は完了している。

3.9 政府は、原潜を基礎とした抑止を今後も維持し、既存の原潜を更新する作業を開始する。よって我々は、以下に明記する経費節減策や変更を取り入れながら、トライデント更新ならびに原潜更新計画を進めることとする。本年末までに、最初の支出決定(Initial Gate)が承認され、計画の次の段階が始まるであろう。

3.10 本見直しは、原潜・弾頭更新計画ならびに関連インフラにかかる全体費用が、2006年相当額で2006年に予想された200億ポンドの費用積算内に収まるとの結論に達した。対費用効果を改善すべく、我々は以下を行う。

● 現存する弾頭の更新に関する決定を先送りする。

● 原潜のミサイル区画の更新費用を削減する。

● 現在のバンガード級原潜の艦齢を延長し、代替原潜の建造計画を見直す。

● その結果として、2016年頃に第2次支出決定(Main Gate)を行い、そこで詳細な購入計画、設計、原潜数を最終的に詰める。

● 原潜を建造、支援する能力の所要水準に見合うよう、効率を向上させ、最適化するために英国産業界と協力する。

信頼できる抑止のための最小限かつ必須の要件に関する再評価の結果、我々は以下を実施することとした。

● 各原潜に搭載する核弾頭数を48発から40発に削減する。

● 作戦可能な弾頭数を160発以下から120発以下に削減する。

● 英国の核兵器備蓄全体を180発以下に削減する。

● 各原潜に搭載する作戦用核ミサイルの数を削減する。

対費用効果の見直しにおいて指摘されたこれらの変更は、全体として32億ポンドの支出削減効果をもたらす。ここには、およそ12億ポンドの削減と、今後10年間における最大20億ポンドの支出延期が含まれる。我々は今後において、延期された支出の一部が究極的には実質的削減に変わることを期待している。これらの削減は、継続的海上抑止の維持を含む核抑止力の在り方や信頼性をいかなる意味においても変えるものではない。さらなる詳細を以下に記す。

 

規模
3.11 政府は、より小規模な核兵器能力をもっても、効果的かつ信頼性あるレベルの抑止に関する最低限の要件を満たすことができると結論付けた。したがって我々は、原潜1隻に配備される核弾頭の最大数を48発から40発に削減する。これと備蓄管理の改良によって作戦可能な核弾頭数を160発以下から120発以下に削減する。さらには、バンガード級原潜に搭載する作戦用核ミサイルの数を8基以下に削減する。これらの変更は今後数年をかけて実施される。これによって我々は、2020年代までに、核弾頭備蓄全体を225発以下から180発以下に削減できる。

 

弾頭の更新

3.12 2006年以降、既存の備蓄核弾頭の最適寿命ならびに更新オプションの範囲を判断するための作業が進められてきた。1958年の「相互防衛目的のための核エネルギー利用に関する英米協力協定」(「相互防衛協定」)に基づき、我々は、トライデントD5の将来について合意し、少なくとも2030年代後半まで弾頭の更新は不必要との判断を下した。したがって今議会は弾頭更新に関する決定を求めない。これは今後10年間における5万ポンドの支出延期となる。また、我々は新型原潜の発射管のサイズに関して米国と合意に達している。これは、原潜のミサイル区画にかかる費用の最大2.5万ポンドの削減を可能にしている。

 

戦略原潜
3.13 我々は、現存するバンガード級原潜の艦齢延長の可能性について再検討した。その結果、十分な投資を行えば、2020年代後半か2030年代初頭までそれらを安全に運用できるとの結論に達した。これは、2028年に1隻目の新型原潜を完成させるとの目標をもって短期的に費用を削減しつつ、代替原潜の建設計画を決定する機会を我々に与える。今年後半、新たなクラスの原潜に関する詳細な設計作業が始まる。これは、継続的海上抑止の維持に4隻の原潜が必要か、あるいは3隻のみの艦隊で間に合うかを判断するために必要な情報を提供するものである。必要とされる原潜の数は、2016年頃の購入計画の支出決定時点において決定されるであろう。

3.14 我々はまた、次世代の原潜が現在のバンガード級における16基ではなく、8基の作戦用ミサイル発射管を有するものとなしうるとの判断を下した。米国との協力の下、我々は現在、そうした能力を具備するミサイル区画の共通設計を進めている。

産業及びインフラ

3.15 支出に見合う価値に関する作業の一環として、我々は、抑止力を可能な限り効率的に維持するための支援を行う組織及びインフラについても検討を行った。我々は多くの分野において支出削減が可能であることを見出し、いくつかの例では支出最小化のために延期決定を行った。その結果、我々は今後10年以上にわたってインフラにかかる将来的な支出10億ポンドを延期し、削減の可能性を残すことについて合意した。

3.16 核防衛計画全体を通じて、民間との契約の改善及び効率化を促進すべく、我々は軍事サプライヤーとの緊密な協力を継続してゆく。この「原潜事業遂行プログラム」に基づき、今後10年間以上にわたって、少なくとも9万ポンドの実質的経費節減となることを我々は期待している。

 

(翻訳:特定非営利活動法人ピースデポ)

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