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核兵器禁止条約(TPNW) 更新:2019年4月11日

概要
経緯
関連資料

概要 

核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons、TPNW)(日本語英語)は、2017年7月7日、ニューヨーク国連本部にて、122カ国の支持を得て採択された。核兵器使用の非人道性を根拠に、その開発、実験、生産、製造、取得、保有、貯蔵、使用及び使用の威嚇等を全面的に違法とする初の国際条約である。TPNWは、これらの禁止行動に関する援助や奨励、また、自国領域内への核兵器の配備の許可も締約国に禁じている。あわせて条約は、国内における核使用または核実験の被害者個人に対する援助の提供、ならびに国際的な協力および援助の義務を定めている。加えて、条約は、核兵器を保有、または配備させている国が条約に参加する際の手続きについても規定している。

TPNWは、「前文」および次の20条で構成される。第1条(禁止)、第2条(申告)、第3条(保障措置)、第4条(核兵器の全廃に向けて)、第5条(国内的履行)、第6条(被害者援助と環境改善)、第7条(国際協力および援助)、第8条(締約国会議)、第9条(費用)、第10条(改正)、第11条(紛争解決)、第12条(普遍性)、第13条(署名)、第14条(批准、受諾、承認または加入)、第15条(効力発生)、第16条(留保)、第17条(期間と脱退)、第18条(他の協定との関係)、第19条(寄託者)、第20条(正文)。

TPNWは2017年9月20日に署名開放された。50番目の批准書の寄託後、90日で発効する。2019年3月末現在、70カ国が署名、22か国が批准している(条約署名国・批准国一覧)。

経緯 

核兵器の禁止と廃絶を求める取り組みの歴史は、核兵器そのものの歴史と同じくらい長い。1946年の国連総会第1号決議(英語)が「核及びその他の大量破壊兵器の廃絶」を国際社会の最優先目標に掲げて以来、さまざまな国連文書や決議がこの目標を再三にわたり確認してきた。前進の契機となったのは、核兵器の使用または威嚇の合法性に関して国際司法裁判所(ICJ)が1996年に出した勧告的意見である(英語)。ここでは、それまでの核不拡散条約(NPT)第6条の解釈を超えて、同条約の締約国には核軍縮交渉を誠実に行うのみならず、それを完結させる義務を有するとの判断が下された。これを受け、核兵器禁止条約を国連の議論の遡上にのせようとする国際的な運動が加速した。国際NGOのイニシアティブで「モデル核兵器禁止条約(Nuclear Weapon Convention, NWC)」が作られ、マレーシア、コスタリカにより国連文書として各国に提示された(英語)。マレーシアは1996年以降、毎年の国連総会にNWCの早期交渉開始を求める決議案を提出している。同決議に関しては、非同盟諸国(NAM)を中心に多数の支持を得て採択がなされてきたが、具体的な条約交渉の動きには結び付かないままであった。

遅々として進まない核兵器国の核軍縮努力に対する不満や苛立ち、核兵器使用への危機感の高まりを背景として、状況打開に向けた新しい国際的なうねりが2010年に始まった。核兵器使用のもたらす壊滅的な被害に着目し、それらの非人道兵器の法的禁止と廃絶を求める動きである。「人道アプローチ」と呼ばれたこの動きを牽引したのは、オーストリア、メキシコ、アイルランド、南アフリカ、ニュージーランドなどの非核兵器国と、それを支える国際赤十字委員会(ICRC)等の国際組織、そして「核なき世界」を訴える世界の多くの市民・NGOであった。

ケレンベルガーICRC総裁(当時)が国際人道法の下に核兵器の法的禁止と廃絶を求める演説(日本語英語)を行ったことを端緒に、2010年5月にニューヨーク国連本部で開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、核兵器の非人道性を国際人道法との関係で初めて明確に位置付け、核兵器禁止条約のような法的枠組みが必要であると明記した最終文書(日本語英語)を採択した。「人道アプローチ」の諸国は、その後、6度にわたる共同声明(第1回(日本語英語)、第2回(日本語、英語)、第3回(日本語英語)、第4回(日本語、英語)、第5回(日本語、英語)、第6回(日本語英語))の発出や国連総会決議を通じて、核兵器の非人道性に対する認識を国際社会に広げる努力を続けた。さらに、2013年にはオスロ(ノルウェー)、2014年2月にはナジャリット(メキシコ)、同12月にはウィーン(オーストリア)において核兵器の人道上の影響をテーマにした国際会議が開催され、核兵器の非人道性が科学的観点から詳細に議論された。会議で得られた重要な知見を基にオーストリアが発表した「(オーストリアの)誓約」(日本語英語)は国際社会の広範な支持を獲得した。 

合意文書の作成に至らなかった2015年NPT再検討会議の「失敗」を経て、核兵器禁止に向けた動きは一層の加速を見せた。同年秋の国連総会は、禁止条約の「中身」に踏み込んだ実質的な協議を行う公開作業部会(OEWG)の設置に合意した。翌2016年8月、OEWGは15日間の議論の成果として、条約交渉会議の2017年開催を国連総会に勧告する内容の報告書を採択した(日本語英語)。同年10月、国連総会第一委員会(軍縮・安全保障)は、交渉会議の2017年開催を盛り込んだ決議案を123カ国の賛成多数で通過させた。

前述したモデルNWCの時代との比較で、この間の法的禁止の議論においては、目指される条約案の形態が大きく変化した点が重要である。モデルNWCは、効果的な国際管理の下での核兵器の開発、実験、生産、使用及び使用の威嚇の禁止とその廃棄、兵器用核分裂性物質の生産禁止、核兵器の運搬手段の廃棄や非核目的への転用などを含む、完全廃棄までの段階的なロードマップを示した、検証制度を伴う包括的な条約草案であった。このような廃棄や検証を詳細に規定した条約を交渉するためには、核兵器に関する技術的知見を持つ保有国の参加が必須となる。しかしそれは同時に、核保有国が動かなければ何も進まない、といった長年の停滞を生む元凶ともなっていた。そこで、「人道アプローチ」以降の禁止条約をめぐる議論においては、核兵器禁止の規範意識の確立を優先とし、廃棄や検証プロセスに関する詳細の規定についてはのちの議論に委ねる、というアプローチに多くの国の支持が集まった。たとえ交渉段階において核保有国の参加が得られなくとも、まずは核兵器禁止条約の早期締結という一歩を踏み出すことが可能となるからである。

このような考え方を支持した非核保有国のリーダーシップの下、条約交渉会議が2017年3月と6月~7月の2会期にわたりニューヨーク国連本部で開催された。コスタリカのエレイン・ホワイト大使が議長を務め、およそ130の非核兵器国、国際機関、多くの市民社会代表が参加した。前述の通り、最終日である7月7日、TPNWは賛成122カ国、反対1カ国(オランダ)、棄権1カ国(シンガポール)の賛成多数をもって採択された。

核兵器保有国ならびに「核の傘」依存国は、TPNWのアプローチが自国及び同盟国、ひいては国際的な安全保障を損なわせるとして強く反発している。他方、条約を支持する非核兵器国や市民・NGOは、TPNWが核兵器に非人道兵器としての「悪の烙印」を押すことでその使用や保有の正当性を失わせ、よって核軍縮の前進につながると主張する。2018年秋の国連総会にオーストリアらが提出したTPNWの署名・批准促進を訴える決議案は、賛成122、反対41、棄権16の賛成多数で国連総会第一委員会を通過した(日本は反対)。

関連資料 

★もっと知りたい人は「核兵器禁止条約採択の意義と課題」RECNA Policy Paper 6, 2017をお読みください。

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